脚本家・木皿泉の幸福論 Vol.3

暮らしのおへそ
2017.01.18

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Vol.2はこちらから

あるとき、「愛なんてこの世にない」
と言い切った私に
「愛は育てるものだよ」
と返してくれたトムちゃん。
自分の丸ごとを受け入れてもらったら
「そのまんまでここにいてよし」そう思えた。
それからはもう、すごく自由!


化粧品もパンストもいらない日々はどこまでも自由でした。
毛布にくるまってひらすら本を読むだけで終わる一日、
お茶をすすって、ワイドショーにつっこみを入れる午後。
古い映画を観て議論する夜。
そんな幸せな日々に加えて、2003年には、
連続ドラマ『すいか』で向田邦子賞を受賞。
すべてが順風満帆で、さあ、これからというときの2004年10月、
和泉さんが脳出血で倒れてしまいます。
命がかかった緊急手術の真最中、そんなときに、
いやそんなときだからこそ、
妻鹿さんは、自分にとっての幸せが何なのかを、
はっきりと確信したのだそう。

「死んでしまったら、たぶん、私は、
もうものを書く仕事はできないだろう、
ということが理屈抜きでわかった。
生きていてくれさえすれば
絶対幸せになれると確信する」~闘病日記より

生きてさえいれば何があっても大丈夫という
強い気持ちで、必死で和泉さんを支えた入院生活。
左半身に麻痺が残ったものの、
翌年4月には和泉さんは自宅に戻れるまで回復します。
以来、仕事と介護の日々が始まりました。
大変な状況でも、これが自分の望んだ幸せなんだという強い確信が、
妻鹿さんの気持ちをしっかりと支えました。

一方、和泉さんが望んだ幸せも、
同じくシンプルでした。

「とにかく家に帰って一杯のお茶が飲みたいって、
それだけ。でも実際帰ったら、
今までたくさんの医療スタッフがいたのに
素人のときちゃんしかいないから不安で不安で、病院に帰る! 
って大騒ぎしたんや(笑)」

こうして、2人の幸せのカタチは
くっきりと輪郭を現しました。
自分が求める幸せのカタチを知ることが、
幸せになる第一歩なのかもしれません。

Vol.4に続く

『暮らしのおへそVol.22』より

text:木村愛 photo:興村憲彦

 

Profile

木皿泉

KIZARA IZUMI

和泉努と妻鹿年季子による夫婦脚本家。2003年連続ドラマ『すいか』で向田邦子賞を受賞。2005年年『野ブタ、をプロデュース』、2010年『Q10』など人気ドラマを多数手がける。2013年、初の小説『昨日のカレー、明日のパン』(河出書房新社)を上梓。NHKで放映されたドキュメンタリーを収録した『木皿泉~しあわせのカタチ~DVDブック』も話題。

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