【はいいろオオカミ +花屋 西別府商店 】 新しいものの見方に出会える わざわざ足を運びたい店(1)

Comehome!
2025.01.01

※Come home! webに掲載された記事を転載しています

インテリアショップに訪れる楽しみって何ですか? 商品を実際に触れられることもそうですが、オーナーの思いを体感できることもそのひとつ。 店の場所、商品の並べ方、照明の明るさ...... その一つひとつに意味があって、インテリアにつながるヒントもたくさんあるはず。 ネットショッピングの普及で便利になった今、あえて訪れてほしい店をご紹介します。

この記事は、Come home! vol.67より抜粋しています。

はいいろオオカミ+花屋 西別府商店 ◎ 東京

日本の住まいにもよくなじむ 
質素であたたかい
ロシアの古道具に出会えます 
どんな場所でどう使われてきたか 
そのストーリーも一緒に楽しんで!

南青山の路地裏にある青いタイル張りの小ぶりなマンション。古めかしいエントランスをくぐった先にひっそり店を構えているのが「はいいろオオカミ+花屋 西別府商店」です。


白を基調にしたすっきりとした店内に並ぶ古道具は飾り愛でるものが中心。古くて100年以上前のものもあります。

全面白壁のシンプルな店内には、 ぽってりとした褐色の陶器や、素朴だけど色けのある花々が凛とした姿で並び、まるで絵画を見ているような気分に。「古いものと花が映えるよう、クセのない空間にしたかったんです」と語るのは、「はいいろオオカミ」店主の佐藤克耶さん。

店をオープンしたのは12年前。それまでは建築設計事務所で働く建築士でした。「大きなプロジェクトを扱う事務所に3年在籍していましたが、もっと身近なものを扱いたくて、ひとつあるだけで空間を変えられる古道具の店を始めることにしたんです」

扱う商品の8割はロシアのもの。 佐藤さんがロシアに目を向けたのは文学書がきっかけでした。



「椅子の脚が斜めだとか、カーテンがボロボ ロだとか、主人公が住む部屋の様子が細かく描写されていて。そんな繊細な感覚をもつ人たちが作る暮らしのものは、きっと素敵なんだろうと思ったんです」。



そうして足を運んだロシアで出会ったのが、褐色の陶器「ゴルショーク」でした。古くからロシアで使われていたミルク壺で、 土をこねる人、形づくる人、焼く人 など完全分業で作られ、同じものが二つとないとか。佐藤さんがそこから感じたのは日本にも通ずる侘(わ)びた印象。そして、ロシアのものを中心とした古道具店を開きました。

美術館のアートのように
眺めるほど奥深さに引き込まれます


ロシア語で Prialka といわれる糸を紡ぐために使われた民具の一部。ニジニ・ノヴゴロド州の都市ゴロジェッツの板絵(99000円)。



ロシアの老舗食器メーカー「クズネツォフ」の皿(19800円)。



上段の中央にあるのはロシア正教会で使われていたインセンスポット。



イベントも定期開催。この日は「PERSIA KILIM fair」を開催しており、さまざまなオールドキリムやじゅうたんが。一部は常設品。

ロシアの古道具がもつ趣を
引き立ててくれているのが
西別府さんの選ぶ生花 
「こんな飾り方があるんだ」という

アレンジのヒントも見つかります


ゴルショークにいけられた販売用の花々が並ぶニッチ。枠がまるで額縁のようで、アートを鑑賞している気分に。

佐藤さんが店を始めたころ、近所の生花店で働いていたのが西別府久幸さんです。ワイルドフラワーやプリミティブな花材を扱うこだわりを感じる花屋だったそう。佐藤さんが西別府さんと知り合い、感性や好みがよく似ていたことで意気投合し、 お互いの店を行き来する間柄に。


佐藤さん(左) と西別府さん(右)。オーダーメイドのユニフォームも年季が入り味わいを増しています。

そこで初めてゴルショークを手に取った西別府さんは、「ひと目で花をいけたら素敵だろうとわくわくしました。実際にいけてみると、現行の花器とは違い、花のよさが際立って。 花の朽ちる姿までもが器と共鳴し、空気感が違ったんです」と語ります。

その後、個展の開催やユニット活動を経て、2014年、「はいいろ オオカミ」との共同店舗として「花屋 西別府商店」の活動を開始。今は週3回、西別府さんが花を仕入れ、 そのつど、店のレイアウトも替えています。

教会で使われていた、ロシア帝国時代の吊り燭台 (27500 円)には、青いムスカリがマッチ。


一つひとつに味わいのあるゴルショークが、素朴な花々を美しく引き立てています。



ラナンキュラスに、レモンを合わせるのも西別府さんらしいアレンジです。 鮮やかな花を咲かせるミモザも加わって、統一感のある雰囲気に。


原種のチューリップのテタテの球根は、水を張った「クズネツォフ」の深皿(4950円) に、ざっと並べても可愛くて。

仕入れる花はゴルショークに似合うくすんだ色が中心。「必ずしも必要ではないけれど、あると暮らしを豊かにしてくれるのが花。コロナ禍でより、癒やしの存在として花を届けたい思いが強くなりました」

生花以外にもコケや朽ちた枝、木の実など、自然物を使ったオブジェ作品も並びます。

自然のものを生かした 
ここにしかない作品も



植物を生かした作品を作る作家としても活動している西別府さんの作品「森の暖簾(のれん)」(27500円 )。



こちらも作品 。 真鍮の土台に石こう粘土で押し花や綿毛などを埋め込んだブローチ「 森のオクリモノ 」 (各6600円)も見逃しなく。


自然ならではの造形や色彩に美を感じる西別府さんの感性がセンスよく表現され、やさしくてどこか懐かしい気持ちにさせてくれるのが特徴。


そんな西別府さんの視点で選ばれた植物や作品と、古道具が織りなす品々はまるでアートのようで、美術館を訪れたときのような新しい価値観に出会えます。

はいいろオオカミ +花屋 西別府商店 
東京都港区南青山3-15-2 マンション南青山102
TEL03-3478-5073
http://haiiro-ookami.com/ 
【営】 11:00~20:00(日曜日は19:00まで)火曜定休

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