涼をよびこむ夏の音、「篠崎風鈴本舗」へ

大人の江戸あるき
2018.07.19

魔除けの道具から夏の風物詩へ


軒先に吊るされた風鈴が、風にゆられてチリチリーンと音をたてる。うだるような暑さのなかで感じる、ひとときの涼。江戸時代半ばの浮世絵には、軒に吊るした風鈴が描かれていて、当時から夏の一風景だったことがわかります。

 

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風にゆれる風鈴は、情感豊かな夏の風物詩。

 

その昔、中国で吉凶を占う「占風鐸(せんふうたく)」が、仏教とともに日本に伝来。寺院のお堂の四隅に吊るした風鐸が、風鈴の起源とされています。風に吹かれてガラガラとなる音が魔除けとして考えられていたとか。

ガラスの風鈴が生まれたのは江戸が中期になってから。南蛮貿易でガラス製品が輸入されて、その製法が長崎から江戸へ。とはいえ、当時のガラス風鈴はとても高価で庶民の手に届くものでなく、夏の風物詩として楽しめるようになったのは明治半ばになってからでした。

 

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江戸時代の復刻型風鈴(参考商品)。『江戸な日用品』(平凡社)より転載。撮影/喜多剛士

 


江戸からの技を受け継ぐ「江戸風鈴」


東京の江戸川区に「江戸風鈴」という名称でガラス風鈴を手掛ける工房があります。江戸の旗本御家人が内職ではじめたガラス細工の製法を学んだ初代・篠原又平が、大正四(1915)年に創業した「篠原風鈴本舗」です。

 

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涼しげな切子仕様の江戸風鈴/5,500円©篠原風鈴本舗

 

現在は、篠原一家が中心となって風鈴づくりを続けています。空中で膨らます“宙吹き(ちゅうぶき)”で成形して、いい音が鳴るように鳴り口をギザギザに仕上げる。初代から受け継いだ江戸の技法でつくるからと、二代目が江戸風鈴と名付けました。

 

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溶けたガラスを巻き取り、息を吹いて円形に。

 

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熱を冷ましてから鳴り口をつくる。

 

納涼だけでなく縁起柄風鈴で運気をあげる


四代目を受け継ぐ篠原由香利さんは、工房で絵付けを担います。昔からの絵柄には、金運アップの金魚柄、運気をあげる(ツキが跳ねる)うさぎと月柄、勝負運上昇(勝ち虫)のトンボ柄、など縁起柄が多いそう。シャレをかけて、縁起をかつぐ、江戸らしさが漂います。

 

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涼しげで愛らしい縁起物の定番風鈴(小丸)/すべて1,700円

 

s-7魔除けとして人気があった赤の風鈴(小丸)/1,700円

 

由香利さんは受け継いだ伝統柄を大事にしながら、影絵風の東京名所や浮世絵を描くなど、自身のセンスやアイデアで風鈴に新しい価値を吹き込んでいます。和の暮らしや道具が注目される昨今、意外なブランドと風鈴のコラボ企画が増えているそうです。

 

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新作の蛍柄。蓄光塗料使用し蛍のようにフワッと光る/3,000円

 

占い道具から魔除け、そして夏の風物詩へ。南蛮渡来のガラスによって、より庶民に愛される道具になった風鈴。江戸にガラス風鈴が生まれて数百年、涼感を引き立てる音や縁起柄になごむひとときは、昔も今もきっと変わることはありません。

 

*価格はすべて税抜き、2018年7月現在の価格です。

text・photo:森 有貴子

 

篠原風鈴本舗(しのはらふうりんほんぽ)
東京都江戸川区南篠崎町4-22-5

☎03-3670-2512
営業時間:10時~17時
休日:日曜・祝日
http://www.edofurin.com/
*風鈴づくりのワークショップ開催(7~9月除く)

Profile

森有貴子

Yukiko Mori

編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。

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