【パリのごちそう】背筋を伸ばして食べたい、王道の舌平目

【特集】食いしん坊のためのパリ旅 vol.2 ~魚~
2016.08.02


夏休みシーズン、みなさん旅の予定は決まりましたか~? 今回がおすすめしたいのは、ずばりパリ。観光や買い物も楽しい場所ですが、編集部のイチオシは1冊の本を小脇に抱えて歩く「食いしん坊の旅」。

今週、デイリーで特集している本『パリのごちそう』は、仕事でプライベートで、おいしいものを毎日食べまくっているパリ在住フードジャーナリスト・高崎順子さんが、「本当は教えたくないくらい!」というとっておきのお店だけを詰め込んだ1冊。これさえあれば、ひと味もふた味も違うパリの旅になること、間違いなし!

そこで今週は、『パリのごちそう』を大特集。とくにおすすめのお店を特別にご紹介しますね~。きのうの「肉」に続きまして、第2回のテーマはもちろん「魚」。魚料理、とくに舌平目のムニエルがおいしいレストランです。

 

 

Le Dôme(ル・ドーム)

 

フランスには“金曜日は魚の日”という言葉があります。もともとはカトリック教会の「キリストが十字架にかけられた金曜日には、鳥獣を食べない」という教えから来ている風習。それを知らなかった私は当初、まったく違う理由を妄想していました。魚屋さんの数が少なく、評判のお店には区をまたいでお客さんがやってくる、内陸の街パリ。高価で手に入りにくいものだからこそ、週末の金曜日くらいはフンパツしていいお魚を食べよう! ってことでしょ……? なーんておかしな勘違いをしていたもんですが、それくらい、パリでは鮮度のいいお魚が貴重な存在なのです。

レストランでもそれは変わらず、食い道楽たちが魚料理を目当てに通うお店は限られています。なかでも一番有名なのが、こちら。仕入れ次第で毎日変わるメニューの9割が魚介類で、魚のメインだけでも約10種類! しかも調理法はクラシックの王道。マルセイユ風ブイヤベース、ブリル(ヒラメ)のヴィネグレットソース、ターボットガレイのオランデーズソース、鯛のキノコクリームソースがけ。これぞフレンチ! と、拍手喝采したくなるようなラインナップです。とはいえ、私がここで注文するのは「舌平目のムニエル」一択。もっというならば「このお店で舌平目が食べたい」と念じて行くことがほとんどです。大きな仕事や、何か大変な山を越えた後。自分にご褒美をあげたいな……と感じたとき、このお店と料理が頭に浮かびます

IMG_0096
↑ Sole de petit bateau meunière(小舟の漁師が釣った舌平目のムニエル)48ユーロ
400gサイズの舌平目を丸ごと一匹、一人前。バターの中で泳がせるように火入れされた白身はふっくら、しっとり。魚といえば白ワインのイメージが強いですが、ロワールのすっきり渋系赤ワインでもいい感じです。

1930 年代を彷彿させる、エレガントでシックな内装。客席を飾る落ち着いた風情の紳士淑女。正統派ギャルソンたちの立ち居振る舞いはどこまでもなめらかで、その動きを「レストランのバレエ」と表現する人もいるほど。この場にふさわしい客でありたくて、思わず背筋が伸びてくる……。そんな私と目が合って、ギャルソンの一人がにっこり。心地よい緊張感と、それをほぐしてくれる親密なサービスもまた、このお店の大好きなポイントです。パリにしかない空間だよなぁ、なんて感じているうちに、舌平目が運ばれてきます。焦がさないよう細心の注意を払って仕上げられたバターソースの、ふくよかなうまみ。以前耳にした、「バターはフレンチのだし」という言葉を実感します。どこまでも上品でまろやか、ため息の出るような一品です。お店の雰囲気に、なんてぴったりなのかしら……。

IMG_1502

世界に目を向けたら、舌平目のもっとおいしい食べ方があるかもしれません。でもパリならここの、これがいい。少し緊張して食べるからこそ、楽しめる食事がある。そんなふうに感じられる大人に、自分もなったことが、ちょっと誇らしく思えるのです。

IMG_1383
↑ 宵闇のヴァヴァン交差点に浮かび上がる姿は、夢の中のように幻想的。

IMG_1525

↑ どこを見ても絵になってしまう店内。そこにギャルソンさんが通ったら、そりゃもう映画のワンシーンです

 

<おすすめの食べ方>
食事の前にはスモークサーモンなど、ちょっとした突き出しがサービスされます。これを前菜代わりにし、胃袋のスペースはデザートのミルフィーユ用にキープ! パイもクリームも軽やか、見た目をいい意味で裏切る絶品です。

<耳より情報>
パリ名物「Plateau de fruit de mer(海の幸のプレート)」 は、ここの看板メニューのひとつ。一般的には冬が旬ですが、ここでは通年で食べられます。

<予約のコツ>
夜、週末は要予約。独特のムードに全身全霊で浸るために、勇気を出して一人で行くのもまたよし、ですよ。

 

IMG_1487

本には載っていない
パリ在住の高崎さんからの最新情報~

お店の一本裏道にある姉妹店「Le Bistrot du Dôme(ビストロ・デュ・ドーム)」も、魚自慢の名店。もう少しカジュアルに食べたい方はこちらもおすすめ。
住所:1, rue Delambre75014 Paris
TEL: 01 43 35 32 00

 

text:高崎順子 photo:日置武晴

Le Dôme(ル・ドーム)

住所:108 boulevard du Montparnasse 75014
TEL:01 43 35 25 81
営業時間:12:00~15:00、19:00~23:30
定休日:無休

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ