“人を抱きしめるような”美しく優しい存在「池邉祥子服飾研究室」の服

今日のひとしな
2018.02.26

~ 「組む東京」 vol.26 ~


「今現在、私にとっての洋服は人間を精神的・肉体的にも“抱きしめるような”美しく優しい存在になっています」。服飾デザイナーの池邉祥子さんの言葉です。

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<TALK TO ME  晴hare  ラオス 手紡ぎ手織のコート>

身にまとうものは、人の生活とは切っても切れないもの。そして、それに対しては千差万別の捉え方があると思います。「おしゃれは我慢」とか「勝負服」などという言い回しがあります。様々な意味に取れる言葉ですが、“無理してでも挑む感じ”は、なんだか人間味があって、嫌いな言葉ではありません。ただ、個人的には、自分の本質とは懸け離れた考え方だと受け止めていました。一方、祥子さんの言う、「洋服とは、人間を“抱きしめるような”美しく優しい存在」という言葉は深く心に響き、その言葉の描き出す幸福感に、うっとりと思いをめぐらせることができるのです。

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今日ご紹介したいのは、祥子さんがデザインするラオスの手紡ぎ手織の布で作られたコートです。人間の手仕事の柔らかさを宿した、味わい深く、力強い質感。襟周りから前立ては、かすかに光沢のある黒のシルクリネンで縁取りされ、全体の印象をきりりと美しく引き締めます。ボタンを閉めるたびに指先に触れるこの縁取りは、シャリ感が気持ちよく、背筋を伸ばしたくなる感じ。襟の形は、首筋が美しく見えるように、注意深くデザインされています。

同じ素材の布でウエストを締めれば、形はドレスコートのようにエレガント。前の合わせは、着物の着心地を想起させます。和のスピリットを感じる。そこがまた私が祥子さんの手がける服に強く魅かれる理由の一つです。はたまた、前を開けて羽織れば、前立ての黒の線がキリッと縦に二つのラインをつくりだし、翻って、どこかユニセックスな颯爽としたイメージを醸し出します。

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<TALK TO ME  晴hare  赤い絹糸で見頃を繋いだノースリーブブラウス>

祥子さんは「池邉祥子服飾研究室」を主宰し、そこで、現代における人間と衣服の関係を見つめながら、衣服制作や古い衣服の収集といった様々なプロジェクトを手がけています。その活動は、次の3つが軸となっています。女性の既製服のラインのブランド「TALK TO ME」、仕立て服のラインの「talk to her」、古い衣服を収集保存するプロジェクトの「research&collect」。中でも「TALK TO ME」は、さらに「晴hare」と「褻standard collection」という2つの視点で展開しています。「組む」では、2017年11月に、この3つの軸、全てをご紹介する展示を行いました。そこに出品されていて、一目で惹きつけられたのが、「晴hare」のラインの1つである、このラオスの手紡ぎ手織りのコートでした。

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<TALK TO ME  晴hare  茜で染めたウールストール>

彼女の淀みない目で見極められた素材と、所作をもきれいに見せるように設計された服作りは、まとうと、さらに人の形の美しさを際立たせ、個性を引き立てます。女性に生まれた醍醐味を再認識させてくれ、自分は大切な存在なのだと感じさせてさせてくれる服。それは、展示会の際、試着する女性たちの高揚感を間近に見た私が、実感したことです。

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<TALK TO ME  晴hare  インド手織シルクの羽織ジャケット、オーガニックコットンリネンのタイトスカート>

「人間にとっての“幸福”を、衣服作りで探求している」と言う祥子さん。一人一人の女性が内に秘める、胸一杯に溢れる思いと膨大な時間。それを“抱きしめる”服。祥子さんの服作りへのゆるぎない志はもちろんのこと、まとう人に対する深い愛情があるからこそ、この服は特別なのだと、私は思います。

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私がこの世を去ったあと、愛用した祥子さんの服に、娘や孫が袖を通してくれたらいいなと思います。その時もこの服は、私の娘や孫を抱きしめてくれるでしょう。そして、おばあちゃんはこんな服をまとっていた人なんだと、思ってもらえたら嬉しい。彼女の服を手にとりながら、そんな穏やかな時間が流れる未来を夢想しました。

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<TALK TO ME  晴hare  ドレスシャツ>

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<TALK TO ME  standard collection  久留米絣のワンピース>

「組む」での池邉祥子さんの個展は、2018年秋を予定しており、日程が決まりしだいHPなどでお知らせいたします。メールでの案内をご希望の方は、下記のアドレスにご連絡ください(掲載している服は、完売しているものも含まれておりますので、ご了承ください) 。

contact@kumu-tokyo.jp

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<TALK TO ME  晴hare  インド手紡ぎ手織 シルクワンピース>

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<2017年10月@組む>

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<2017年11月@組む>

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<2017年11月@組む research&collect 古い衣服の収集保存プロジェクト>

 

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組む東京

国内外のものづくり、手工業の交流拠点となる場として、ショップ、ギャラリー、コミュニティ・スペースの機能をもつお店。「今日のひとしな」の執筆は、代表・キュレーターの小沼訓子さん。

 

東京都千代田区東神田 1-13-16
tel:03-5825-4233
営業時間:12:30~19:00
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http://www.kumu-tokyo.jp/
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