残りガラスを再利用して作られた「吹き屋」のグラス

今日のひとしな
2016.10.10

~sahanji+(サハンジプラス)より vol.10~


「吹き屋」のガラス作品は、京都にあるガラス作家、荒川尚也さんの主宰する「晴耕社ガラス工房」のスタッフさん7名ほどで製作されています。普段は荒川さんのアシスタントとしての業務をされ、月に数日間「吹き屋」の作品作りをされています。

吹きガラスの工程で、吹きサオには少量のガラスが残ります。それを、アシスタントさんたちが毎日少しずつためておき、「吹き屋」作品の材料にするのです。1日に数キロしか出ないその残りガラスも余すところなく作品にされているのは、限りある資源を無駄にしない、もの作りの基本姿勢を身につけてほしい、という師匠である荒川さんの思いから。

また、燃料の一部に使用済みのてんぷら油を使い始めたのは、地球を汚すと言われる化石燃料の使用をなるべく減らしていきたいという荒川さんの思いを受け継いでいるのです。

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金属でできた吹きサオの鉄分がガラスにまざるので、ほんのり緑色をしているのが特徴です。

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 “コップ”という用途だけでなく、いろいろな使い方を楽しんで頂けたらと思います。

てんぷら油を燃料にすることは、作品作りとしてはなかなか難しく技術がいるのだと言います。たとえば灯油はサラサラとした油なので燃やすのが簡単ですが、リサイクルされたてんぷら油はネバネバしていたりカスが残っていたりして、なかなか一定に燃やし続けるのがむずかしく、リサイクル燃料を安定的に手に入れるのも容易ではない、そんな試行錯誤の中での作業。それでも今後は可能な限り100パーセントを目指して、燃料を自然エネルギーに変えていきたいと考えているそうです。

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「吹き屋」のガラスのラインナップはグラスが5つ、他にカップと小鉢と平皿3サイズ。作るものを限定しているのは、同じものを作り続けることで見えてくる、手仕事の原点、ものづくりの姿勢を学んで欲しい、という師匠の思いがあってのこと。ひとつのものを一万個作ることで無駄のない動きが身につき、やっと自分のものになっていく、と言われているそうです。

お話を伺ったスタッフのひとり奥原さんは、ここは技術だけでなく、ガラス屋とは何かということをいろいろな角度から学べる、とてもありがたい工房なのだと話して下さいました。「吹き屋」の、工業製品にはないどこかあたたかな雰囲気のある、使いやすい“普通のコップ”は、こうしたスタッフさんの思いや確かな技術の上に出来上がっているのですね。「ひとつひとつ、その時の自分の100%で作っています。」という奥原さんの言葉が印象的でした。

絶妙な厚みは口当たりが良く、またスタッキングできたり、買い足しやすい価格なのも人気の理由。リピーターさんが多いのも納得です。レストランやお料理教室をされている方など、プロの方からも愛用頂いています。

10月15日と16日、京都で開催される「岡崎公園アートフェスティバル」にて、「吹き屋」のガラスが出展されます。お近くの方はぜひ。

「吹き屋」ガラス ¥1,100~1,400

 

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sahanji+(サハンジプラス)

2006年、お祖母様の暮らしていた一軒家を改装してオープン。器、道具、服など衣食住にまつわるものや、暮らしになじむオブジェなどが並ぶ。連載「今日のひとしな」の執筆は、店主の河村奈穂さん。

静岡県静岡市清水区堂林2-9-5
TEL:054-353-1155
営業時間:13:00~17:00
不定休
http://www4.tokai.or.jp/sahanji-plus/

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