熊本編vol.3 古いヨーロッパの隠れ家のような店「Petite Branche」
「SARAXJIJI」野田ひろみさん
熊本のシンボルとも言える熊本城は、現在復旧工事が進んでいます。震災後は休止していた、一般の方が寄付できる「一口城主」という制度も、昨年末から「復興城主」として再開され、少しずつ前を向いて歩み始めました。
まだ立ち入り禁止区域が多いですが、周辺の通りからは天守閣や櫓などを見上げることが出来ます。私がよく通る天守閣西側の通りでは、県外からの観光客の方々が復旧の状況を見守るようにお城を見上げていたりしていて、そんな様子を見ていると地元の私たちが元気をもらえているような気持ちになります。
そんな風景を横目に先へ進み、城下町を過ぎてしばらくすると、出町という住宅街へ。その一角に、企画展だけを催すショップ「Petite Branche(プチブランシュ)」があります。
エントランスを入ると、自然に育った樹々が生い茂っていて、季節にはキウイがなるパーゴラがあり、その下をくぐり抜けてショップの扉へと向かいます。
フランス語で“小枝”という意味の「Petite Branche」は、オーナーであり、ご自身がクリエーターでもある井上史絵さんのお店。小さな枝をのばすようにスタートしたことと、フランス語の発音は難しいことを踏まえて、より多くの方に呼んでもらいたいと、本来の発音とは違う「プチ ブランシュ」と読むように命名されました。
緑を抜けて現れる大きな古い扉の横に、自然と風化した古い道具や時間の止まった時計が置かれてある風景は、まるでタイムスリップして古いヨーロッパの隠れ家を訪れているかのようです。
史絵さんのマスキュランテイストのセンスで彩られた空間では、熊本でもなかなか珍しい面白い企画の展示が開催されます。男性も女性もクラシックな雰囲気になれる「ノックの帽子屋」さんのオーダー会や、福岡で活躍されている独特なタッチのイラストレーターoshowさんの展示会、2年前にはオートマタ(からくり人形)「二象舎」の展示会も、先日ご紹介した「さかむら」と合同展にて開催されていました。生真面目さとユーモアがミックスされたようなアーティストとのご縁が多いのか、アート作品を見るかのような企画をされるのがお得意のようです。
お店は企画展が開かれている時のみOPENしていて、奥にあるご主人の美容室「Dress」に訪れる方々がショッピング出来る空間になっています。展示物以外にも、史絵さんがセレクトしたステーショナリーや古い道具などが置いてあって、私もついつい物色してしまいました。
史絵さんご自身が制作をされるリースやスワッグ、コサージュやアクセサリーなどは、甘さがなく渋めで、女性が身につけるものであっても凛として媚びた感じがしない雰囲気があります。そこが私にとってツボなのです。女性であることも謳歌していながら精神的に自立していて、日々の暮らしをゆるりと楽しんでいるような人がこの空間にはとっても似合う気がするのですが、もしかしたらそれは、いつも優しく穏やかに微笑む史絵さんから受け取っているイメージかもしれません。
スワッグやリースのオーダーを受けて制作されることもあって、店内にはドライフラワーがディスプレイされています。
明度の低いグレイッシュやダルトーンなど、落ち着いた渋めなカラーのドライフラワー。
色を調合してグラデーションに染めた花びらでデザインされた、シックな雰囲気のコサージュ。これは、我が息子の卒業式用に誂えたシルクの「SARAXJIJI」オリジナルワンピースのデザインイメージを伝えて、史絵さんに制作してもらったものです。今までに2回、史絵さんと2人で企画展を開催したことがありましたが、このコサージュ制作依頼がきっかけで、ずっと構想していた「SARAXJIJI」のドレスラインに、史絵さんのアクセサリーをスタイリングしてもらう形で展示することになりました。
2月には、史絵さんとの3回目となる企画展を開催予定。その展示を「pâquerette」と名付けました。2月6日から約2週間、「花と骨董と喫茶 さかむら」にて開催します。期間中2回ある火曜日には、「ルセット」の山折典子さんと「chanowa」高山由佳さんが食事を提供したり、お菓子やパンの販売をしたりする、“夜さかむら”も!
県外からわざわざ訪れる方も多い「Petite Branche」から発信される今年の企画展も、きっとユニークで見応えあるのだろうなと、とても楽しみです。展示の情報は、サイトやSNSなどにUPされ、特にInstagramでは史絵さん目線のフォトジェニックな世界観も楽しめます。
←連載「地元おしゃれさんが 案内する 小さな旅」はこちらから
【神戸編】 【大阪編】 【京都編】 【名古屋編】 【弘前編】 【福岡編】 【愛媛編】 【那須編】 【香川編】
MAP:Ⓒ
Tel&Fax:096-200-6383
企画展開催時のみOPEN
http://www.petite-branche.com
https://www.instagram.com/p_branche
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。