【パリのごちそう】肉の楽園で、熟成赤身ステーキにむせび泣く

【特集】食いしん坊のためのパリ旅 vol.1 ~肉~
2016.08.01


夏休みシーズン、みなさん旅の予定は決まりましたか~? 今回おすすめしたいのは、ずばりパリ。観光や買い物も楽しい場所ですが、編集部のイチオシは1冊の本を小脇に抱えて歩く「食いしん坊の旅」。

こちらの『パリのごちそう』は、仕事でプライベートで、おいしいものを毎日食べまくっているパリ在住フードジャーナリスト・高崎順子さんが、「本当は教えたくないくらい!」というとっておきのお店だけを詰め込んだ1冊。これさえあれば、ひと味もふた味も違うパリの旅になること、間違いなし!

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そこで今日から1週間、『パリのごちそう』を大特集。とくにおすすめのお店を特別にご紹介しますね~。第1回のテーマはズバリ「肉」。昨年、東京・恵比寿にも支店ができて大注目の「ユーゴ・デノワイエ」のパリ本店です。

 

Hugo Desnoyer(ユーゴ・デノワイエ)

肉好きフランス人にとって、牛のステーキは一番ポピュラーなごちそうです。サーロイン、フィレ、ランプと部位のバリエーションが豊かで、どのレストランのメニューにもある一品。その人気は男女問わず、上品なおばあさんが自分の顔より大きなステーキを余裕で完食! なんて光景もフツーに見られます。

フランスのステーキは肉の繊維がしっかりしていて、ワシワシ噛み締めるタイプ。サシたっぷりの麗しき和牛ステーキとはまるで対極ですが、噛めば噛むほど味わいが滲み出てくる、赤身ならではの楽しみがあります。

その国民的ごちそうメニューで、別格の体験をさせてくれるのが、精肉職人ユーゴ・デノワイエさんの背肉ステーキ。シックな精肉店の一角にターブルドット(ゲストテーブル)があり、その日一番状態のいい肉を、一番おいしい食べ方で出してくれるのです。

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↑ Côte de boeuf normand(ノルマン種・牛の背肉ロースト)105 ユーロ(1200g、二人分。写真は一人分)
背肉はリブロースからサーロインに当たる、牛肉の“王様”部位。なるべく手を加えず、そのままの肉の風味を堪能します。ノルマン種はつるりとなめらか、品のいい味わい。思わず合掌したくなる美しさです。


カリカリに焼かれた表面と、ルビー色に艶めく断面。ふんわりやわらかな肉片を口に入れ、噛むこと数秒。「ウウッ……ウマ!」と思わず声が漏れる肉の味が迫ってきます。味付けは塩・こしょうのみ、だからこそ強調して感じられる、ふくよなかうまみ。追いかけるように、熟成した脂のいい香りがほわっと鼻にのぼってきて、口福の宇宙が爆発……!圧倒的なまでのサイズが、するする食べられちゃうではないの!

デノワイエさんは、テレビや雑誌にもひっぱりだこのスター職人。彼のお肉はミシュラン三つ星の超一流シェフをはじめ、美食家の紳士淑女も熱愛しています。人気の理由は、血統のよい品種、真面目な生産者、上等のエサに広々とした牧場(牛1頭につき1ヘクタール以上が条件!)に、運搬方法からと畜環境までの徹底管理……と、挙げればキリがないくらい。でも私が彼のお肉を食べるとき、いつも頭に浮かぶのは、そういう理由ではありません。清潔に整えられたカウンターで、雄牛のように誇り高く胸を張って、優雅に肉をさばきながら、デノワイエさんが言ったこと。
「肉を触るのが好きなんだ。肉屋はノーブルで美しい職業なんだよ」
万感のこもった、お肉へのリスペクトが溢れる言葉でした。

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↑ 定位置でもくもくとお肉をさばくデノワイエさん。「よっ、大将!」なんて声をかけたくなる風情です。


ああ、こうして書いているとまた、あの味の記憶が脳裏を占拠してきます。こうなったらもう、パリ16 区の彼のお店へ走らずにはいられません。大切に扱われてきたお肉たちが、ショーケースの中できらきら光っています。ターブルドットはいつでも満席、相席御免。見知らぬお隣さん同士が「そっちの肉はどう?」なんてホクホク顏で会話を交わし、隣の精肉コーナーでは、職人さんたちがきびきびと肉をさばいています。デノワイエさん本人がいるときならば、「おいしい? 気に入った?」と、満面の笑みでワインを注いでくれることも。「おいしいよ、気に入ったよ!」とフランス語で返せない場合は、こちらも笑顔で空のお皿を返せばOK。肉と肉好きに囲まれて肉を食べ、そのウマさに目頭を熱くする。ここはまさに、肉好きの楽園なのです。

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↑ 精肉コーナーには、ひっきりなしにお客さんがやってきます。16 区マダムやグルメ紳士が常連。

 

<おすすめの食べ方>
お肉のポーションが大きいので、前菜はスキップしても大丈夫。数人で行くなら、一人は牛肉、一人は豚肉と、肉の種類を変えてシェアするのも楽しいです。お供は、熟成肉独特の香りを包んでのどの奥まで運ぶような、濃いめの赤ワインを選びたいところ。

<耳より情報>
自分で焼いてもビックリするほどおいしいので、キッチン付きのアパートホテルに滞在するなら、精肉コーナーで好きな部位を買って帰るのもおすすめです。

<予約のコツ>
予約必須。なるべく早く入れ、その日に焦点を合わせてコンディションを調整しましょう。パワー溢れるお肉なので、こちらも体調万全で!

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本には載っていない
パリ在住の高崎さんからの最新情報~

ここ数年でパリ市内に支店を増やしているデノワイエさん。19区にはモダンなレストランをオープンし、こちらもなかなかに素敵です。
「TABLE D'HUGO DESNOYER À SECRÉTAN」
33, avenue Secretan 75019 Paris

 

text:高崎順子 photo:日置武晴

Hugo Desnoyer(ユーゴ・デノワイエ)

住所:28 rue du Docteur Blanche 75016
TEL:01 46 47 83 00
営業時間:8:30~19:30
ターブルドット11:00~15:00
定休日:日、月(8月は夏季休業)

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