疲労を回復するための正しい姿勢ってどんなもの? vol.2

からだ修行
2017.05.18

今月の先生:「疲労回復専門店PAUSE」丸山祥一さん

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田中が長々と不調の原因に関する見解を話している間も、先生はニコニコとうなずいています。そして話が途切れた頃、静かに言いました。

「僕の考えを言ってもいいですか? 田中さんは姿勢が悪いから腰が痛くなると思っているようですけれど、僕が見るかぎりでは、腰が痛いから、その姿勢になっているんだと思いますよ。原因と結果が逆で、原因は別のところにある。悪者にすべきは姿勢ではないと思うんです」

へ? これは目からウロコの見解でした。ずっと姿勢が悪いと罪悪感を抱き続けてきた数年間でしたが、姿勢が悪いのは原因ではなく、結果ですと? 意外なお言葉に、しばしポカーンとなってしまう私。続けて先生が見解を話してくれます。

「僕がざっくり観察したところでは、田中さんの身体は、『骨盤から下』と『骨盤から上』が分断されている感じ。『お互い同じ家には住んでいるけど、他人です』という雰囲気なんです。腰から下が、何だか自分のものじゃない感じがしませんか? だから歩いていても疲れちゃうし、立っていても疲れちゃうし、身体が立ち上がらないというか、背骨に力がみなぎっていかない感じがして、すごく疲れやすいんだろうな~と思うんです」
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がががーーーん。心当たりがありすぎて、衝撃です。確かに私は常に下半身の感覚が遠く、弱い気がしておりました。でもそれは、座り仕事のせいで下半身の筋肉が衰えているのと、冷え症だから下半身が冷えているからなのかな……思い込んでいたのです。だからこそ、冷えとりで半身浴をしたり、インソールを入れてみたり。今までさまざまな工夫をしてきたのであります。

「じゃあ、ここでいったん立ってみてください。田中さんが『いい姿勢』だと思う姿勢で立っていただけますか?」

いい姿勢……えっと、背筋を伸ばして、あごを引いて……こんな感じでしょうか? 「気をつけ」の姿勢ですっくと立ってみたところを、先生が軽く私の肩を押します。すると、大した力でないのに、ヨロリ。「あ、あれ……??」

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あまりのよろけぶりに、何だか笑ってしまいます。

「ほら、これが『地に足がついていない状態』というやつで、立てば立つほど、立てていない。『気をつけ』の姿勢は、いい姿勢でも何でもないんです」

先生曰く、「気をつけ」の姿勢は、軍隊での統率をとるために行われるもの。右向け右と言われたら右を向き、左向け左と言われたら左を向く、指示者の命令を聞くために、身体をカチーンと固定させ「言いなり」にさせる姿勢。

けれども日本人は伝統的に、「美しい所作」の中での姿勢を重んじていました。たとえば武道、茶道、華道、舞踊、能など。芸事は理にかなった身体の動き、所作をすることが美しいとされています。そこには身体全体の連続性があり、美しいだけでなく速く、強い動きや姿勢を可能にしています。たとえば椅子に座る姿勢よりも、正座や胡坐のほうが、ほんの少しの身体のさばき方で、立ちあがるという次の動作に自然につながっていきます。美しい所作とはつまり、流れの中で「次の動作」にスムーズに入っていける姿勢。そういう姿勢はリラックスして、身体に余計な力が入らず、背骨や腰まわりがやわらかく動く感じです。


だから座っているときも、「背筋ピーン」はNG。背中からはほどよく力が抜け、椅子は浅めに腰かけ、足裏がきちんと床についていて、次の動作、つまり「立ち上がる」ことがスムーズにさっとできる姿勢がいいのだそうです。今まで私が思い込んでいた「正しい姿勢」とは、だいぶイメージが違います。さらには先生が田中の背骨にふれ、いろいろと観ていきます。

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「田中さんの仕事机は、右側に空間の空きがありますね。逆に左側に圧迫感がある。そして机に対して身体がまっすぐではなく、ちょっと左側に傾いた姿勢でパソコンに向かっているでしょう。顔の位置はこんな感じのはずです」

えええ! 机のレイアウトまで分かってしまうのですか? と、冷や汗。確かに私の机は右側に余裕があり、窓も右手にあるのでそちらに空間の抜けがあります。一方、左側に資料や取材ノートを置いて原稿を書くのが習慣で、そういった紙資料が、どっちゃりと山積みされているのが日常です。そして先生のご指摘通り、正面ではなく少し左に傾いた状態で座っておりました。

その積み上がりが実は常に圧迫感となり、左の腰をきゅっと緊張させてしまっている様子。机まわりの状況が、ある姿勢をひき起こし、それを習慣化させてしまう。その結果として腰の痛みという症状が現れているのだそうです。

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さらに先生は、先ほど話した「骨盤の上と下が分断されている理由」を観立ててくれました。

「腰椎という骨は全部で5本あって、背骨の中でも他の骨とくらべて分厚くて広い。ところが田中さんは、この腰椎の感覚がほとんどない。胸の骨、胸椎があって、いきなり次は骨盤がきちゃった感じ。腰の骨5本分の感覚がすっぽり抜けている。だから骨盤の上と下が別人みたいに感じてしまうんです。腰椎に意識がないから、左に体重が乗っていることも無自覚になり、腰痛を引き起こしてしまうのです」

がががーーーん(本日何回目?)。そんなことが?? でも言われてみると確かに、今まで腰椎の存在や役割を意識したことがなかったかもしれません。「背筋を伸ばす」といっても、胸や肩あたりにぐぐぐっと力が入るばかりで、腰が抜けていたかも……と、思い当たるフシがあちらこちらに。
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「自分の背骨が、仙骨から腰椎、それから胸椎、頸椎と順番に積み上がっていることをイメージしてみてください。そしてことあるごとに『腰椎さん、忘れていてごめんねーー』と、さすさすとなでてあげてください。そしてゆるゆる、緩めるような動きをしてみる。ちゃんと『自分の腰がここにあるんだー』と日々意識するだけでも、だいぶ違うんですよ。腰椎に意識を持つことで、姿勢も変わる。そこにちゃんと関心がいっているかどうかが、とても大事なことなんです」

なるほど確かに、そこの意識がすっぽり抜けていたら、腰の使い方も雑になり、腰も痛みというかたちで主張を始めてくるかもしれません。しかし「この子たちが私を支えてくれているのだ」と意識すれば大切に扱うし、支える力も何だか増してくるような気がします。

photo:砂原 文 text:田中のり子


→vol.3に続きます

疲労回復専門店 PAUSE(ポーズ)

東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-15バローレ吉祥寺Ⅰ 1009
TEL:080-4118-1674
営業時間:10:00~22:00
営業日:月、水曜
施術料:10,000円(60分)
http://pause-kichijoji.com/

Profile

丸山祥一

Shouichi Maruyama

東京・杉並区生まれ。青春時代を福岡で過ごし、東京に戻る。専門学校でカイロプラティックの技術を学び、専門院で修業。その後接骨院で働き、独立。池袋で接骨院を運営。自分が考える新しい理想の施術を求めて、東京・吉祥寺に「疲労回復専門店 PAUSE」をオープンする。

田中のり子

noriko tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。

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