平井かずみさん【後編】花を“生ける”ということ

仕事の壁、暮らしの壁
2018.04.04


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“手放す”ことは、花に関しても同じです。定期的に開いている「花の会」では、こういう質問も多いそうです。「これ、ドライフラワーになりますか?」
そんなとき、平井さんはこう答えます。「花は終わりがあるから、いいんじゃない」。

花は生きもの。特に切り花は、どんなに丁寧に世話をしても、いつかは枯れていきます。花に惹かれるのは、その散り際にも美しさを感じられるから。もちろん、美しさを長く愛でることのできるドライフラワーにもよさがありますが、生花として美しさを存分に味わったあとにドライにすることは、難しいのです。ドライにするのなら、咲き誇っている美しさを犠牲にする覚悟で、そのための作業が必要なのだと言います。

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「花が枯れたときに、『かわいそう』と言う人もいるけれど、咲いているときにしっかりと見て、思い切り愛してあげていれば、『ありがとう』と思えます。執着せずに、手放すことができるんです。手放すときに後悔しないように、一瞬の美しさを愛でることを、大切にしたい」

花を愛するあまり、平井さんにも迷った時期がありました。フラワーアレンジメントは、土に根を張る花を切り、それを使います。そのまま大地にあれば、種を落として再生できるものを、限りあるものにしてしまうという迷いを捨て切ることが、なかなかできませんでした。

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いままで、平井さんは著書でも雑誌の連載でも、花を「活ける」、または「いける」と表記してきました。けれど、これからは、「生ける」を使おうと考えています。

「染織家の志村ふくみさんの言葉に触れたのがきっかけでした。志村さんは、『植物の命をいただいて色にする。その植物の命は絶えるわけではなく、染めることでもう一度、生かすことができる』という意味のことをおっしゃったんです。私がしたいことも同じだ、と腑に落ちました。花の命をいただき、それを生けることで、もう一度、命を吹き込む。その美しさを見て、私たちは生かされる。自分の手でもう一度、かつてとはまた違う美しさに、花を“生かしたい”と。いままではおそれ多くて使えなかった“生”という字を、これからは覚悟を決めて、使っていこうと思います」

 

<平井かずみさんのこれまでの歩み>
21歳  映画配給・レコード会社に就職
25歳  結婚し、専業主婦に。園芸にはまる
26歳  造園業でアルバイト、インテリアショップの立ち上げに携わる
27歳  夫の転勤で大阪へ。園芸にさらにはまる
29歳  東京へ戻る
31歳  フラワースタイリストのアシスタントに
33歳  独立。「花の会」を始める
34歳  家に飾った花の雑誌取材を、はじめて受ける
35歳  夫が退職。派遣社員として働きながら、雑誌に花の連載を持つ
37歳  夫と「café イカニカ」をオープン
38歳  初の著書『いつも、花のこと。』(マーブルトロン)を出版

 

text:福山雅美 photo:砂原文

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→より詳しく読みたい方は、ナチュリラ別冊『幸せに暮らすくふう』をご覧くださいね

Profile

平井かずみ

kazumi hirai

幼少のころから、植物に興味を持つ。会社員、インテリアショップスタッフを経て、フラワースタイリスト谷匡子氏に師事。独立後、夫と営む「café イカニカ」で定期的に「花の会」を開催するほか、雑誌やイベントなどで“花のある暮らし”を提案。近著は『あなたの暮らしに似合う花』(地球丸)。
http://ikanika.com/
instagram「@hiraikazumi

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