松長絵菜さんインタビュー【後編】「幸せな記憶づくりのお手伝いがしたくて」

特集
2016.12.27

←前編はこちらから

松長絵菜さんとパリ。それはミルクティーとビスケットのように、お似合いの組み合わせのように思えますが、実際パリでの暮らしはどんなものなのでしょう?

「7年経って、日常で困ることは少なくなってきました。ただ、息子のひふみが大きくなるにつれ、もっと勉強しなくてはと思っています」

自分が日本人だから、やっぱり日本の方が生活はしやすいと話しながらも、いまいる場所で、最良は何か?そう考えながら日々暮らしている絵菜さん。

「パリでの生活の中でのいい部分と、日本の社会で学んだ暮らし方や文化で、フランスの暮らしより『いい』と自分で思っていることを自分の中で選択しています。だから、フランスへ行って暮らしがガラリと変わったというよりは、選択肢が増えたという感じです。

OKA_7967a
↑ あっちへ走り、こっちで飛び、と元気いっぱいのひふみ君を追いかける絵菜さん。「子どもが生まれてから、スニーカーをはくことが多くなりました」

日々の食事作りも、工夫と研究の積み重ね。「家族が日本人なので和食をメインに食べているのですが、フランスで和食を作るとなるとやっぱり少し工夫が必要なんです。でも、食材が揃いにくい中で、代用するなどの工夫で日本食を作るつもりが『こっちも意外といけたぞ』みたいな出合いもあって楽しいですね。お出汁もかつおや昆布じゃない洋風のお出汁で日本の煮物に近づけることもできますし、お野菜も違うもので代用をして。たとえば、ごぼうはないけれどセロリとか根セロリ(セロリラーブ)できんぴらを作ったり、大根の代用にカブやラディッシュを使ってみたり」

万全じゃない状況の中で、どんなことができるのか? 異国の生活で、世界が広がり、レシピも自由になったかもしれないと、絵菜さん。フランスの家庭で長く愛され、普通に食べられている料理やお菓子に興味があり、学びながら自分の中に落とし込み、それを誰かに伝えていけたらと話します。

OKA_7914
↑ 仲良しのカメラマンのお母さまからプレゼントされたポーチ。小さなハギレを一枚一枚縫い合わせたパッチワークは世界でたったひとつ、心のこもった贈り物。手に取る度に、その人のことが思い出され、温かい気持ちに。

私たちの永遠の憧れ、パリ。果たして、絵菜さんが話すパリでの楽しみはやはり、イメージそのまま、きらきらと素敵なものでした。

「かごを持って、マルシェで新鮮な果物や野菜を買って家で調理して食べたり、パン屋さんの美味しい焼きたてのバゲットが簡単に手に入ったりは、私にとっては大きな楽しみのひとつです。あと、公園があちらこちらにあって、どこもたくさんの植物が育てられています。子供の遊具があるのはもちろんですが、場所によっては、ワイン用のブドウ畑や養蜂場、人形劇の劇場、畑などがなかにあるところも多く、天気のいい日には子供から大人まで外遊びをします。パリ市内に森もあるので、お散歩やピクニックが大好きな我が家は、休日ともなると森や公園に出かけているんですよ」
OKA_7882
↑ 東京で見つけたひふみ君のマグネット式の木のおもちゃ。取材中も歌を歌いながら、マグネットのピースを取ったりはめたり、上機嫌のひふみ君。

今回の撮影も都内の公園で行われまた。傍らにはひふみ君。全身を好奇心と探求心で尖らせ、走り、笑い、泣く“小さな人”を追って走りまわる絵菜さん。そんなアクティブな彼女を見て、新しい本の変化の理由を見つけたような気がしました。いままでの清らかな空気感に、タフさが加わったとでもいいましょうか。

「息子と暮らして気づいたのは、より自分のレシピのひとつひとつに、責任と意味が生まれて、自信がつくようになったかもしれません。子育ての大変さを少しは経験して、世のお母さん方の大変さを実感する毎日です。だから『こうしなきゃいけない』という、縛りや決まりから、みなさんが少しでも解放されて、もっと自由にお菓子作りに親しんでいただける手助けをできたら、と思います。タイトルには『ひふみのおやつ』と、息子の名前が入っていますが、これはひとつの家族の例として入れたもので、子供のいらっしゃる方も、いらっしゃらない方にも、この本を読んでおやつ作りに役立てて頂きたいです。みなさんの思い出のカケラというか、思い出づくりの小さなお手伝いが出来るような、いいレシピと本を作っていきたいです」


text:鈴木麻子 photo:岡利恵子

Profile

松長絵菜

Matsunaga Ena

料理研究家。結婚を機に2009年より在仏。1児の母。著書に『バナナがあったらどうするの?』『十二カ月のバスケット』(ともに女子栄養大学出版部)など。2016年12月に8年ぶりとなる著作『ひふみのおやつ』(文化出版局)を出版。スタイリング、撮影、原稿書きも自ら行い、独特の世界観を作っている。近況はインスタグラム「ena_matsunaga」で更新予定。

Check it out

あなたにおすすめ

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ