自然由来のもので、自分だけの「緑のお薬箱」をつくる vol.2

からだ修行
2017.06.22

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話を伺っていると、かなりのインスピレーション型な中山さん。必要なタイミングで必要な出会いがあったり、アイデアが湧き上がってきたり、その導きや縁によって、自分の進むべき道を決めてきた様子。「マヒナ・ファーマシー」のコンセプトとイメージが降りてきたのは、不妊治療中に「ロミロミ」のサロンをお休みしている時期でした。

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「セラピストの仕事をしていましたし、たまたま私のまわりには自然療法に詳しい専門家の知り合いが多かったから助けられましたが、同じような経験をしながらひとりで悶々と悩んでいたりする女性もきっと多いはずだと思いました。ちょっとしたセルフケアの知恵をシェアしたり、自分が体験してよかった経験を伝えられる場所がもっとあればいいのでは……と考えたんです」

中山さんが最初に行ったのは、現在のショップと同じ名前のウェブマガジンを立ち上げること。東日本大震災の直後、2011年4月のことでした。大きな災害にショックを受け、誰もが大なり小なりの心身の不調を抱えていた時期、月や植物など自然からのメッセージを受け取ること、自分自身の身体と心をしっかりと見つめること……などなど、中山さんの試みは多くの女性の心に響き、少しずつ知れ渡っていきました。

そのうちに「生理痛がひどいのですが、どんなハーブがいいと思いますか?」「最近気持ちがふさぎがちなのですが、おすすめのものはありますか?」といった問い合わせが、読者の方々から届くようになります。

それに対してメールで答えるうちに、サプリメントや精油の在庫を少し持ち、お分けするような感じで通販をしたり、「使い方を知りたい」という要望に応えてワークショップをしたり、友人のインテリアショップの一角を期間限定で借りてポップアップショップ的なことを行ったり。そんなことを重ね、「やはりメールでのやり取りだけではなく、ひとりひとりときちんと向き合いたい」と思うようになっていた時期に、現在のショップとなる物件との出会いがありました。「ここなら商品の販売も、サロンの施術も、ワークショップも一か所でできる」と、お店を構えたのが2015年3月のことでした。

日本ではまだまだめずらしい、「緑のお薬箱」を現実的につくっていく方法や、ハーブや植物療法を日常的に生かす方法、さまざまなアイテムとの付き合い方を、より総合的に伝えていける場所ができたのです。

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「実は私、一か所にじっと留まっていることが苦手で、いろんな場所に行きたいタイプ。本来お店には向かない性格なんです(笑)。けれど心身が不調で不安的になっているときに、『あそこに行けば、何かヒントが得られるのではないか』という場所が『安定してそこにある』というのはすごく大切なのではと、2年続けて強く実感するようになりました」

中山さんは、心身の不調和はそれ自体が悪いことではなく、「自分が変化する時期」「自分を見つめるべきとき」がやってきていることのサインとしてとらえています。

「西洋医学のお薬は症状に効くから、そのサインを消してしまいますよね。けれど、もともとそのサインは『今の自分は、どんな状態なんだろう』と、気づくためのもの。そのサインに寄り添っていくことが、ハーブ療法をはじめとした自然療法の在り方だと思うんです」

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中山さんの経験では植物には共鳴性があり、使う人が疑ってかかっているとまったく効かなかったり、的確なものやタイミングでないと、正しい効果が得られないことが多いそう。けれども自分の心のクセや生活の習慣、四季を通じたサイクルの中での体調の変化などをしっかり見つめ、その気付きがあるごとにひとつずつハーブを手にしていけば、どんどん信頼が持てるようになり、結果的に自分だけの「緑のお薬箱」が完成する。つまり「緑のお薬箱」をつくり上げることは、自分自身をしっかり見つめていく土台をつくることでもあるのです。

たとえば夏になったらなぜか口内炎がよくできる。それはなぜだろう……と自分の身体を見つめてみると、夏になると体力が落ちて、冷房で身体も冷えて免疫力が下がっていることがどうやら原因だと思い当たる。そこでそれに対処するサプリメントを試してみて、変化があれば、「これは自分の身体に合うものだ」と実感ができる……。一般的な「口内炎に効く」という市販薬とはまったく違ったアプローチですが、そういう自分の身体との対話を重ねていくことで、身体への理解も深まっていくわけです。

そうはいいつつ、「西洋医学の診断やお薬を否定する気持ちは、まったくない」と中山さん。西洋医学にも自然療法にもそれぞれの役割があり、長所と短所がある。そして自分の状態に応じて、それぞれをかしこく使い分けていくことが何より大切と考えているそうです。

さていよいよ、中山さんご自身が実際に使っている「緑のお薬箱」を見せていただきました。

14_21ナチュラルなかごに、リネン素材のおくるみに包んで入れています。中に入っているものは、ハーブサプリメント、精油、フラワーレメディやチンキ、プロポリスなど。定番的に常備しているものもあり、そのときどきで「これは」と思うものと入れ替わるものもあるそうです。そもそも「マヒナ」の店内に並んでいる商品は、中山さんが実際に試し「これはいい」と実感したもののみなのだそう。

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こちらは「緑のお薬箱」の中で多くを占めているアメリカ「エクレクティック」社のハーブサプリ。カプセルタイプとチンキ(液体)タイプがあります。

いちばん左の「ミルクシスル」(西洋アザミ)は、人とたくさん会ったり、気を遣う仕事が続いたりしたときに飲んでいるそう。また、お酒を楽しむときも欠かせません。

「ネトル」は変な咳が続くとき、鼻の中が急に荒れたり、アレルギーのようなもやもやを感じたときなどに。

「クランベリー」は、アメリカで働く女性にいちばん支持されているというハーブ。急に冷えたり、忙しくてストレスがかかったりすると、「膀胱炎っぽくなる」「それがクセになっている」という人に人気なのだとか。

「セントジョーンズワート」は、中山さんがいちばん使っているサプリ。季節の変わり目などに「朝、起きにくい」「昼間、頭がぼーっとする」「気分が落ち込みやすい」といったときに。

「エゾウコギ」(シベリアンジンセン)は、液体タイプのものを。過去に腎盂炎を発病したこともあるという中山さん、とくに腎臓に負担がかかりがちな冬の時期には定期的に飲むようにしているそう。

右端の「エキナセア」は、風邪のひき始めや胃腸の違和感など、何か不調和の兆しがあったとき、つまりは「どうやら免疫が下がり始めているな」というときに、ワンスポイト。世界でいちばん利用されているハーブなのだとか。


photo:砂原 文 text:田中のり子

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マヒナ・ファーマシー

東京都世田谷区代沢5-29-17
TEL:03-6805-4545
営業時間:13:00~19:00
定休日:不定休(施術中は店舗を一時閉めているので、確実にご来店されたい場合は、事前に電話かメールにてお問い合わせを)
http://www.mahinapharmacy.com/

Profile

中山晶子

Akiko Nakayama

音楽業界でアーティストマネージメントやCD宣伝・制作の仕事を経て、2003年にハワイアンヒーリング「ロミロミ」と出会い、オアフ島のニエラニ・ベネット、ハワイ島のスーザン・パイニウ・フロイドに師事後、セラピストに。「ニールズヤード」にてメディカルハーブJAMHA認定ハーバルセラピストコース受講・メディカルハーブコーディネーター。2011年4月にメールマガジン「マヒナ・ファーマシー」をスタートし、2015年3月実店舗を東京・下北沢にオープン。

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