山下りかさん【前編】「現場でしか生まれない緊張感と高揚感を、写真一枚一枚に込めて」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.04.14

 

そばかすがチャームポイントになることも、かごのかわいさも、公園で食べるサンドイッチのおいしさも。大事なことはみんなオリーブに教わった。80年代、90年代、少女たちに熱狂的に支持された雑誌『オリーブ』。その熱狂をつくり出していた、素敵な先輩を訪ねます。

text:鈴木麻子

 

90年代のはじめころ、『オリーブ』を読んでいて時折、目にする記事にサンフランシスコのレポートがありました。サンフランシスコ在住の元『オリーブ』スタイリストの女性から届く、現地の情報(おしゃれのこと、ごはんのこと、オーガニックのことなど)は、すべてが未知の世界でキラキラ。“海の向こうの素敵”を見せ続けてくれていた、オリーブのひとつの象徴として元少女たちの胸に刻まれているはずです。

そのレポートの発信源は山下りかさん。いまは手仕事作家、そしてライアリスタ(ライアーという竪琴の演奏家。【後編】で詳しく紹介します)として活動しています。

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山下さんがオリーブに在籍していたのは、1985年から1990年の5年間。その前半はアシスタントだったので、誌面で活躍したのは3年ほどといいます。

「最初は、スタイリスト吉場幸江さんのアシスタントをしていました。とっても優しい方で、いい思い出しかないんですよ。でも、当時は携帯もパソコンもデジカメもない時代。いまのスタイリストさんには無い苦労が、少しあったかもしれません」

たとえば、撮影用商品を集めるとき。「○○○というお店で、△△△を借りてきてねと頼まれて、大体の場所を聞くのですが、いまみたいに情報が発達していないから、まずお店にたどり着くのが大変。そして、やっとの思いでたどり着いても、指示されたものが見つからないなんていうこともありました」

一瞬一瞬の記憶力、一期一会の物に対する集中力……。物にあふれ、スマホひとつでありとあらゆる情報に秒速で辿りつける、いまの私たちには欠けがちな力が試された時代です。

「最近は、駅ビルに入っている雑貨店とかでびっくりするんです。『これは、かつて私が東京中を探し回って見つけた物じゃないか!』って。いま、みんなのなかで当たり前になっている物が、骨を折って探さなければ手に入れられなかった時代だったんですよね。だからこそ、雑誌じゃないと見せられない物、できないことが当時はいろいろあったような気がします」

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↑ 在米中に手に入れたマグカップ。いまでは日本でも気軽に買えるようになった「ディーン&デルーカ」も、当時は憧れのアイテム。

その後、誌面のスタイリングを一人で任されるようになり、ファッションはもちろん、雑貨、フードまわりまで、さまざまなジャンルのコーディネートを手がけました。この「“オリーブ少女”の先輩に会いに行く」の前回記事で紹介した、堀井和子さんの連載「Eating」がスタートした時期にスタイリングを担当したのも、山下さんです。

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↑ 取材当日は、オーバル皿に紅茶とコロンとした形の手作りパンを一緒にのせて、おもてなし。『オリーブ』の中のワンシーンのような、山下さんらしい伸びやかでかわいいテーブルコーディネート。


オリーブの仕事で忘れられないのは、撮影当日の緊張感と、山下さんは話します。撮影の内容は事前にはざっくりとしか決めず、あとは現場がすべて。「撮影の当日までに、それぞれのスタッフがものすごく集中して、世界観をつくって臨みました」。スタイリストが担う責任も重大で、現場だからこそ生まれる空気感や可能性が尊重されたのです。

「おのずとスタッフ間の会話も濃くなるし、一体感をもって進まざるを得ない。そういう現場での濃密なスタッフの関係や、少しでもよいものを作りたいという緊張感が、読者にも伝わったのでしょうか。売れ行きも良く、私たちもやりがいがありました。『こんなことやりたい!』という提案がどんどん実現でき、読者の反響もよくて。そのいい循環を皆で分かちあい、雑誌作りをしていました」

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↑ この日は、「トゥジュー」のブラウス、ウエストにコサージュがついた「トワヴァーズ」のパンツに、「トゥジュー」のウールのジレを重ねた、大人っぽいワントーンの着こなし。

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↑ 季節のもの、手仕事のものが随所に飾られた、心地のよいご自宅。

 

→【後編】へ続きます

 

第1回 大橋利枝子さんはこちらから

第2回 堀井和子さんはこちらから

第4回 湯沢薫さんはこちらから

第5回 大森伃佑子さんはこちらから

Profile

山下りか

Rika Yamashita

『オリーブ』のスタイリストとして活動の後、1990年渡米。ニューヨーク、サンフランシスコで生活した後、帰国。在米中にシュタイナー教育に出会い、子供たちをシュタイナー学校に通わせながら、子育て中心の日々を送る。

現在は“手の仕事”の講師、ライアリスタ(ライアーという竪琴の演奏家)として活動。高輪、広尾にあるシュタイナーこども園での「手の仕事クラス」や、「アウディオペーデ」のライアークラス、1年コースで講師を務める。この春からは「逗子シュタイナーこどもクラス」(問い合わせ先zushikodomo@gmail.com)もスタート。また、プレスルーム「alice daisy rose」では、HPの写真とスタイリングを担当。

4月23日(土)には、東京・代々木上原のホール「ムジカーザ」で、仲間とともにライアーの演奏会『NOLA[小さな鐘]のひびき』開催。チケット情報など、詳細はこちらから。
https://www.facebook.com/events/1683977088546846/

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