文筆家・山崎まどかさん【後編】「オリーブは、女の子の文化は尊いものなんだって教えてくれた」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.11.02

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10代の頃に「この雑誌の主人公になりたい」と願った山崎さんが、その雑誌にクレジットを連ねるようになったのは20代も終わりの頃でした。

「まだブログが全盛になる前の時代、テキストサイトで20歳の女の子に紹介したいような映画や音楽のリストを並べたり、ちょっと生意気な女の子が主人公のショートストーリーを紹介したりしていたのですが、それをまとめた自主制作の冊子(今でいえばZINE)『ロマンティック・オ・ゴーゴー』を限定で販売していたんです。それを読んでくれた方からメールをいただいて、『とある雑誌が復刊するのだけれど、よかったらそこで書いてくれませんか?』と」。

その雑誌の名は「オリーブ」。嘘のような本当の話です。

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↑ ワンピースはお気に入りのブランドのひとつ「スティーブン・アラン」。パテントレザーのローファーは「ファビオ・ルスコーニ」。

編集長が望んだのは、女の子が主人公で固有名詞が散りばめられたストーリー。葉月と茜という二人の女子大生が、東京のあちこちに出かけ、いろいろなものを見聞きし、感じる様子を描きました。

「その当時、『オリーブ』のような世界から離れて久しくて、『サライ』とか『散歩の達人』とかが愛読誌でした。ひなびた東京が好きだった時期です。だから、「東京プリンセス」の女の子たちは、全然キラキラした場所に行っていないんです。谷中とか麻布十番とかそういう渋いところばかり。でも、若い子が渋いところに行くのが素敵かなって思って。それに、『オリーブ』を読むような読者は、青山とか代官山とかは行き慣れているかなと。だったら、何か冒険してもらいたいと思ったんです」

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↑ 「東京プリンセス」的ショップのひとつ、半蔵門にある洋菓子店「ローザー」のクッキー缶。レトロなプリント、鮮やかなブルーが普遍の美しさ。山崎さんは手紙入れとして使っている。

駒場東大前の「日本民藝館」、四谷のたい焼き店「わかば」、銀座の画材店「月光荘」……。オリーブ少女には確かに渋いラインアップかもしれないけれど、出てくるキーワードは新鮮で、どれも新・オリーブ少女たちの心をつかみました。

「当時は今と違ってレスポンスがわかりにくい時代だったんですけど、後から聞いたら『この連載が好きだった』っていう人が多かったんです。大人になり編集者や文筆家になっている読者も多く、後々仕事で元読者と出会い、感想を聞くこともありました。作家の柚木麻子さんも、載っているところはほぼ全部行ったって教えてくれましたよ」

『オリーブ』が好きで好きで、「3日(発売日)が終わると早く18日(次の発売日)にならないかと待ち焦がれていた」という少女は、大人になって、次の世代の少女の気持ちをすくい上げる存在へとなっていました。

「受け取った側が、今度は受け渡す側になった。文章を書くことによって、なにかお返しできていたならうれしいですね」

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↑ 「オリーブに紹介されていて、ずっと欲しかった」というフランソワーズ・サガンの写真集『ボンジュール サガン』。「ラフな服でソファに座るサガンこそ、私の思うパリ女性そのものです」

「『オリーブ』がなかったら、もっと現状の自分に満足していたかなって思いますね。本を読むのが好きで、ダサい子だけど自分の世界があるからそれはそれでいいって思っていたかも。でも『オリーブ』があったおかげで、自分にない部分にトライできたし、ちょっと無理をしてみよう、背伸びをしてみようって思えたんです。いつもの自分よりも、少し高いところに引っ張ってもらったっていう気がします」

山崎さんも私たちも、『オリーブ』の子供たち。たくさんの物や思いを、雑誌から受け取りました。

「『オリーブ』は、女の子の文化は尊いものなんだって教えてくれた。かわいいとか、おしゃれとかっていう感覚は、本筋じゃないとか、シリアスじゃないからだめだとか、言われがちだけれど、きれいなもの、かわいいものは尊いんだっていうことを教えてくれましたね。これからも、女の子文化を世の女の子たちが誇れるようになればいいなと思うし、そのお手伝いをしていきたいですね」
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↑ 翻訳を手掛けた『ありがちな女じゃない』は発売になったばかり。ニューヨークの女子カルチャーを描いた話題の海外ドラマ「ガールズ」の製作、脚本、監督、主演を務めたレナ・ダナムによる女子エッセイ。

text:鈴木麻子 photo:岡利恵子

 

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Profile

山崎まどか

Madoka Yamasaki

東京生まれ。文筆家。本や映画、音楽などを中心とした“女子カルチャー”に通じ、雑誌、書籍、イベントなどさまざまなメディアで発信し続けている。著書に『「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる』(講談社)、『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)などがある。発売されたばかりの新刊は初の翻訳『ありがちな女じゃない』レナ・ダナム著(河出書房新社)。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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