多肉植物とともに暮らす最高の方法とは? 「TOKIIRO」近藤義展さんに聞いてみました【前編】

『多肉植物と暮らす 未来につながる植物生活』
2024.06.24

5月31日に6冊目の書籍となる『多肉植物と暮らす 未来につながる植物生活』を出版したばかりの「TOKIIRO(トキイロ)」近藤義展さんは、多肉植物と暮らし始めて16年。今では「多肉植物は人生のパートナー」というほど多肉植物に精通し、東京蚤の市には連続10年以上出店していて “お馴染みの顔” になっています。
また、ヨーロッパの古き良き家を思わせるオリジナルの家形ポットや、有名陶芸家が作った鉢に寄せ植えするなど、魅惑的な多肉植物の世界へ誘う寄せ植えは、多くのファンを虜にしています。そんなTOKIIROさんにお話を伺いました。



Q.タイトルの「未来につながる」とはどういうことでしょう?

“未来につながる”は
地球の未来


昨夏はかなり暑くて参ってしまったこと、覚えていますよね。今年も本格的な夏はまだ先なのに30度を超える日が続いて、「夏、大丈夫かな?」「暑すぎて、耐えられるかな」と心配してしまいます。

とはいえ、たっぷりの太陽光はエネルギーになり、植物はもちろん、僕たちヒトが生きていくためにも大切な資源。特に多肉植物は、太陽の光が強烈に降り注ぐ地域で生きてきた植物です。太陽の光をたっぷり受けて、空気中の二酸化炭素を取り入れて酸素を放出。それを取り入れてヒトや生物は呼吸しています。太陽が照って作物が育つから、僕たちは食べて栄養を取り入れています。

そんな循環を考えると、地球における基本的な営みに目がいきませんか? 地球での基本的営み、そのバランスが大事だと思うんです。1日1回地球が回っていること、1年に1回地球が太陽の周りを回っていること、その上に僕たちが生きていることも含めて。このバランスが心地よく保たれることは、地球の未来につながる行動です。それを信じて、僕は毎日多肉植物に触れ合っています。

 


 

答えは地球が教えてくれる


僕が新しい書籍を出したいと思ったのは、これをみなさんにお伝えしたかったから。多肉植物の寄せ植えワークショップではたびたびお伝えしていることです。

この言葉は、僕の師匠である柳生真吾さんがいつも言っていた言葉です。真吾さんは残念ながら2015年に亡くなってしまいましたが、真吾さんに教わったことは今も僕の心の中に刻まれていて、僕の指針になっていて、多肉植物のことを知れば知るほど「地球が教えてくれる」ことを実感します。

それを理解するために、まず地球儀を頭に浮かべてみてください。多肉植物がどんなところで生き続けて、子孫を繁栄させてきたかーー想像してみるんです。多肉植物の多くは、乾燥地で育っています。日中は太陽の光が強烈に照りつけ、一方夜になると極端に気温が下がり、昼夜の寒暖差が大きい地域。そんな環境の中で生き続けられるように、多肉植物は進化し、環境に合う体内システムに変化してきました。

このように、多肉植物の生き方に目を向けると、多肉植物とどのように暮らせばいいか、自ずと見えてくると思います。

 


 

不自然なヒョロヒョロ伸びは
太陽不足の危険信号


人気陶芸家・大谷哲也さん作の鉢に生けた寄せ植え
タイトル「白い大地に宿る多肉の森」

 

みなさんの中にも「買ってきたときはかわいかったのに、次第にひょろひょろしてきて元気がなくなった」という経験をしたことがある人がいるのでは? 僕のワークショップで最も多い質問の1つです。

答えを言うと、太陽不足。

多肉植物はよく雑貨店やディスカウントショップなどでも売られています。室内のまったく光の当たらないところで。その影響もあって、「デスクの上に置きたい」「かわいい雑貨と一緒に並べたい」とディズプレー重視で購入する人もいて、きっとそう言う方を落胆させてしまうかもしれませんが。

室内で育てるのは、多肉植物をダメにする行為です! 必ず外で育ててあげてください。僕からの強いお願いです。

先にもお伝えしたように多肉植物の多くは、日中の太陽光が厳しい地域で育っていて、太陽の光がたっぷりあってこそ正常に体が機能するように進化してきました。だから、たっぷりの太陽が大好き! 太陽を求めているんです。

ひょろひょろと伸びたのは、多肉植物が太陽を求めて不自然に伸びた姿。これを「徒長」と言って、正常な成長ではありません。多肉植物が元気いっぱい育つためには、ベランダとか庭とか、太陽が直接当たる場所に置いてあげてください。

加えて、「風」も大事です。風が当たることで多肉植物の体内システムは循環しますから。だから、「太陽のよく当たる、風通しのいいところ」で育てることをお願いします。


多肉植物をリースに。夏には緑のリースになる

 


 

多肉植物は、湿度に弱い
梅雨と夏は要注意!


タイトル「ボクらはみんな地球の仲間」

 

ただ僕たちが暮らしている日本には、梅雨があります。夏は気温が高いばかりか、湿度がかなり高くなるので、うだるような暑さになります。それが夜になっても治らず、熱帯夜が続くことがしばしば。ひどい場合は、熱中症になってしまうでしょう? 多肉植物も、僕たちヒトと同じだと思ってください。

多肉植物の多くは乾燥地で暮らしてきているので、湿気に弱いのです。

そのため、ジメジメと長雨が続く梅雨時期や、昼夜とも高温多湿の夏は、多肉植物の生死を左右する時期になります。

2、3日雨が続くときは、雨の当たらない軒下に入れましょう。夏には、夜のみ部屋に入れて、扇風機の冷たい風を当てて、体を冷やしてあげてもいいと思います。ただし、朝には外に出してあげてください。

 

photo:砺波周平

→【後編】へ続きます

Profile

「TOKIIRO」主宰・近藤義展

Yoshinobu Kondo

1969年新潟県糸魚川市出身。東京薬科大学中退。植物空間デザイナー。自分の生きる目的を模索する中で2008年、故・柳生真吾さんの多肉植物の創作に出会う。2009年、器(空間)に絵を描くように生きた多肉植物の世界を創造する季色(トキイロ)をスタート。よりグローバルな活動のため、屋号を漢字からローマ字のTOKIIROに変更し、現在、全国各地でのイベントやワークショップを積極的に実施。柳生さんの教えを胸に、地球ベースでの多肉植物の生きる世界を伝えている。著書に『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)、『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)などがあり、中国語、韓国、英語に翻訳されている。NHK趣味の園芸講師、日本園芸協会講師も務める。
ホームページ:tokiiro.com

 

多肉植物と暮らす 未来につながる植物生活

発売日:2024年05月31日
定価:1,600円+税

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