鍼とお灸で身体を整える vol.2

からだ修行
2018.08.28

今月の先生:金子マナさん

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取材日は、まさに酷暑続きのど真ん中。暑さ続きで耐え切れず、普段飲み慣れない冷たい飲み物を口にし続けたせいか、まんまと夏バテに。胃の調子が悪く、食欲不振。さらには生理2日目で、頭はぼーっとして、腹痛もあるという、不調のオンパレード状態。しかし金子さんは「そういう不定愁訴こそ、鍼灸の得意分野」と、力強いお答え。

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問診が終わったあとは、着替えをして治療室に移動。まずは脈診です。脈は「浮いている/沈んでいる」、「早い/遅い」、「力強い/弱い」の3つのポイントから判断するそう。これらはどちらかに偏りすぎているのがよくなく、あくまで中庸がいちばん望ましいのだそう。

熱がこもってのぼせる夏や、お腹がいっぱいでくるしいときなどの脈は「浮く」ことが多く、逆に寒くて縮こまる冬や、気力がなくて元気がない人は「沈む」ことが多い。

「早い」のは熱があるとき、せかせかした気分のとき。「遅い」のはエネルギーのめぐりが悪いとき。ただし「遅い」というのは、気持ちが急いていることが多い現代人ではめずらしいそう。「力強い」のはよさそうなイメージですが、「強すぎる」のは、身体のどこかに痛みや炎症があるとき。「弱い」のは、貧血や疲労などエネルギー不足

ちなみに、この日の田中の脈で特に際立っていたのは、「浮いていて、力が強い」状態。夏の暑さで頭がボーッとなっており、お昼を食べてすでに2時間経っていたのに、まるで食べた直後のように胃に熱がたまっている。一方、冷房で手足は冷えており、冷たいものをガブガブ飲んでしまっているから、腸も冷えている。上半身にエネルギーがたまって、下半身が弱っている。このように、全身で熱がアンバランスな状態なので、このチグハグを取り除く治療を行うこととなりました。

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まずは、あお向けで横になります。何やら四角い木の箱を、田中のお腹の上にのっけました。こちらは「箱灸」と呼ばれるお灸。箱の中に、燃やしたもぐさを入れて患部を温めるもので、熱が伝わる範囲が広いのが特徴。こちらを使って、冷えていた胃から下腹部にかけて、じんわりと温められます。

これが、何とも言えず気持ちがいい。と同時に、温められることによって、「私のお腹、冷えていたんだな~」ということが実感されます。このときもこのあとも、金子さんは何度となく田中の脈を取りながら、お灸や鍼の効き具合を細やかに観察してくれます。以前、鍼が効きすぎて体調が悪くなってしまった経験があったのですが、こうしたチェックがあることで、すごく安心できました。

次に上半身に熱が溜まっている傾向があるので、足のほうにお灸を施し、下半身にエネルギーを下げるようにします。

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「専門的なことを言うと、『胃経』と『脾経』という経絡は、それぞれ胃と消化に関する経絡(エネルギーの通り道)で、東洋医学では陰陽で表裏の関係なんです。胃のほうに熱がこもって強くなっていると、裏側の脾が弱ってくる。なのでそれらが半々になるように、鍼灸で補ってあげるんです」

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ここまでやってようやく脈が整ってきたので、鍼を使い、生理痛の素となっている固くなったお腹をゆるめたり、背中の張りを取ったり。鍼は感じ方に個人差があると思うのですが、私にはチクッとする程度で痛みはほとんど感じませんでした。何度も脈を取り、様子を見ながら進めてくださっていたので、それが安心につながったのかもしれません。

「こういうことを言うと眉唾ものかもしれませんが、身を預けてくれる方のほうが、鍼灸は効きやすいです。疑り深い方だと『今、何やっているんだ?』とかいろいろ考えて、身体に力が入ったりするので、効果が出にくい。決めつけが強いと、変化に弱く、身体も変化したくないと拒否反応が出てしまうんです」

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なるほど~。「好きにしてください!」と、受け渡してしまったほうが、鍼灸師にも患者にも、お互い楽なのですね。その後もうつ伏せになり、足や背中に鍼を打ってもらいます。

このときの田中は背中が張っていて、熱がこもりすぎて、首まわりの毛穴がばーっと開いている状態だったそう。これをほわーんと温めて開かせきったあとに、「アツ!」と感じるくらいの熱で引き締める。このようにお灸の熱は、緩めと引き締め、ふたつの使い分けができるそう。

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ハリトオキュウ

東京都渋谷区富ヶ谷2-21-8 ビルファイブ富ヶ谷102
TEL:03-6886-5748
初診1時間6000円、はりきゅう治療40分5000円、おきゅう教室1時間3000円
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Profile

金子マナ

Mana Kaneko

日本大学芸術学部卒業後、チンドン屋を経て、飲食業界へ。退職後、鍼灸専門学校を経て、鍼灸師に。2016年、渋谷区・富ヶ谷に「ハリトオキュウ」を開院。

田中のり子

Noriko Tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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