そのフォルムが生んだ座り心地の良さで広く愛されてきた【天童木工】S-5007、S-5009、S-3048

令和の家具事典
2024.11.21

※Come home! webに掲載された記事を転載しています

 

#20
 S-5007、S-5009、S-3048
身体をしっかりと受け止める3次元カーブの椅子
***


丸みを帯びたフォルムが目を引くこちらの椅子は、日本の工業デザインの黎明期を支えた剣持勇氏と、3次元の成形合板に果敢にチャレンジした天童木工の共作により誕生しました。

原型の登場は1961年のこと。建築家・丹下健三氏が設計した「戸塚カントリークラブ(1961年)」のクラブハウスのインテリアデザインを剣持氏が担当した時です。
剣持勇氏と丹下健三氏は多くの物件で協働しており、昨日ご紹介した「柏戸イス」がデザインされた「熱海ガーデンホテル(1961年)」もそうですが、現存する建築では「香川県庁舎(1958年)」や「国立代々木競技場第一体育館(1964年)」、「東京カテドラル聖マリア大聖堂(1964年)が両者の協働によるもので、いずれも天童木工が木製家具の一部を製作しています。


戸塚カントリークラブ(1961年)

 

生産量ナンバーワンだった椅子

「チェアS-5007、S-5009」は、使い勝手と座り心地の良さから、剣持氏のインテリア担当物件のみならず、多くの案件で活躍しました。
非常に人気のあるシリーズで、特にオフィスの引き合いが多く、椅子の大きさや脚部の仕様、張地の材質などを変えて多くのバリエーションが製作されました。
NHK Eテレが、教育テレビと呼ばれていた時代に放送していた『できるかな』の前身番組『なにしてあそぼう(1967年~)』で、ノッポさんのダンスの相手としてこの椅子が選ばれたことからも人気の片鱗が感じられます(『なにしてあそぼう』で検索してみてください)。
天童木工の歴史上、最も生産量の多いシリーズでしたが、その後オフィスの在り方が多様化し、現在ではその売り上げも落ち着きをみせています。


1970年代のカタログより

大きくカーブを描いたかたちは3次元の成形合板によってつくられています。背もたれと肘当てと座面が一体となった深いシェル構造を持ち、図面にも現れないような複雑かつ繊細なラインであったため非常に長い開発期間を要しました。
発売当初、張ぐるみのみのラインナップだったのは、強度上問題なくとも木部の表面上に現れる歪みを覆い隠す必要があったためでした。しかし、クッションと張地で覆ったことが功を奏し、非常に座り心地の良い椅子となり、多くの人の支持につながりました。
その後、表面に割れが出ない加工が可能になったことで、1999年メープルを表面材とした、いわゆるヌードタイプ(S-3048)が発売されました。


S-3048

背もたれは、座った人の身体に回り込むように大きくカーブしており、ひじ掛けとして体重を預けることもできます。また、ほど良いしなりがあり、しっかりと腰回りをサポートして身体を支えてくれます。

1枚の合板から描かれる3次元曲面の身体への当たりの良さを、是非直接座って確かめていただきたい椅子です。


S-5009 ※腰痛持ちのスタッフが一番おすすめしたい椅子です。


チェア:S-3048MP-NT
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000132/
材料:メープル、ステンレス丸パイプ
サイズ:W513 D525 H715 SH410(mm)

チェア:S-5009AA-AA
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000232/
材料:※各種張地よりお選びいただけます(張加工できない張地があります)
   ステンレス丸パイプ
サイズ:W518 D530 H715 SH433(mm)

チェア:S-5007AA-AA
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000231/
材料:※各種張地よりお選びいただけます(張加工できない張地があります)
   ステンレス丸パイプ
サイズ:W572 D615 H708 SH390(mm)

■剣持 勇
1912年 東京生まれ。
1932年 東京高等工芸学校木材工芸科を卒業後、商工省の工芸指導所に入所。翌年、来日したドイツ人の建築家ブルーノ・タウト氏のもとで椅子などの「規範原型」の研究を行う。
1952年 渡辺力氏や柳 宗理氏らと共に、日本インダストリアルデザイナー協会の設立に協力。
1955年 剣持勇デザイン研究所を設立する。
日本を代表する建築家、丹下健三氏とのコラボレーションも多く、柏戸イスの熱海ガーデンホテルや1964年天童木工が観客席を製作した国立代々木競技場の貴賓室もこのコンビによるもの。

 

←「天童木工」その他の記事はこちら

天童木工

1940年に山形県天童市で創業。無垢材よりも強く、軽く自由な形に成形できる「成形合板」を日本でいち早く実用化し、デザイナーや建築家といったクリエイター達との協同によって多くの名作と呼ばれるロングセラー家具を生み出してきました。その実績は一般家庭から、企業の上級エリア、中央官庁まで多岐にわたります。熟練の職人技と豊かなデザインは確かな品質と快適な暮らしをお届けいたします。

 

天童木工ホームページ
https://www.tendo-mokko.co.jp/
天童木工公式オンラインストア
https://shop.tendo-mokko.co.jp/

 

Instagram
https://www.instagram.com/tendo_mokko
Facebook
https://www.facebook.com/tendomokk0
X(旧Twitter)
https://twitter.com/Tendo_mokko

 

天童木工の全国の拠点・ショールーム&ストアの情報はこちらからご覧ください
https://www.tendo-mokko.co.jp/office/
天童木工の全国の取扱店の情報はこちらからご覧ください
https://www.tendo-mokko.co.jp/shops/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ