身体を土台から整えていく、究極のインソール~今回の先生:「FOOTWORKS」森健さんvol.1

からだ修行
2016.04.30

運動不足で、日に日に下半身の衰えを切実に感じているライター田中のり子。原稿書きに追われる日は、ふと気づくと外に一歩も出ていない…なんてこともしばしば。ううっ(涙)。今月も「からだ修行」という名のもと、身体を張った体験リポートをお伝えいたします!

photo:砂原 文 text:田中のり子

 

オーダーメイドのインソール、4万3200円」。

最初にその価格を聞いたとき、正直、腰が引けてしまいました。そのお金を出せば、そもそも中敷きではなく、いい靴そのものが買えそうではないですか。けれども、それを愛用しているフォトグラファーのOさんやAさんから何度となく、「その価値がある!」と強くすすめられており、ここ数年自分の姿勢について不安のある私もついに、その門戸をたたくことを決心したのでした。

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東京・下北沢にある「FOOTWORKS」は、若き店主・森健さんが2011年にオープンさせた、インソール作成の専門店。一流のトップアスリートから、スタイリスト、ヘアメイクなど立ち仕事の多い業界人、さらには長年の腰痛や肩こり、偏頭痛などに悩む方などが最後の望みをかけて通う、知る人ぞ知る名店として知られています。

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雑居ビルの4階に上がり、扉を開けるとそこは……「アパレルのショップですか?」と見間違うほどの、洗練された空間。重厚なフランス製アンティークの什器やスタイリッシュな花生け、ショーケースの中には艶やかに輝くレザーシューズが整然と並んでいます。「インソール=健康グッズ」という思い込みで扉を開けると、「あれ? 間違ったところに来てしまった?」と、勘違いしてしまいそうなおしゃれ空間です。

森さんのお父さまは、30年以上も前から足と身体の関係性に注目し、日本におけるインソールのパイオニアにして第一人者、後に整体師として活躍するようになった御方。そんなお父さまの背中を見て育ち、中学生の頃にはすでに「自分も将来、インソールを作る仕事をするだろうな」と思っていたという森さん。大学卒業後はフットケア先進国であるドイツに2年間留学。さまざまなメーカーや工房を訪ね歩いたそうです。

しかし本国のインソール作りは、よくも悪くも大らか。そして骨格が強く、関節まわりも丈夫なドイツ人に向けての理論は、日本人にはあてはまらないことも多かったといいます。改めてお父さまの用いている技術の繊細さ、レベルの高さを認識し、帰国後「FOOTWORKS」を立ち上げます。

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父と同じ道を進む息子。端から見ると、最初は反発しそうなイメージですが、森さんの中には迷いはなかったと言います。

「ただうちの親父は“背中を見て学べ”というタイプで、技術的なことは、ほとんど何も教えてもらえませんでした。いちばん教わったことは、目の前にいるお客さんが、どうしたらよくなるだろうと、どこまでその人に寄り添えるかという“思いやりの心”でした」

まるで時代劇の、剣士の親子のような関係……! 天才的な技術を当たり前のように見続けてきたことで、森さんもまた、乾いた土が水を吸うように、高度な技術をスクスクと吸収していったようです。自分が提供できる技術と知識は、絶対に価値があるもので、世の中に必要なもの。その確信があるから、若くして店を出すことに、迷いはまったくありませんでした。けれども一方で、世の中はとにかく「手軽に」「安く」「キャッチーに」健康を求める声も大きく、時代がどんどん逆流していくような感覚もあったそうです。

「人の身体は、ひとりひとり違う。誰にでも単純に当てはまる便利グッズとか、そんなに人の身体はカンタンなものじゃないんだけどな……と、ずっと思っていました」。

 

そもそもインソールとはどんな役割があるものなのでしょう?

人間というものは、まっすぐ立っているようでまっすぐではなく、左右差があったり、前後にねじれていたりと、「正しく立てていない」ことがほとんど。その原因のほとんどは、足にあります。身体の土台である足が不安定だと、他の部分が緊張したり、凝ったり張ったりしてゆがみ、結果的に腰痛や肩こり、偏頭痛といったさまざまな問題が出てきてしまうのです。言わば植物の根っこ、建物の土台の部分が不安定だと、そこにいくらマッサージや鍼灸などを施しても、根本的な解決にはならないのです。

そこで靴の内側にインソールを入れることによって、足が本来あるべき位置や形に整えていき、姿勢も正していく。その結果、人によっては数十年来の腰痛がぴたりと一日でなくなってしまったり、履き続けることでO脚やX脚が治ったりといった、驚きの効果が得られるのです。

かくいう田中も、パソコン前の座り仕事が長いせいか、肩こりは当たり前、特に左側の腰痛が慢性化しており、仕事が立て込んできると、キリキリと痛みます。果たしてこれらも足が原因なのでしょうか?

そんな疑問を抱えつつ、いよいよインソール作成です。まずは裸足になり、フットプリントという専用の器具を使い、足型を取ります。正面に大きな姿見がある台に上り、プリンターの上に足を載せます。青いインクの色が浮かび上がったその図は、足のどの部分が、どの方向に傾いているのかが一目瞭然

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「田中さんの場合、ここ(足の外側側面)に力が入っているのが分かりますか。本来この部分は、そんなに青色がつかなくていい部分なんです。ここに力が入ると、どうしても重心が外側にいってしまうので、腰痛になりやすいんです」。

本来足は、親指の根元にある拇指球(ぼしきゅう)、小指の根元にある小指球(しょうしきゅう)、かかとの3点で支えられているのが理想的。けれど私の場合、土踏まずの外側の部分にも力が入っているため、バランスが崩れてしまっているそう。

「さらに、小指をはじめとした指先に力がのっていない。これがしっかりのってくるといいんです。何十㎏ある人間の身体を、たった20数cmの幅で支えるのはかなり大変ですが、指先が使えていないと、その狭い部分の、さらに1/3が使えていないことになる。ものすごいロスなんですよ」。

自分と同じ体重の荷物を、23cm幅の棒で支えるとイメージすると、確かに不安定であるのは想像がつきます。指先を使うべきタイミングは、特に歩くとき。かかとから踏みおろし、最後に親指で身体を押し出すようなイメージで、しっかり指先まで使うことが大切なのだとか。

「そして右足の小指球やかかとのほうが、色が濃いのが分かりますか? 重心が右に傾いているんですね。だから腰も右に来てしまって、それが腰痛の原因になっているんです」

普段右足に重心が来ていることを意識したことがなかったのですが、言われると思い当たる節があります。バスケットボール部に所属していた高校生時代、左足の半月板を損傷し、手術をしたことがありました。その後リハビリをして復帰できたものの、分厚いサポーターをはめ、左足をかばいながらのプレーでした。

部活を引退して二十ウン年、そんなことはすっかり忘れていたのでしたが、そのときのケガは、身体の使い方にまだまだ色濃く影響を与えていたのです。

こういった田中の身体の使い方の傾向も、実は店のドアを開け、室内に歩いてくる姿を見た段階で、すでに森さんにはすべて分かっていたそう(!)。この足型は、あくまで「答え合わせ」なのだとか。そしていよいよ、この診断をもとに、インソールの作成に進みます。

 

その様子は、明日更新のvol.2にて!

 

vol.3はこちらから

 

第1回「頭も心もとろんとろんになるヘッドマッサージ」はこちらから

第2回「身体にふれることで、ありのままの姿を観察し認識するセラピー」はこちらから

第4回「天然ヒノキ&酵素のチカラで、ツルツルほかほか」はこちらから

FOOTWORKS(フットワークス)
東京都世田谷区北沢2-12-10 SSビル401

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TEL:03-6450-8299

11:00~20:00 不定休 完全予約制

http://www.footworks-tokyo.com/

初回(診断・測定・オーダメイドインソール作成×1・足のケア)¥43,200

2回目以降の調整 3,240~

Profile

田中のり子

noriko tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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