高橋みどりさん vol.1「毎日おいしく食べられるって何より幸せなこと」

大人暮らし これからの食卓
2019.03.18

子どもが独立して、夫婦ふたりの生活に。仕事や暮らしのスタイルを今の年齢に合った形に変えようと思いつく……そんな人生の節目は、ふとした瞬間に訪れます。これからの日々は「のんびり自分流に」と、暮らしや考え方を切り替える方も多いようです。特に個性が際立つのが、日々の食卓。体調や食の好みが変わってくる年代に差しかかることもあり、心も体も健やかに過ごせる“今の自分にちょうどいい食事”が、それぞれ定まってくるのかもしれません。
そこで「暮らしとおしゃれの編集室」では、食まわりの仕事をする素敵な先輩方に、年を重ねた今、日々の食卓にどんな変化があったかをお聞きしてみました。連載第2回は、スタイリストの高橋みどりさんが登場。新刊『これからの暮らしと食卓』でも詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧くださいね。

 

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「私の場合、1日の時間軸は朝ごはん、昼ごはん、晩ごはんで区切りがついているように思います。といっても、日々食べているのは特別なものじゃなくて、朝は炊き立てのごはんと海苔、納豆、それに味噌汁。それくらいのものでいいし、それが幸せ。普通のごはんをおいしく食べられるって、何より一番大事なことでしょう?」

朝ごはんはしっかり、きっちり。昼はさくっと軽め、というのがここ数年の基本。その代わり、夜は夫と、あるいは友人たちも交えてワインを開けて、おいしく、楽しく。家に誰かが来るからといって、特別な料理は作りません。いつも作っているものを多めに作るだけ。初めてのものを作って、ちゃんとおいしく仕上がるかドキドキするような緊張感がないぶん、人を呼ぶことが特別ではなくなり、ラクになったそう。

広告から出版に至るまで、長年にわたり、食まわりを中心にスタイリストとして仕事をしてきた高橋みどりさん。スタイリングを手がけた料理本は100冊を超えるといいます。またそれとは別に、自身の暮らしや食にまつわることを綴った著書も多数。高橋さんが食べることを大切にしていること、そして食いしん坊であることがよく伝わってくるものばかりです。

たとえば撮影のスタイリングをしている時、料理を見たり、試食をしたりしながらも「あぁ、これはあのワインに合いそう」と、頭の中では常においしいものへと意識が動いているといいます。晩ごはんの食卓が頭に浮かんでいる時もあるくらい。興味のベクトルは、常に食へと向いているのです。

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そんな高橋さんが週末、夫の実家がある栃木・黒磯に、もうひとつの家を持つようになってそろそろ10年。ある日帰省した時、目に入ってきた駅前の古い建物が、「何やら気持ちのいい空間になりそうだ」と思ったところから、ゆるやかに二拠点生活が始まりました。元はタクシーの待合所や倉庫だったその建物に、友人や夫とともに少しずつ手を加えていき、初めは週末に過ごす住まいをつくっていたところ、「倉庫部分は、みどりさんのお店にしてみたら?」という夫の言葉から、思いもよらない方向へと動き出し、週末の黒磯通いが、自分の店「tam iserkuroiso」を開くことへと、ゆっくりとつながっていったのです。

「好きなことは思っているだけでは次が生まれない。動かないとね」と、10年を振り返り、今こうして暮らしていることをしみじみよかったと話します。

「スタイリングの仕事をしたり著書を出したりと、自分が好きだと思うことやものを発信することは、自分の次の暮らしにつながるアクションだと考えています。それがなかったら、黒磯で暮らすという選択肢がこんなに軽快にポンと出てくることはなかった。〝いいな〞という気持ちを心に留めているだけでは、何も始まらないし、何も広がらないんですよね」

東京都内のマンションから毎週通い、家と店づくりを続けた10年。結婚して、ふたりで暮らすようになり、こんな面白い50代があるのだと思った10年でもありました。そうした中で、自分が一番重きをおいているのが食事の時間だということもわかってきました。なぜなら、東京で撮影の仕事をしていても、黒磯で店の準備をしていても、考えているのはいつも次の食事のこと。今日はこう料理しよう、それなら器はあれで、お酒はこれにしようと、頭の中はだいたいそんなふう。ただし、食事を終えたらすぐに切り替えるのもポイント。さて片づけ、仕事と、次の動きへ自然と移行するのです。自分の生活の時間軸が食事で区切られていると気づいたのは、そんなことから。

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「私はきちんと気持ちよく生活することが好きなんだなと、黒磯で暮らしてみて、よくわかったんです。近所の人からたくさん野菜をもらったら、それを生かして料理を作って、ごはんを食べる。今日のお酒は何にする? 明日の仕事は? とか、たわいもない話をしたりしながら器を並べて、支度をする。私が思う幸せってそういうこと。ささやかだけれど、毎日、ちゃんと生活して、そこから次へとつながっていく感じがいいなと思っているんです」

 

「“これから”の暮らしと食卓」より
photo:齋藤圭吾 text:赤澤かおり


→vol.2につづきます

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Profile

高橋みどり

スタイリスト。料理本を中心に、食について発信、活動し続けている。東京と栃木・黒磯を行ったり来たりしながら、仕事に、食べることにと忙しい日々を送る。著書に『わたしの器 あなたの器』(KADOKAWA)などがある。

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