ファーマーズテーブル・石川博子さん【前編】「『オリーブ』って、“雑貨”の存在がくっきりしていましたよね。」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.08.29

そばかすがチャームポイントになることも、かごのかわいさも、公園で食べるサンドイッチのおいしさも。大事なことはみんなオリーブに教わった。80年代、90年代、少女たちに熱狂的に支持された雑誌『オリーブ』。その熱狂をつくり出していた、素敵な先輩を訪ねます。

text:鈴木麻子

お皿、コップ、時計、ノート、写真立て……。生活を取り巻くものすべてに、「かわいい」や「素敵」という形容詞が存在し、どんなささやかなものを選ぶときにも、デザインや佇まいを意識すること、そしてそういう「お気に入りのもの」で暮らしが満たされているのは楽しい、そんな風に教えてくれたのは『オリーブ』でした。そして、それらを“雑貨”と呼び、大々的に取り上げたのも、『オリーブ』が最初だったかもしれません。

ペンギンカフェ、swimmer、文化屋雑貨店、デポー39……、どの「雑貨屋さん」にもキラキラした記憶があり、私たちの「街歩き」史には外せない、単なる“お店”以上の意味をもった場所です。でも、残念ながら、それらの店には行くことはもう叶いません。少しの例外を除いては……。

雑貨店「ファーマーズテーブル」は1985年、表参道の青山同潤会アパートの3Fで生まれました。2回の引っ越しを経て、今は恵比寿の古いビルの4階にあります。大好きなスタイリストさんの雑貨特集で必ずクレジットに登場していたり、「素敵なものが見つかる」雑貨店企画の常連だったり、オリーブ少女憧れの地として、私たちの「オリーブアドレス帳」に刻まれていたのでした。


出迎えてくれたのは、店主の石川博子さん。「『オリーブ』って、“雑貨”の存在がくっきりしていましたよね。青山同潤会アパートにあった頃は、よく『オリーブ』のスタイリストさんたちが、リサーチや商品リースに来てくれていました。スタイリストさんそれぞれに個性があって、選ぶものや興味をもつものが違っていたりして、面白いなーって見ていました。そういう方達が、ファーマーズテーブルに来てくださっているというのが素直に嬉しかった。今をときめくスタイリストさんたちが、アシスタントさんだった時代からのお付き合いなので、感慨深いですね。『オリーブ』には、たくさんの物が載っていて、一見ごちゃっとしているんだけれど、そのすべてのセンスが抜群。これも素敵、あれも素敵、わーこれもキュート! って見る楽しさがありました」

P8090027
↑ 3回目の引っ越しで辿り着いた恵比寿の店舗。店主の石川博子さんはサバサバしていて、とても気持ちのいい女性。お店でも取り扱う「indigo planet」のプルオーバーがとてもお似合い。

そんな、オリーブ少女たちあこがれの雑貨店だった「ファーマーズテーブル」は、スタイリストをしていた石川さんが、26歳で開いたお店。広告系のスタイリストを3年し、ひと通りの仕事を覚えたころ、「仕事を覚えた気になって、それで私がやりたい事はこれじゃないと悶々とするようになった」という石川さん。「インテリアが好きで、そういう“物”に関わることがしたいなーって思ったんです。だったら、お店かなーって、それくらいの軽い気持ちで始めちゃった」と振り返ります。

「今みたいにお店がいろいろとない時代だったわよね? ってよく言われるんですけれど、そんなことはなくて、オレンジハウス、フォブコープ、ペンギンカフェ、私の部屋とか、素敵な雑貨店はたくさんありました。考えてみたら、“雑貨”が注目されはじめた時代だったんですよね」

s-0004 s-0000
↑ 開店当初の「ファーマーズテーブル」の店内と看板。「テーブルに並ぶものを紹介したかったから、この店名をつけたんです」

 P8090060
↑ 今の店舗にも、当時の看板がディスプレイされている。

スタイリストの仕事で、世の中の素敵な物にたくさん触れてきた石川さん。「これぞ」という物をあちこちから集め、「パーフェクトな品揃え!」と自信たっぷりに「ファーマーズテーブル」はスタートしました。そんな店主の自信とは裏腹に、お客さんは思ったように来てくれない、来てくれたとしても買ってくれない日々が続き……。

「あんまり暇でやることないから、本を読むんですけど、最初から最後まで1冊読み終わっちゃうんです。問い合わせの電話もないから、もしかして電話が壊れているんじゃないかなって、何度も確認したりしてね(笑)」

s-0003
↑ 同潤会アパートの入り口に掲げられていた看板。見覚えのある方は多いのでは?


スタイリストの仕事は違うかも、と勢いで始めた「ファーマーズテーブル」。お店が思い通りに盛り上がらず、「これも違った!」と投げ出してしまいそうなこともあったと言います。でも、旦那さんに「やめたかったらいつでもやめてもいいんだよ。だけど、自分のやれることは全部やったの?」と聞かれ、石川さんはハタと気づきます。まだ、全然やってない!

「それまでの人生、全部雰囲気で生きてきて、粘りがなかったんですよね。ちょっとやっては、うまくいかないから、嫌になったからやめよう! って。だから、こうして始めたお店も途中で諦めたら、何も身につかず、歳をとっていってしまうんじゃないかなって、不安になったんです。自分がもらった陣地なのだから、この陣地を守らなきゃって。そうしたら、急に楽しくなりました」

s-0001 s-0002
↑ オープン直後に作ったオリジナルのシャンプー&リンス(左)と石鹸(右)。いまでこそシンプルなパッケージもよく見かけますが、当時は画期的だったはず。


「お客さんはどうしたら来てくれるのかな?」「来たお客さんが買って帰りたくなるものは何?」必死になって考えた石川さんはいろいろと策を練りました。お客さんがきたら、彼女たちの会話に耳をそばだて市場調査。すると「かわいいけど、重くて今日一日持ち歩けないわよね」という声が。

「皆さん表参道にいらしたら、そのあと自由が丘行って、そのあと、またどこか寄って……ってあちこちショッピングに行かれるのよね。そのころ、お店にあったのは業務用の器とかで、そういう物って重たいじゃないですか? そういう会話がチラッと聞こえたら、そうか! って気づくんですね。あと、プレゼントにする物を買いたい人が多いんだなということも、お客さんの会話から知りました。だったら、軽くて邪魔にならなくて、持っていて気軽に人にあげられるものは何だろう? って考えて。お箸とか、キッチンクロスとか、コースターとか。そういう物が、それまではお店になかったんですよね。それに気づいて置くようにしたんです」

P8090054

P8090080
↑ キャンドル、お箸、ピンチなど、細々したものなど、気軽に買えるアイテムが数多く並ぶ店内。麻紐でしばったり、スタンプを押したり、手のぬくもり感じるラッピングも素敵。


→後編へ続きます。

 

第1回 大橋利枝子さんはこちらから

第2回 堀井和子さんはこちらから

第3回 山下りかさんはこちらから

第4回 湯沢薫さんはこちらから

第5回 大森伃佑子さんはこちらから

第6回 山村光春さんはこちらから

Farmer's Table

東京都渋谷区恵比寿南2-8-13 共立電機ビル4F
TEL:03-6452-2330
http://www.farmerstable.com

Profile

石川博子

Hiroko Ishikawa

広告系のスタイリストを経験した後、1985年3月に東京・表参道の同潤会アパートに生活雑貨の店「ファーマーズテーブル」をオープンさせる。新しい物、古い物、日本の物、海外の物、オリジナルの物と、石川さんのフィルターを通して集めた、暮らしまわりの生き生きとした品々を紹介している。2010年、恵比寿の古いビルの4Fに移転。

Check it out

あなたにおすすめ

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ