「今日はもうや~めた」 スタイリスト・伊藤まさこさん Vol.1

「もう、無理〜! できないもん〜」。意外やこんな一言が伊藤さんの口癖です。夕方5時になったら「もう、これ以上頭を使うのは無理〜」と、どんなに仕事が立て込んでいても、好きなワインを抜いて夕食タイム。「だって、無理して原稿を書いたって、いい文章にならないでしょう?」と涼しい顔です。その見事なスイッチオフぶりには驚くばかり。「やらない」「できない」と言い切るのはなかなか勇気がいるものです。でも、それをちゃんと自分で決めて口にしないと「やりたいこと」に100%の力で向き合えなくなってしまうのだとか。雑誌の連載、ご自身の著書の撮影、執筆、スタイリング、そして、デザイナーや企業とのコラボレーションでのものづくりと、目がまわるほど忙しい日々を送る伊藤さん。「本当に時間がなくて……。その中でちゃんと自分らしくいられるためには、できないことを、ちゃんと『できない』と言うことが大事だと学んだんです」と語ります。仕事の依頼がきても、自分の暮らしのペースを守れないなら、「ごめんなさい」と断ります。 片付ける暇がないときは、「見て見ぬふり」をすることだってあるし、こまごま整理ができないから、書類はごっそりファイルに入れるだけ。それでも、仕事がひと段落すれば、放りっぱなしだったものを片付けるし、仕事の案件ごとにファイルを分けているから、「あれどこいった?」なんてことはありません。夜は仕事を一切しない代わりに、5時半に起きて頭がクリアな午前中に、サクサク原稿を書いたり、メールの返信を。つまり「やらない」の裏型にある「やる」と決めた時間は、とことん集中するという訳です。Vol.2に続く『暮らしのおへそ』Vol.20より text:一田憲子 photo:在本彌生 伊藤まさこさんの「コスメのはなし【前編】」はこちらから伊藤まさこさんの「コスメのはなし【後編】」はこちらから