スタイリスト・高橋靖子さんインタビュー【後編】

特集
2017.01.08

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毎日が誕生日

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 いつも笑顔のヤッコさんですが、ふとしたときにたまらなく寂しくなることもあるそうです。

「仲間はたくさんいるし、ご飯を一緒に食べに行ったり、にぎやかな時間は楽しいけれど、そうじゃないときはすごく孤独。夕方の寂しさやひとりぽっち感は、心に染みますね。私は5歳で養女になったんですが、その頃から孤独を引き受けなくてはいけない人生だったんだと思います。でもね、それがあるから服を探しに出かけて、『わあ、いいものを見つけちゃった!』と喜んだり、『今度はあの人を驚かせちゃおう!』と企んだりと、クリエイティブな楽しみ方ができたんじゃないかなあ。どんなことも真実は表裏一体。まるっきり幸せな人なんて絶対にいないんだと思います。私は、人並みはずれたお友達関係もあるけれど、人並みはずれた孤独感もあるんです」 

 それでも、ヤッコさんに会った人はだれもが、ヤッコさんのことを大好きになってしまいます。50歳で離婚をし、ショックのあまり1週間で10キロも痩せてしまったそうです。すると、なんとデビッドボウイが話を聞いてくれた上「for YAKO still NO.1」(ヤッコは今でもNO1だよ)とサインをしたギターを贈ってくれたのだとか。そのギターでまずは3曲弾けるようになると、友人たちが新宿のバーに連れ出し、ヤッコさんのライブを開催することを決定。「ザ・プライベーツ」の延原達治さんの指導のもとにレパートリーを7曲まで増やし、周りのあらゆる人たちが集まって、ヤッコさんを元気づけるために、てんやわんやのお祭り騒ぎを繰り広げてくれたそうです。

 どうしたら、そんなにも人に愛されるようになるのでしょう?
「私が、あけっぴろげだらかじゃない?」とヤッコさん。
自分を「開ける」からこそ、いろんな人が「入って」きてくれる……。ただし、「開ける」のは、楽しいとき、嬉しいときだけです。悲しいとき、苦しいときには、黙って静かに閉じるそう。

「離婚のときも、落ち込んではいましたが、自分からつらいと言ったことは一度もないのよ。言わないですむように、周りのみんながしてくれた。私の周りにいるのはそういう人ばかりなの」

 ヤッコさんの笑顔の裏側には、悲しい顔を人には決して見せず、苦しいからと言って弱音を吐かない……。そんな強さがありました。だからこそ、その明るさが周りの人を照らし、「ヤッコさんと会うと元気をもらえる」とみんなが集まってくるのかもしれません。

 元気でいるためには、いつもご機嫌でいなければなりません。
「毎朝起きて、体調がよくて、朝ご飯がおいしい、っていうのがすごく嬉しいの。今日もアボガド1個に亜麻仁油をかけて食べてきたのよ。前の日にイヤなことがあっても、一晩寝れば大抵忘れちゃう。そしてまた新しい朝を迎える。私ね、毎日が誕生日だと思ってるの」とヤッコさん。さらにこうも語ってくれました。

「長く仕事をしてきて、やめようと思ったことは一回もないわね。私の場合、仕事が仕事じゃないの。それは、生きることと密接に結びついている。撮影の現場では鋤田さんというカメラマンがいて、デビッド・ボウイがいて、そこに私が生きて加わっている……という感じ。鋤田さんの肩越しに、デビッドを見つめているってことだし、スタイリングを直しにしったら、彼がふっと息のかかるところに立っている。それは、すごく幸せなことですね」

 

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 実は、この50年という節目のメモリアルイヤーを過ぎたら、ヤッコさんにはやってみたいことがあるそうです。「自分はまだ、何もやっていないっていう気持ちがどこかにあるの。私ね、みんなに『かわいいね』とか『若いね』とは言われるんだけど(笑)、『怖いね』って言われたことはないの。だから、今後は『怖いこと』をやってみたい。作家の佐藤愛子先生みたいに、歯に衣着せぬ物言いで、怒ったり、語ったりしてみたいのよ」

 ヤッコさんは、今まで『表参道のヤッコさん』『家族の回転扉』など数々のエッセイも執筆していらっしゃいます。軽快で楽しいエピソードの裏側に、人生を見つめる視点を秘めた文章は、多くの人の心に響きました。そして、今、これまで自分の中にしまい込んできたものを、再度見つめ直し書いてみたいと思うようになったそう。ちょっぴりドキドキするけれど、「怖いヤッコさん」と出会える日が、今から楽しみでなりません。

 

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撮影:ワタナベアニ  取材・文:一田憲子

 

YACCO SHOW
開催期間:1/14~2/12 11:00~20:00
開催場所:B GALLERY (BEAMS JAPAN 5F) 東京都新宿区新宿3-32-6
http://www.beams.co.jp/bgallery/

Profile

高橋靖子

YASUKO TAKAHASHI

1941年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、大手広告代理店を経て、原宿セントラルアパートにあった広告制作会社に転職、スタイリストに。その後フリーランスとして独立。ロンドンでの山本寛斎氏のファッションショーをプロデュース。70年代からデヴィット・ボウイをはじめ、数々のミュージシャンや俳優の衣装を手がけ、現在も広告を中心に活躍中。

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