手に伝わる温もり「高橋工芸」Kamiシリーズの木のカップ

今日のひとしな
2018.02.22

~ 「組む東京」 vol.22 ~


日本では、食事の際、手よりも小さい食器は、持って食べるのが作法です。この習慣は、箸を使う文化圏では共通のものかと思いきや、お隣の韓国では、金属の器が多いため、食器は持たないで食べるのが作法。中国でもご飯茶碗以外は、基本、食器をテーブルに置いたまま食事をするようです。

調べてみると、日本で食器を手で持つ習慣が始まったのは、平安時代に「国風文化」が生まれた頃という説がありました。思えば、古い絵巻物でも椀を持って食べる図を見たことがありますから、随分長い間、日本人は食器を持って食事をしてきたのだなと思います。

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<「高橋工芸」Kami マグカップ(S)W 7.5×D 9.8×H 6.9cm 3,300円(税抜)>


前置きが長くなりましたが、私は自分が食事をする時に、食器を持つことを楽しいと感じています。特に木の器を持つときの手の感触は、温かく優しくて、とてもほっとするのです。

例えば、お椀に入れた熱々の味噌汁を手に持つとき。木の椀を通して伝わってくる感触は、じんわりと温かです。風邪をひいたときに温かい葛湯を作ったら、やはり陶磁器の碗より、木の椀に入れて手に温かさを感じながら食べるのが落ち着きます。他の素材ではなかなかそうはいかないもので。余談ですが、プラスチックのお椀に熱々の汁をいれたら、熱くてとても普通には持てません。

お椀以外のもので、手で持つ木の器には何があるでしょう? 時折、木材の産地などで見かけるのはカップですが、こちらもあまり一般的ではなく、私が唯一気に入って使っているものは、北欧の伝統工芸品・ククサ(白樺のこぶをくりぬいて作られたマグカップ)ぐらいです。

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<「高橋工芸」Kami シリーズの一部 一番左が、今回離乳食におすすめしているカップ>


そんな中、今日ご紹介する「高橋工芸」の「Kami」シリーズのカップは、木のカップの楽しさをものすごく広げてくれた、秀逸なプロダクトだと感じています。

素材は、清々しく白い木肌の栓の木。「高橋工芸」がある北海道で多く自生する木です。木工轆轤(ろくろ)で極限まで薄く仕上げたカップの厚みは2mm程度。その薄さから「Kami」と名付けられています。

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<「高橋工芸」Kami プレート 直径18cm 2,500円(税抜)、直径24cm 4,000円(税抜)、直径30cm 6,500円(税抜)>

このシリーズは、潔く削ぎ落とされたシンプルな形だからこそ、隅々にまで配慮されたデザインの力を感じます。さらにそれを存在感のある形に仕上げることができるのは、研ぎ澄まされた手の感覚による技術と、高橋さんの木に対する深い愛情があるからこそと思うのです。

薄く仕上げているので、口当たりがよく、保温性が良いので、様々な飲み物を入れてお楽しみいただけます。サイズの種類も多く、異なるサイズを入れ子にしてコンパクトにしまえば、持ち運びにも便利。軽く、壊れることがないので、キャンプなどでの使用もおすすめです。

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<「高橋工芸」Kami グラス フリー(S)W7.4×D 7.4×H5.5cm 2,400円(税抜)、マグカップ(S)3,300円(税抜)、プレート 直径18cm 2,500円(税抜)>

これは「組む」のお客様に気づかされたことのなのですが、高さに対して直径が大きめのバランスになっている「Kami グラス フリー」は、形に安定感があり、出産のお祝いに、離乳食の器としての贈り物にされる方が多いのです。赤ちゃんだからこそ、自然素材の優しい肌合いのものを使わせてあげたいと思われるのでしょう。軽くて壊れにくく、小さなお子さんの食器としてもぴったりです。離乳食の時期を過ぎても、大人も子供も飲み物のカップとしても長く使っていただくことができます。

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店頭でよく質問されるのは、木のカップに、普通に飲み物を入れても大丈夫ですか? ということ。でも「お椀と似たようなものだと想像してください」とお伝えすると、皆さんすぐにイメージがわくようで、一様に納得されます。表面には、食器用のウレタン塗装をしてありますから、コーヒーや紅茶、ワインやビールなどにも普通にお使いいただけます。もちろん全く経年変化がないというわけではありませんが、表面の表情は、使いながら育てていくくらいの気持ちでお使いいただくのが良いと思います。水につけっぱなし、飲み物を入れっぱなし、などはできるだけ避け、あとは、普通の食器洗剤とスポンジで、ほかの食器と同じように洗っていただければ問題ありません。

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作り手のご紹介が最後になってしまいましたが、このシリーズを制作する「高橋工芸」は、北海道旭川で1965年に創業しました。10年あまり前に、二代目の高橋秀寿さんは、デザイナーの大治将典さんや小野里奈さんと出会い、製品作りの新しい可能性も探り始めました。高橋さんが「Kami Glass」を発表したのは2007年のことですが、その後、大治さんとの共同開発で「Kami」 シリーズをさらに展開させ、人気を博するようになりました。

最後に、高橋さんの思いがこめられた言葉を記しておきたいと思います。「北海道の山々から木を預かり器をつくる。それは山と人とを繫ぐ仕事。木を山から預かり人と繋げる。そして、山を手入れし木を育てる。適正量の木を伐採することで山が呼吸し、若い木を育てます」

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<2015年、50周年の際にいただいたAnniversary Card。高橋工芸の皆さんの手>


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組む東京

国内外のものづくり、手工業の交流拠点となる場として、ショップ、ギャラリー、コミュニティ・スペースの機能をもつお店。「今日のひとしな」の執筆は、代表・キュレーターの小沼訓子さん。

 

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