スプーン作家・宮薗なつみさん(前編)~スプーンが、いろんな場所へ連れていってくれる

”つくる人”を訪ねて
2016.09.14

雑貨からおいしいものまで、衣食住にまつわるさまざまな“つくる人”を訪ねるマンスリー連載、今回は手掛けるものは「スプーンだけ」という木工作家・宮薗なつみさんのアトリエにお邪魔しました。

 

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Photo:有賀 傑 text:田中のり子

 

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雑貨好き、テーブルウエア好きの人には、「スプーン好き」という人も多いようです。食べ物をすくう円形の部分に持ち手がついた、ごくごくシンプルな造形ですが、実にさまざまなかたちが存在し、その愛らしい姿に目を細める人が少なくありません。そんなスプーンの魅力に取りつかれ、木製スプーンのみをつくり続けているのが、「miyazono spoon」の宮薗なつみさんです。

 

 

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こちらが「miyazono spoon」の定番ラインナップ。右からディナースプーン、スープスプーン、スイーツスプーン、ベビースプーン、アイスクリームスプーン。これら定番以外にも、茶さじやシュガースプーン、コーヒースプーン、ジャムスプーンなど、さまざまな用途に応じたスプーンをつくってきました。

 

「少し前は『これ1本あれば、どんな人にも、どんな食べ物にも使える』究極のスプーンをつくりたい……と思ったこともありました。けれどある展示会で『すごく使いやすくて持ちやすいスプーンができた!』と出品したものを、とあるお客さまからは『私には使いにくい』と言われたことがあったんです。よく見るとその方と私では、スプーンの持ち方が違っていたんです」

 

その経験をきっかけに、「究極の1本なんて存在しない」と思うようになり、代わりに「ひとりひとりに合ったスプーンをつくれる作家になりたい」という考えを持つようになりました。その後数々のオーダースプーン(現在は休止中)の製作を通じ、その人ごとの好みのかたちを知るにつれ、ますます「スプーン」というアイテムの奥深さにのめり込むようになったといいます。

 

もちろん、自らの生活でも積極的に作品を活用しているという宮薗さん。

 

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だし汁にじゃがいもを加え、コトコトと煮たあとに、きゅうり・豆乳・味噌を投入してミキサーにかけた冷製スープ。器は知り合いの陶芸家・都築明さん、スプーンレストは「工房 宙(SORA)」のもの。

 

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冷凍したバナナ・キウイ・グレープフルーツに、甘酒とヨーグルトを加えてミキサーにかけたデザート。バナナは冷凍するとポリフェノールが2倍になるらしく、甘酒も加えればよりヘルシーに。グラスは蚤の市で見つけたビンテージ、自作の丸い小さな拭き漆のお盆を組み合わせました。

 

「私の場合、スプーンがおいしいものを連れてきてくれるんです」と笑う宮薗さん。スプーンの使い心地を知ってもらうには、実際に使ってもらうのが何よりの方法です。この夏「miyazono spoon」の個展会場となったカフェでは、特別メニューのかき氷がスプーンと一緒にサーブされました。スプーンづくりのワークショップでは、最後においしいデザートを参加者と一緒に食べたり。スプーンというアイテムは「食べるシチュエーション」を想像しやすいせいか、宮薗さんの創作には、常に「おいしいもの」がついてまわるようです。

 

他のテーブルウエアと組み合わせることでお互いを引き立て合い、使い心地も抜群。作家活動を始めたのは5年前、独立したのはおよそ3年前ですが、宮薗さんのスプーンが人気になるのに、そう時間はかかりませんでした。

 

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「miyazono spoon」で特に特徴的なのが、ナチュラルな木肌と拭き漆を組み合わせた、ツートーンのスプーンです。

 

「私はいろんな木材を使いたいタイプなのですが、『漆を塗ってしまうと、何の木か分からない』とお客さまから言われて。けれど口に当たる部分は、漆の繊細な感触を残したくて、それならばと、このツートーンのスプーンを思いついたんです」

 

口にする部分は拭き漆をかけ、その他の部分はオイル仕上げ。マスキングの貼り方や漆の塗り具合も試作と改良を重ね、今のようなかたちに落ち着きました。赤味がかった色合いと木目が美しい山桜、木目がはっきりとした栗、軽くて持ちやすい胡桃、木目が緻密で固い楓、ツヤのある質感と特徴的な木目がおもしろい栃。それぞれの木の持ち味を生かしつつ、口当たりのよさや、堅牢性も兼ね備えたデザインとなったのです。

 

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拭き漆のみのスプーンも、以前から作っているオイルフィニッシュのみ続行して製作していますが、他にはないオリジナルなツートーンのスプーンは、そんな風にして生まれたのです。

 

“つくる人”を訪ねて スプーン作家・宮薗なつみさん(後編)につづきます

 

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Profile

宮薗なつみ(みやぞの・なつみ)

茨城大学教育学部情報文化課程生活デザインコース卒業。一般企業に就職したものの、ものづくりへの想いがふくらみ、制作を再開。2011年「miyazono spoon」を立ち上げる。個展・グループ展で作品を発表するかたわら、スプーンづくりのワークショップなども各地で精力的に行っている。http://miyazonospoon.jp/

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