【菓子研究家・加藤里名のフランス菓子の旅②】新年のお菓子「ガレット・デ・ロワ」

2021.01.06

こんにちは。菓子研究家の加藤里名です。

フランスでは年明けに「王様のガレット」という意味を持つ新年のお菓子、ガレット・デ・ロワ(Galette des rois)を食べる風習があります。ガレット・デ・ロワとは、パイ生地にアーモンドクリームをサンドして焼き上げたお菓子のこと。ちなみにこの作り方はパリ地方のもので、南フランスではブリオッシュ生地だったりと、地方によっても変わります。

1月6日に食べることが多いのですが、この日はキリスト教の行事、公現祭(Epiphanie)です。「公現」とは救世主が公に現れたという意味で、クリスマスの12月25日にキリストが誕生したことを知った「東方の三博士」が、ベツレヘムへ来訪した日を祝福するお祭りなのです。

パン屋さんやお菓子屋さんで作られていて(フランスで働いていたお店のパティシエ曰く、ガレット・デ・ロワはパン屋さんのもののほうがおいしいとのこと)、クリスマスごろのパティスリーは、クリスマスケーキ作りと並行してガレット・デ・ロワの仕込みもしなくてはならないので大忙しです。毎年その年のNo.1ガレット・デ・ロワが発表されるなど、1月のパリにはガレット・デ・ロワがあふれています。

年始のパリ・サンジェルマンデプレの教会前では複数のパティシエがガレットを販売していました。ちなみにフランスではクリスマスは家族で過ごし、年越しはカップルで過ごすのが定番。日本のようにお正月に長い休みを取ることはなく、1日のみ休んで2日からお店も学校も通常どおりです

そんなガレット・デ・ロワですが、人気の理由は、運試しの要素があるからかもしれません。

ガレット・デ・ロワのアーモンドクリームの中には、「フェーヴ」と呼ばれる陶製の人形が1つ隠されています。家族が集まると、その場にいるいちばん小さい子どもがテーブルの下に隠れ、カットしたガレットを家族に渡していきます。みなで一斉に食べ始めて、フェーブが当たった人は王冠を被り、王様や王女様としてみんなから祝福を受け、その幸運が1年間続くと言われています。私も子供のころ、フェーブを当てたくて、当たるまで食べ続けた記憶があります。

この風習の起源は、なんと古代ローマ時代にまで遡ります。フェーブはフランス語で「そら豆」という意味。諸説ありますが、ローマ時代にはそら豆が命のシンボルとして扱われていたそうで、収穫祭でそら豆を引いた人が王様になる習わしがあり、その風習がキリスト教に引き継がれて、ガレット・デ・ロワにそら豆を入れるようになったようです。

パリで集めたフェーブたち。食べものや生きものを象ったものなど、かなりのバリエーションがあって楽しいです

今から200年ほど前にはフェーブは陶器に変わって、さまざまな形のものが登場しました。フェーヴを集めるコレクターもいるほどだとか。

お店によって異なるフェーブ

そしてお店によって異なる模様(レイエ)も楽しみのひとつです。本来は自然崇拝の意味合いがあり、ひまわりの模様は「太陽と生命力」、葉の形は「勝利と栄光」、四葉のクローバーは「幸福」、太陽は「温かい季節」を意味しています。

パティシエの友人たちと持ち寄って食べ比べをした際の写真。これだけ見てもさまざまな模様が

今はお店オリジナルのモチーフを描いたり、そもそも円形でなくマトリョーシカ形のものなどもあって、SNSでシェフたちがアップしている個性豊かなガレット・デ・ロワの写真を眺めるのも面白いです。

日本でも見かけることが多くなったガレット・デ・ロワですが、毎年1月には、フランス大使館で、年に1度行われるコンクールの優勝者が、直径1mのガレット・デ・ロワを大使に献上する会が催されます。私も以前に現物を見たことがありますが、1mのガレットは圧巻! 

1mのガレットデロワ。ほとんどテーブル大です

その日はさまざまなお店のガレット・デ・ロワがずらりと並びます。

なんと試食もできます

最近ではアーモンドククリームのものだけでなく、マロンやチョコレートのフレーバーなど、お店のオリジナリティあふれるガレット・デ・ロワが増えてきました。1月いっぱいは売られていますから、家族でガレットを食べて、1年の幸運を願うのも楽しいかもしれません。

 

text & photo 加藤里名

撮影 公文美和

菓子研究家。大学卒業後、会社員として働きながらイル・プルー・シュル・ラ・セーヌでフランス菓子を学び、退職後に渡仏。パリのLE CORDON BLEUの菓子上級コースを修め、その後は人気パティスリー、LAURENT DUCHÊNEにスタージュとして勤務。帰国後は2015年より東京・神楽坂にて洋菓子教室SUCRERIESを主宰。伝統的なフランス菓子のみならず、最新のトレンドを踏まえた洋菓子を、教室、SNS、書籍などで広く発信している。著書に『ナンバーケーキ』(主婦と生活社)、『はじめてのクッキー缶』(家の光協会)、『レモンのお菓子づくり』(誠文堂新光社)など。現在、当社より春に刊行予定の書籍を撮影中。

Les Sucreries de Rina Kato

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