「ももふく」店主・田辺さんと器のおはなし
器屋さんによるリレー連載「ある日の朝ごはん」のトップバッターを務めてくださった「ももふく」店主の田辺玲子さん。東京都町田市にあるお店を尋ねて、田辺さんと器にまつわる素敵なお話をうかがってきました。
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小田急線・JR線の町田駅、どちらからも少し離れた住宅地の一角にひっそりと店を構える「ももふく」。この場所でお店を始められたのは、今から7年ほど前のことだそう。
もともとはインテリアコーディネーター、設計士として建築関係のお仕事をされていたという田辺さん。住まいをつくる、という仕事自体はやりがいがあったそうですが、その仕事内容はずいぶんハードなものでした。
「あまりの忙しさからか、食が細くなってしまった時期がありました。そのときに、たまたま買った作家物のお茶碗があって。ご飯を盛ったら、いつもと変わらず炊いた白いご飯が、なぜかとても美味しそうに見えたんです」
食器ひとつで、こんなにも気分が変わるものなんだと驚いた田辺さん。身近すぎてつい見落としがちな毎日の食事の大切さも改めて実感したそう。
「建築という大きなものづくりも、じつは職人さんの手によるところが大きいんです。私は設計を担当していましたが、手仕事の面白さ、温かさを仕事を通して感じていたんでしょうね。作家物の器を手にしたのも、そんなところからだったような気がします」
その体験から、ご自身でも「人の手による、暮らしの中のちょっとした楽しみ」を器を通して提案したいと思うようになったそうです。設計事務所として使っていた自宅のスペースをお店に改装。「ももふく」は小さな自宅ショップとしてスタートしたのです。
自宅の一角をお店としてスタートさせた田辺さんですが「器の世界を知らないのはもちろん、仕入のルートもなく。とにかくすべて一からで手探り状態でしたね」
とはいえ、器への思いと持ち前のセンスもあって「素敵なラインナップの器屋さんがある」と口コミでお客さんも少しずつ増えてきました。今の「ももふく」の一角には、田辺さんの熱心さを物語る、器に関する本が並べられたコーナーも。
「そうしてちょっとずつではありますがお店が軌道に乗り始め、自宅ショップは最寄り駅から少し離れてることもあり、設計の仕事を辞めて器屋一本に絞ろう、店を構えよう、と決意しました」
作家物の器をメインに、食まわりの小物を扱う「ももふく」の誕生です。食器を“和”に絞ったのは、和食器なら和食だけではなく、洋食も不思議と上手に受け止めてくれるからだそうです。
「加えて和食器は丸くて深さがあるものが多いので、お料理の盛りつけにさして工夫をしなくても(笑)器の形なりにまとまるというか。おさまりがいいように思います」
お店には平皿から小鉢や蕎麦猪口、晩酌セット(?)まで、さまざまな器が並んでいました。
お店のブログには、もともと田辺さんの朝ごはんを紹介する記事も。
きっかけは「どんな器から買い揃えたらいいのか」「使い方や組み合わせ方がわからない」というお客さまの声だったとか。
「こういう大きさのものには、こうしたお料理が合いますよ、と実際に器に盛って見せるという提案をしてみようと思いました。もちろんどう使うかはお客さまの自由なんですが、食事を楽しむヒントになればいいなと思って」
「食事は毎日のこと。食事ごとに目にする器が料理を美味しく見せてくれるお気に入りのものならば、それだけで気分が上がりますよね。洋服など装うものは、対外的な目線も意識せざるを得ないけれど、器は自分だけの満足でいい。だからことさら楽しいのかもしれません。器は小さくてスペースもあまり取らず値段も手ごろ。ちょっと気分を変えたいときにぜひ活用してほしいですね」
日常の小さな贅沢と気分転換を探しに「ももふく」を訪れてみてはいかがでしょうか?
小田急線町田駅・JR横浜線町田駅より徒歩10分
シンプルで飽きのこない普段使いの作家もの器を扱う。
TEL 042-727-7607 日・月・祝 休
Mail momofuku@momofuku.jp
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