後藤由紀子さん【前編】自分サイズを知り、背伸びをしない

仕事の壁、暮らしの壁
2018.05.17

この連載では、「ナチュリラ」で人気のおしゃれさんたちに、こんな質問をしてみました。「いままで仕事をし、暮らしてきた中で、ぶつかった壁、悩みは何ですか? どのように乗り越えましたか?」
第5回に登場していただくのは、静岡・沼津で雑貨店「hal」を営む後藤由紀子さんです。いつもおだやかで、やさしい笑顔が印象的ですが、じつは「私はコンプレックスだらけ」と言います。でも後藤さんは、それらを頑張って乗り越えるのではなく、きちんと受け止め、自分なりの方法で無理なくゆるりと解決する方法を見つけていました。

text:福山雅美 photo:砂原文

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3人姉妹の真ん中。アクティブな姉と妹に挟まれて、「人生は思うようにいかないことが多いものだなあ」と感じながら大きくなりました。「本当に普通の子でした。優等生でもなく、不良でもない。かといって、おとなしすぎるわけでもない、その他大勢の子」

それがいまは、生活道具の店を切り盛りし、子供二人を育て上げ、月に何日かは静岡から東京にやって来て、仕事をこなす日々。一見、なんでもこなせるすごい人のようですが、「いえいえ、私なんてコンプレックスだらけ。子供のときからずっと引っ込み思案だし、背が低いのも長年の悩みです」

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けれど後藤さんは、それらを克服するなんて、大それたことは考えません。弱点をきちんと認識して、一つ一つに向き合い、無理のない解決法で対処する。そうすることで、自分が本当にできること、大切にしたいことが明確になってくるのだと言います。

たとえば、「体が弱い」というコンプレックス。自称“ヘタレ”の後藤さんは、「体を鍛えて強くする」という王道の解決法は選ばず、まったく別の角度から、こんな対策をとったのが、“らしい”ところ。

「いつ何が起こるかわからない。実際、子供が小さいときに大病をしたこともありますし……。それ以来、私のモットーは『いまの気持ちは、いま伝える』。いつもどおりの明日が来るとは、限りませんから。誰かにやさしくされてうれしかったら、すぐに感謝の気持ちを伝える。店で食べた料理がおいしかったら、その感動を店の方に伝える。子供たちにも、いまのうちに言っておかなきゃと思うことがたくさんあるから勉強のこと以外は、あれこれうるさく言ってきたほうだと思います」

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「『ありがとう』と『ごめんなさい』は、できるだけ早いほうがいいんだよ」「ちゃんと相手のことを考えて、行動しなさいね」……子育て中、ずっと言い続けたことです。たとえば、息子がアルバイト先を変えるときは、「辞めるときの挨拶は、はじめましての挨拶より、何倍も丁寧に」と伝えました。

また、ついこの間はテレビを観ている娘にお説教。「『リモコンを取って』と言ったら、適当なところにポンと置かれて。ちゃんと相手の立場になって考えて、手の届きやすいところに置けば、お互い気持ちがいいのに。『相手のことを考えたら、あと10センチ近いところに置くよね。思いやりが足りない!』と」

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これまでの人生、人とのつながりによって助けられたと思うことばかりです。若いころ、仕事で失敗して落ち込んだときは、友達が親身になって相談にのってくれたし、子育て中は、近くのママ友に助けられました。もちろん自分も、困った人がいたら、一目散に駆けつけて……。そんな経験があるからこそ、子供たちには、いつでも自分より相手のことを考えてあげられる人、壁にぶつかった人に手を差し伸べられる人であってほしいと願っています。


→後編へ続きます

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→より詳しく読みたい方は、ナチュリラ別冊『幸せに暮らすくふう』をご覧くださいね

Profile

後藤由紀子

Yukiko Goto

静岡・沼津で器と雑貨の店「hal」を営む。暮らしの中で自分が心から「いい」と思ったもののみを店に並べる。二人の子供は、大学生と短大生となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。『後藤さん、今日はどちらへ? 地元な暮らし 』(大和出版)など著書多数。http://hal2003.net/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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