好きなものに囲まれて暮らす プロップスタイリスト・二本柳志津香さんの“マキシマリスト” 生活【後編】
断捨離よりも好きなものと暮らす 私の買いもの基準
私は商業施設やホテル、CMや雑誌でテーマに合わせた世界観をつくるプロップスタイリスト、もののスタイリストです。職業柄、プライベートでも可愛い食器やフラワー、小物などを見つけると、コレクターのように集めていきます。
結果、たくさんの好きなものに囲まれて暮らす“マキシマリスト”となりました。
ものが多いとごちゃごちゃしてしまうのでは? 狭い住宅空間の中にこだわりのものを素敵に配置するのは難しい、という声もよく聞きます。
※本記事では、プロのプロップスタイリストの視点から、自分好みのアイテムを収集して、個性的な空間づくりを楽しむ秘訣を『スタイリストが実践! 好きなものと上手につき合うインテリア』から一部抜粋・編集してお伝えします。
好きなものに囲まれる暮らしは理想ですが、どんどん好みの雑貨やうつわをふやすだけでは収拾がつかなくなります。
何をどう選べば、さらに日々実用的に役立ってくれるのか自分にとっての最適解を見つける方法を考えましょう。
自分が本当に何が好きなのかを知る方法
「今度、引っ越すんですけど買い物につき合ってくれませんか?」、スマホの画面を見せられて「この部屋の観葉植ものを選んでもらえませんか?」などなど、職業柄ものに関する相談をいただくことがとても多いです。私の趣味で選ぶのは簡単ですが、まわりの方にも自分の好きなものと暮らしてほしい……だなんて、勝手に思ってしまうのです。
「好きなものがわからない」という方も多いので、まずはぼんやりでもイメージを形にするところからスタート。好きだと感じる素材を集めてスクラップブックを作ります。心ひかれる布の切れ端、雑誌の切り抜き、気になる言葉をメモしたり、思い出の場所の写真など、とにかくアンテナが触れたものに関わるパーツを張りつけていくのです。私がこの家を建てるときに作ったのが、写真のスクラップブック。
黒をアクセントにするの は、今も継続しているイ ンテリア。淡いピンクや フェミニンな材質を効か せたパリのアパルトマンが理想でした。大切な始まりのページです。
好きなテイストがわかったら小さな場所で自分のご機嫌をとろう
「いいな」と思うものを集めたスクラップブックを作って、好きなテイストが何となくつかめた方は、次のステップへ。
実際に好きなものを集めて自分だけのコーナーをつくってみましょう。小さくてかまいません。棚1 台分、数段分だっていいと思います。アクセサリーや雑貨だけでなく、旅行の記念品、捨てられない可愛い空き瓶だっていいのです。自分の好きなもの、大切なもの、今気になるものを並べてみてください。その一角は、あなたを癒やしてくれるパワースポットになるはずです。
毎日、生きているだけでいろんなことが起こりますね~。いつも笑顔じゃいられないような日だってあるはずです。何かで読んだ、「自分の機嫌は自分でとろう」という言葉。難しい! と思ったのは、きっと私だけではないでしょう。
東京に上京したばかりのころ、嫌なことがあった日は、何か買いものをして帰っていました。その日は幸福を感じているのですが、月末のカードの明細を見てびっくり! ちっとも幸せな気分ではなくなるのです(苦笑)。
でも今は、自分の好きなものが詰まった一角を見るだけで、なんだかちょっと幸せな気分になる私がいます。私のコーナーには、好きな紅茶の缶、オードトワレ、アクセサリーを並べて。ガラス扉のついた棚は、自分でアクセントカラーの黒にペイントしました。
「私には、ちゃんと大切なものがある」と目で自覚するからでしょうか。ストレスで買いものをしすぎてしまうことも減らせるような気がします。しまい込んでいる大切なものも、ぜひいつも目に入るとっておきの場所に置いてみてください。この方法で、いつも機嫌がいい人に近づけるといいのですが……。
家電だって自分好みに変えられる
仕事でスタイリングをするときに一番最初に考える部分は、大きなものから考えるか、主役となるものに合わせて、そのまわりを考えていくかのどちらかです。
住まいにおいてはどうかというと、床や壁などの面積の広い部分に続いて、大型家具や冷蔵庫などの家電製品も〝大きなもの〞として考えられるのではないかと思います。わが家のキッチンはダイニングとひと続きで、どこに立ってもキッチン家電が視界に入ります。
模様替えを頻繁に行うので、この前まではメインカラーがベージュ系だったのに、今は違う色の雑貨がふえてきて、ふと見るとしっくりなじんでいた家電製品が浮いて見えるといったケースがたびたび起こります。
だからといって、家電製品をそのたびに買い替えることはできません。そんなときにはあれこれとなじませる工夫を試みます。たとえば、冷蔵庫にマグネットのフックをつけてキッチンクロスを吊り下げるだけでも色のトーンをそろえることができます。また、カッティングシートを張って本体の色を変えたり、家電製品の周囲に置くアイテムによっても印象が違って見えたり、無機質な存在感が緩和されたりもします。
キッチンにいくつも並ぶ家電製品が、なんだかしっくりこないという方がいらっしゃいましたら、ぜひお試しください。
冷蔵庫は「TOKYO RECYCLE imption自由が丘店」で見つけた「Will」。マグネットにリネンのクロスをかけて、黒を効かせたダイニングキッチンのインテリアに合うようにしています。
自分のために 花と緑を欠かさない
仕事が大変だったり、外に出るとどっと疲 れたり、なんか今日はいろいろあったな~と いう日のルーティンがあります。
それは、花に触れること。 小さなワンコインブーケを買ったり、好きな 花を 1 本買ったりするだけで、大きな癒やし になります。
20代から30代前半までの私は、本当に人に傷つきやすい人間で した。きっと今だって根本は変わらないので しょうけど、幸い自分のいたわり方を知る大 人になりました。
「なんでそんなに毎日楽しそうなんですか?」とよく聞かれますが、20代と違うのは嫌なことがあったその後の過ごし方をよく知 っているからだと思っています。
嫌なことがあったらお花を買おう! リラックスしたいからミニブーケにミントを入れて飾ろう! などと、花や緑のおかげで心の切り替えができるようになりました。季節の花を飾ると、自然とていねいに暮らしているような気分になって、そんな自分にクスッとします。
花を飾るというと、キッチン や食卓が多いと思いますが、 一人でほっとひと息つけるサ ニタリーが私のおすすめです。
ちなみにブーケをいけるときは、まとめてある輪ゴムをはずすほうが、長もちしますよ。
こんなふうに、自分の暮らしを自分で心地よくする工夫をしています。私の場合、それには好きなものに囲まれることが欠かせません。お気に入りの道具や雑貨があることで、家事も少しだけ楽しくなるのです。
「人生はもの選びで変わる!」
大げさかもしれませんが、自分の「好き」を知って、自分らしいものと暮らす幸せを見つけていただけたら幸いです。
撮影/田中館裕介
スタイリストが実践!
好きなものと上手につき合うインテリア
Profile
二本柳志津香
一般社団法人テーブルウェアスタイリスト連合会(TWSA)代表理事。株式会社空間スタイリング社代表取締役。CM・広告・カタログ・雑誌・書籍・空間からプロップまで手がけるスタイリストで、国家資格商品装飾展示技能士。日本で初めて食器のスタイリング資格・テーブルウェアスタイリスト®を創設。スタイリングやディスプレイ業のほか、食器の専門家としてイベント出演やテーブルウェアスタイリスト®の育成に取り組む。
インスタグラム @nippon.shizuka
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