長坂透さん(雑貨、インテリアショップ運営会社社長) 石井風子さん(雑貨、インテリアショップ企画ディレクター) 【前編】

ふたりのおしゃれ
2016.03.29

「暮らしとおしゃれの編集部」から発行した本『ふたりのおしゃれ』。Amazon Kindleの電子化リクエストが多数寄せられ、この度電子版が発売されました。これを記念して本に掲載したインタビューの一部を連載でご紹介しています。

 

第5回は、九州で雑貨やインテリアショップを展開する、長坂透さん、石井風子さんご夫妻です。似ているところもあるけれど、違うところはとことん違うというおふたり。結婚し、一緒に夢を追いかけた日々について語ってくださいました。

 

夫婦は違って当たり前。

それがわかるようになったのは、

つい最近のこと。

ずいぶん時間がかかりました。

s-20160323_石井さん1

 

古いボルボの前に佇む透さんと風子さん。今から30年以上前に撮ったという色あせた写真は、まるで映画のワンシーンのようでした。ふたりが、愛知県瀬戸市にある器メーカーに勤めていた頃のものだそうです。

 

透--- 休みになると、気の合う仲間たちと一緒に名古屋市内まで出かけました。

 

風子--- 好きな映画や音楽が同じで、音楽を聞きながらドライブしたり、古着屋さんを回ったり、楽しかったなあ。

 

故郷の福岡から上京し、デザイン学校でプロダクトデザインを学んだ透さん。当時はアメカジ全盛時代。アメ横でネルシャツやジーンズなどを売っているショップに通っていたそうです。やがて「ビームス」や「エミスフェール」などがオープンし、ヨーロッパの香りのするファッションに憧れたことも。そんな中、都内の家具メーカーを経て瀬戸市の器メーカーへ転職しました。

 

透--- 友達から田舎の町に、デザイナーたちが集まった面白い会社があると聞いて。器を中心に、木や紙や金属など、いろいろな素材でものづくりをしているメーカーでした。社員は、デザインはもちろん、在庫管理から販売、営業、経理まで、手分けして担当したんです。いろんなことが学べて楽しかったですね。

 

一方、風子さんは美術大学を経て、透さんと同じ会社に就職。

 

風子--- 美大では、みんな個性的な格好をしていたから、入社1日目のファッションも、ずいぶんヘンテコだったよう。まん丸めがねに三つ編み、フォークロアのスカートにブーツを履いて、革のトランクを持って……。入社後、彼に洋服屋さんに連れて行ってもらって、徐々に“普通”になっていったかな(笑)。

 

 当時、21歳だった風子さんは、仕事を思いきりやってみたいと、30歳までは結婚しないと決めていたのだとか。店舗のディレクションを任され、日本各地の直営店を飛び回る日々を送りました。

 

風子--- 北海道から富山、大阪、神奈川まで、店舗を回って1週間ぐらいは滞在するんです。そうしたら、彼が土曜日に会社が終わってからわざわざ来てくれて……。それで、予定を早めて26歳で結婚しちゃいました(笑)

 

s-20160323_石井さん2

風子さんが21歳、透さんが23歳頃。70年式のボルボで長野県へ遊びに行った時。

 

 

その頃から、「いつかふたりで好きなものを集めたお店がやれたらいいね」と話していたそうです。そして結婚3年目に透さんの故郷、福岡に戻り、お店づくりの準備を始めることになりました。まずは資金を貯めるために、雑貨の卸の会社を立ち上げました。当時風子さんは、長男を出産したばかりだったそう。

 

風子--- 本当は、仕入れの仕事がしたかったのですが、小さな子どもがいれば出張にも出られません。私ができることといえば、経理と事務でした。お金のやりくりなんて、いちばん苦手だったんですが、あの経験は今、とても役に立っていますね。私ね、いつもつらい時、『この大変さが一生続くわけじゃない』って思うんです。『今一生懸命やっておけば、その先にはきっといいことがある』って。

 

その時の気分に流されず、自分の立ち位置を俯瞰で眺めることができる……。それが、風子さんが仕事と家事を両立できた理由のよう。こうして3年が経ち、資金が少しできた頃、念願だったショップ「スリービーポッターズ」をオープンすることになりました。今では、九州では知る人ぞ知る店。東京や大阪からもお客様が集まります。

 

長坂--- いつも通っていた道路沿いに気になる物件を見つけて……。そこは自動車の修理工場だったんですが、ある日引っ越し作業をしていたんですよね。もしかして借りられるかも? と早速大家さんを探して交渉しました。

 

風子--- 自分たちで内装を手がけて、そんな作業も楽しかったですね〜。

 

長坂--- 周りの人に「こんな人通りのないところに出して大丈夫?」と心配されたんですが、自分たちが好きなものを集めれば、きっとお客様にわかってもらえると、根拠のない自信があったんです。

 

お店は順調に売り上げを伸ばし、次々に店舗を増やしていきました。10年前にはチェーン店も展開。

 

風子--- 個人のレベルを越えて、会社がどんどん大きくなっていくのを見て、彼はいったいどこをめざしているんだろう? とわからなくなった時期もありました。最終的に納得したのは、若い頃からの彼の性格を知っていたから。お金儲けのためだけに動く人じゃない。すべては、よりよい会社にするためであるはず。だったら私は一歩引いて、自分が担当している店をしっかりやろうって思えるようになったんです。

 

『ふたりのおしゃれ』より

photo:亀山ののこ text:一田憲子

 

【後編】に続きます。

 

Profile

長坂 透 石井風子

Toru Nagasaka Huko Ishii

長坂さんは1955年生まれ。家具メーカーを経て愛知県瀬戸市の器メーカーに転職。石井さんは、1957年生まれ。美術大学卒業後同社に就職。結婚後、福岡で雑貨の卸しを手がける(株)Weeksを立ち上げ、ショップ「スリービーポッターズ」をオープン。数々の雑貨店などを展開。

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