石川 源さん(デザイナー) 石川博子さん(雑貨店オーナー)

ふたりのおしゃれ
2016.03.06

「暮らしとおしゃれの編集部」から発行した本『ふたりのおしゃれ』。Amazon Kindleの電子化リクエストが多数寄せられ、この度電子版が発売されました。これを記念して本に掲載したインタビューの一部を連載でご紹介しています。

 

第3回は、人気雑貨店「ファーマーズテーブル」オーナーの石川博子さんと、グラフィックデザイナーの石川 源さんご夫妻。ブランドや世間の評価は関係なく、自分たちが心から「いいね」と思ったものを大切にしてきた、おふたりの歩みをうかがいました。

 

 

原点は10万円で買った

ボロボロの中古車。

ふたりの価値観は

今も当時のまま。

s-20160225_石川さん1

石川博子さんが営む雑貨店「ファーマーズテーブル」は、2014年に30周年を迎えました。日本人作家の器の隣にイギリスのアンティーク雑貨、その向かいには着心地のいい洋服が並ぶ店内。オーナーである博子さんの選択眼が貫かれたこの店を、展示会のポスターやHPの写真など、グラフィックな面でサポートしているのが、広告の世界でデザイナーとして活躍している夫の源さんです。

 

源---「ファーマーズテーブル」と僕のデザイン事務所と、ふたりの結婚生活はほぼ同時にスタートしたんです。結婚前、外資系の広告代理店に勤めていた僕は、結婚と同時に会社を辞めてフリーになったから、兄貴に「お前、何考えてるんだ」って怒られたんだ。今考えると、博子の親もよく許してくれたよね。

 

博子---そう? 源さんが代理店に勤めているから結婚したわけじゃないから、私は何とも思わなかったな。私ね、昔からファッションに懲りすぎる男の人は苦手なんです。ダサい洋服の人も嫌だけど、ブランドはコレコレでなくちゃ、とこだわりすぎるのもねぇ。その点、源さんは近所で買ったジーパンやセーターをさらりと着ている感じがよかったんです。乗っている車も昔の「シビック」で錆びてボロボロなんだけど、ステッカーがたくさん貼ってあって、それが格好よかったな。床に穴が開いてて、ときどきバンッと音がして(笑)。友達に「愛がなきゃ、あんな車、乗れないよ」っていわれました。

 

 

s-20160225_石川さん2

結婚5年目頃。「英国のオープンカー『MGB』の中古車に乗っていたんですが、手動の幌で開閉が大変(笑)」

 

 

 ふたりが結婚したのは源さんが36歳、博子さんが26歳の時。当時、「女性に大層モテた」という源さんですが、博子さんはデートの時に妙に緊張している源さんの姿を見て、「実は真面目な人なんだ」と確信。博子さんから結婚を持ちかけたそうです。

 

源---それまで誰とも結婚する気がなかったんです。だけどつきあいたてで、まだ楽しい時期だったから、このまま別れるのは嫌だなって結婚を決意しました。僕は博子より10歳も年上でしょ? 自立して自分自身の縄跳びをしていたから、僕の世界に入りたいなら、お入んなさいって思ったわけ。「俺と結婚したいのなら、こっちの世界に来てもいいぜ、楽しいぜ」って思ってたんだ。ところが結婚してみたら、博子は博子で自分の縄を跳んでいて、僕のいうことなんてまるで聞かないの(笑)。だから初めはふたりの縄がこんがらがって大変だった。

 

博子---お店のこともずいぶん、アドバイスしてもらったのに、当時は若かったし、突っ張っていたから源さんが何をいっているか全然、理解できなかった。

 

源---初めの頃は胸ぐらつかんで「なんでわからないんだ!」って感じだったんです。でもだんだんそうやってもダメなんだってわかってきて。

 

博子---源さんは忍耐強いから、私が育つのを待ってくれたんだね。

 

『ふたりのおしゃれ』より

photo:和田直美 text:編集部

 

vol.2に続きます。

Profile

石川 源 石川博子

Minato Ishikawa Hiroko Ishikawa

源さんは1948年生まれ。外資系の広告代理店を経て、独立。パッケージデザインやポスターなどのグラフィックデザイナーとして活躍。博子さんは1958年生まれ。スタイリストを経て86年「ファーマーズテーブル」をオープン。お嬢さんと3人暮らし。http://www.farmerstable.com/

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