中国茶の自由気ままさに惹かれて vol.1 中国茶の稽古「月乃音」主宰 渡邊乃月さん

暮らしのおへそ
2016.08.10

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渡邊乃月さんが、中国茶の稽古を始めるとき、まずは目をつぶり、生徒さん全員と呼吸を合わせるそうです。窓からふわりと抜ける風を感じながら、自然の音に耳をすませると、自分が透明になってくるよう。

「今日煎れたお茶は、樹齢100年以上という老茶樹です。樹が育つ山の斜面の風景、土の香り。お茶をいただくことは、そのすべてを感じること」。

 そう語りながら、小さな杯にお茶の一滴を注ぐ……。その手元の美しいこと! リズム感のある所作によって、お茶の世界の内側へと導かれているようです。目線や仕草、湯気やお湯を捨てる音までが、精密に計算しつくされているからこそ、渡邊さんでないと淹れられないお茶になります。

 若い頃は、紅茶が好きで「アフタヌーンティ・ティーールーム」に勤務。「自分の国のお茶が知りたい」と仕事を辞めて茶道を習いましたが、「何かが違ったんですよね」と渡邊さん。

 でもそこで日本の茶道のルーツが中国と知り、中国茶を学び始めました。

「これだ! と思いましたね。なんだか自由だなあと感じたんです。中国では、お茶を飲みながらピーナッツの殻を吹き飛ばしたり、大きな声で話しをしたり。そんなおおらかさが、『こうでなきゃ』という枠から自分を解放してくれるようで……。私は絶対にこのお茶を一生の仕事にしようと、その時決意したんです」。

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 さぞかしストイックな方なのだろうなと思いきや、中国茶の自由気ままさに惹かれただなんて! 実は渡邊さん、まだまだ意外な「おへそ」をたくさんおもちでした。

 4年前から合気道を習い、週に2回は朝稽古に。それ以外の日は、剣杖を100回振っているのだとか。

「芦屋に引っ越してきたときに、たまたま哲学者で武道家の内田樹先生が市民会館で合気道の教室を開かれることを知りました。ご著書を愛読していたので、さっそく出かけてみると、その動きの美しさにすっかりとりこになってしまって」と渡邊さん。

vol.2に続く

『暮らしのおへそvol.21』より 

text:一田憲子 photo:岡田久仁子

Profile

渡邊乃月

Watanabe Notsuki

2004年より中国茶の稽古「月乃音」を主催。現在は兵庫県芦屋川にて開講。静かに感覚を研ぎ澄ませ、お茶の飲み方、淹れ方、茶器室礼や故事諸事について指南している。毎年中国をはじめ、東南アジアの茶の産地へ赴き、学びや仕入れも。東京、台北、上海で茶会や、毎月一日茶店「カンフーティールーム」を催す。

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