秋の夜を楽しむ柔らかな灯り「都行燈」

大人の江戸あるき
2018.09.18

●江戸で人気をよんだ有明行灯


東京に暮らしていると、日々の暮らしのなかで、本当の意味での暗闇を意識することはありません。しかし江戸時代は、百万人都市の大江戸でも、とても暗い夜が訪れたものでした。

江戸市民の灯りといえば、植物油が燃料の提灯や行灯が主流。油の灯りは、10ワット電球よりも暗かったというから、かなり薄暗かったことがわかります。

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明け方に残る月を「有明月」とよぶことから一晩中ともす行灯の名に。正面に満月、左右に半月と三日月型の窓がある「有明行灯」。 『江戸な日用品』より転載/撮影・喜多剛士

和紙を通して柔らかな光を広げる行灯。最初は持ち歩く灯りでしたが、その役割を提灯にバトンタッチした後は、据え置き仕様となります。さまざまな行灯がつくられましたが、就寝時に覆いをかけて暗くできる有明行灯は、人気だったようです。

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起きている時間は、箱の上に置き室内の灯りとした「有明行灯」。/©都行燈

 

●伝統的な行灯から和モダンな灯りまで


東京の下町・日暮里に、明治創業の「都行燈」があります。その名の通り、今でも伝統的な行灯を製作しています。


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四代目の設計によるおしゃれな灯りのショールーム。/©都行燈

組子細工の職人だった初代、組子技法を照明に取り入れた二代目、照明メーカーと組んでOEM生産をはじめた三代目。そして今は四代目の木崎雅徳さんが、伝統的な行灯から和モダンな灯りまで、都行燈ブランドを手掛けています。

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意匠や仕様にモダンな和を落とし込んだ都行燈の照明。/©都行燈

一時期は、お蔵入りしていた有明行灯や江戸行灯。しかし都行燈の礎だと再び表舞台にひっぱりだした木崎さん。「すごく売れる商品ではないけど、毎年注文があるんです。作っていると、そこから新しいアイデアもわいてきます。それに今の時代、東京で行灯を作っているところはないと思うから都行燈がやらないとね」と、笑います。

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伝統的な行灯を作り続けた二代目による美しい組子細工

 

●長く使い続けられる、古びない灯り


木崎さんは高校卒業後、家業の都行燈で修業をはじめます。木を削るだけの日々からはじまり、設計通りに照明がつくれるようになるまで十数年。名だたるデザイナーの照明デザインに触れることも多く、それはオリジナルの灯りをつくる糧となりました。

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工場で新たな照明の試作をする木崎さん。/©都行燈


「長く使い続けられるものを」と、木と和紙で月をイメージした照明、シンプルななかに趣向を凝らした今様行灯を発表。見ていると、どこかに江戸の灯りを感じます。でも過去をなぞるだけではなく、そこには四代目が見て触れ感じた今の時代が落とし込まれています。

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木と和紙で作る月華(65,000円~)は、柔らかな光が日本的だと欧米のひとからも人気が高い/©都行燈

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縦格子がシンプルかつシャープな印象の行灯SEN(S/19,200円、L/21,800円)/©都行燈

ふわりと柔らかな光で闇をも美しくする都行燈の灯り。部屋にあると秋の夜長が楽しくなりそうです。


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テーブルライトとしても楽しめるころりとかわいい行灯SORA(28,000円)/©都行燈


*商品すべて税抜、2018年9月現在のものです。


text・photo:森 有貴子

都行燈

東京都荒川区東日暮里4-26-10
TEL 03‐3803‐1755
営業時間 9時~17時(ショールーム:予約制*平日のみ)
http://www.miyako-andon.com

Profile

森有貴子

Yukiko Mori

編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。

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