靴ひもの楽しさや奥深さは「ヴィンセント シューレース」が教えてくれる!

名作と呼ばれる映画には、必ずといっていいほど実力派の脇役が存在するもの。それは、おしゃれも一緒です。一見何げないのに、実は丹念にこだわって作られたアイテムたちは、主役を引き立てるための十分な腕前を持ち合わせています。この連載では、そんな“おしゃれの名脇役”にスポットライトを当て、王道のものから隠れた逸品まで、幅広くリポートしていきます。 photo : 花田 梢 text : 三宅桃子服のようなメインどころではなく、小物で気分を変えるのもおしゃれの楽しみのひとつ。バッグや靴、帽子などいろいろありますが、今回ご紹介したいのは……変えたかどうかは、もしかしたら誰も気づかないかもしれない、でも、気づいてもらえたら話が盛り上がりそうだし、ここにこだわるだけで今までにないワクワクが感じられるかも……そう、靴ひもです!「ヴィンセント シューレース」は、2014年にスタートした上野孝史さんと上野麻里さんご夫婦が手掛ける靴ひも専門ブランド。「ふたりとも好きなヴィンテージショップへ行ったとき、1950年代にアメリカで作られた靴ひもと出合ったのですが、短くてつけられなかったんですよ。素敵なのにもったいないなぁ、じゃあ、作ってみようか? というのがきっかけでした」と孝史さん。麻里さんもうなずきながら話に続きます。「調べてみると、昔は30~40くらいのメーカーが靴ひもを作っていたようなのですが、今は数えるほどしかなくて。これはやってみる価値があるなと思って、ヴィンテージの靴ひもを集めて研究し始めました」専用のディスプレイケースなんて初めて見ました! もしかしたら、昔は靴ひもを変えて楽しむ人が今より多かったのかもしれませんね。靴ひもを切って断面を見たり、生産できる場所をあちこち探したりして出来上がった定番がこちら。「ヴィンセント シューレース」各¥1,500※商品の価格は2016年11月現在のもので、表示は税抜きです。グレーの「ニューバランス」に合わせたくて作った“H.クーパー”をはじめ、80 年代に「プロケッズ」から出ていたメイド・イン・U.S.A.のシューレースがイメージソースになった“ピーウィー”、アメカジ好きのなかでは有名なヘリンボーン織りの“トラヴィス”など、すべてメイド・イン・ジャパンにこだわって作っているのだとか。「真新しいものを追求するだけではなく、昔あったいいものを再構築して、日本製で新しくよみがえらせる、というのがひとつのコンセプト。日本にはたくさんの職人さんがいて、『ヘリンボーンは京都で、レーヨン素材は太平洋側だと湿度が高くて作れないから別のところで……』と、作りたいものによって工場さんも変えているんですよ」と孝史さん。このひょろっと細長い存在に、ものすごい愛情と情熱を感じます。こちらは、ひとアレンジ加えたものたち。(上から時計まわりに)「ヴィンセント シューレース」 ラグジュアリーシルク¥5,000、トラヴィス インディゴ各¥2,000、ウイリアム各¥2,000京都の着物の帯締め職人さんが作成しているシルク素材、奄美大島の金井工芸による藍染、少しツルッとした質感が独特なレーヨン素材など、どれもこんな靴ひも見たことない! と感激するものばかり。新作は、抗菌作用があり、丈夫で洗うほど味が出てくるリネン混素材。「ヴィンセント シューレース」カール各¥1,800、アーネスト¥1,800スピンオフとして作ったのが、ワークブーツについている泥よけをスニーカー用にアレンジした“コックスコーム”。つけ替えてみると、付属の靴ひもとは違ったオリジナリティが出て、存在感も気分も上がります!取材班もさっそく、王道スニーカーのひもをリネン素材の“カール”に変えてみました。すると、誰もが持っているスニーカーが、自分だけの一足になったような気分に! 白から白へのチェンジなので自己満足になってしまうかもしれませんが、ひとり口角を上げてにんまりしてしまいました。お気づきかとは思いますが、パッケージもおしゃれなのでプレゼントにも最適。マンネリ化したスニーカーが違う表情を見せてくれる、これぞ“おしゃれの名脇役”です。