京都・西陣「futana(フタナ)」は、箱をもたない身1つの「futana」となりました

おしゃれさんコーディネート
2024.12.23


皆さまこんにちは、京都「futana(フタナ)」の土井菜子です。


あれよあれよと2024年も最終週! 毎年のように「飛ぶようにはやく」と言っておりますが、今年は輪をかけて駆け足だった気がします。まばたきよりも早く―



この「暮らしとおしゃれの編集室」では、いつも季節のコーディネートや作り手さんのご紹介でコラムを書かせていただいておりますが、今日は少し毛色のちがうお話をさせていただきたいと思います。


というのも「futana」は、この12月7日に西陣にあった実店舗を閉じ、今現在、箱をもたない身1つの「futana」となっております! この形になるまでの経緯や私の心の動きをコラムとして書かせてもらえることになり、一つの節目をここに置かせていただくに至ります。



今まではずっとお洋服やかばん、靴、装身具などについてのお話を書いていたので、偏りがありながらも幾分すらすらと筆が進んでいたのですが、自分自身の話となるとこうも難しいのかと、1人頭を抱えております。

でもでも、これはとても光栄なことであり、私にとってすごく実になるひととき。書いて文字にして目にする時、ともするとそこにあるものはまるでまったく違う人の考えや出来事のような瞬間があって。それは自分を客観視し、整理し、今を再確認しているという証拠だと思うのですが、その機会をいただけたということが本当に嬉しいです。

今の自分を、くっきりとまではいかずとも ぼんやりと形をなして手に出来る。皆さんに向けてお話させていただくことで、これからの「futana」の輪郭をもう少し濃くすることができる。なんと自己満足の時間だろうと分かりつつも、皆さまにこのコラムを下へと読み進めていただけたらとても嬉しいです。



さて、実店舗閉店の経緯をお話するにあたり、最初に頭に浮かぶのは「今、手の中にあるしあわせのために、どうしても必要な選択だった」という想い。2024年12月に閉店すると決めたのが2023年12月。ちょうど今から1年前。1年をかけて閉店の準備をする中で、日を追うごとにclosedする理由が1つ1つ明らかになってきている気がします。


行動の理由が、あとからついてきている不思議。そして、その不思議を面白いと思う自分もまた、ここにいます。


話が脱線するのですが、歳を重ねるにつれこの「あとから理由が分かって、不思議に面白い」が増えてきました。凄く小さなことなのだけれど、「いつもと違う道順を通りたくなって逸れてみたら焼き芋屋さんに出会えた」とか、「本屋さんで普段は手に取らないジャンルの本と目が合って買ってかえったら、知りたかったことが載っていた」とか。

「なんだかこっちがいいな」
「今日はこれは違う気がする」

「直感」と置き換えてよいのかは分かりませんが、この感覚にひかれるまま動いたり止まったりしてみると、嬉しいことや望んでいた結果に繋がって、今回の「futana」の実店舗閉店も、とどのつまりこれが大もとの理由だったと思います。


予兆は少し前にありました。同じ2023年の春、「このままの形ではいれない気がする」という思いが、心の中にぼんやり浮かびました。この時はどちらかというと何かがストップする感覚で、なので少し緊張したのを覚えています。この春の感覚はいつの間にか消えて、気づいたら夏に突入していました。2023年の夏は本当に暑くて、厳し過ぎる暑さと共に、歳を重ねている自分もひしひしと自覚する夏でもありました。


そうして2023年12月。

「西陣のこの店舗を閉めよう」という考えが、ぽっかりと浮かんできました。閉店すると決めた時、「1年後」という期日も同時に付いてきました。1年後と決めたのは、普段来てくださっている皆さまに直接ご挨拶したかったというのが大きな理由です。1年ひとめぐりあったら、全ての方は叶わないとしても遠方から来てくださる皆さまのタイミングにのせてお会い出来ると思いました。1年あれば、「来年こそは手に入れましょう」と相談していた定番のお洋服をお渡しできるとも思いました。


「この1年は大丈夫」と、ずっと呟いていました。



でも、強く迷いない決定だったとはいえ、7年の月日を過ごした場所。同じ場所で同じ形で続けたかったという想いも勿論ありました。もともとは安定・いつも通り・凪を好む性質で、変化が苦手な土井。ひとところで続けていくことへの憧れもありました。閉店する理由がもっとちゃんと必要な気もしました。お世話になっている作り手さんに申し訳ないような気持にもなりました。

閉めると決めてから、皆さんにどのようにお伝えするか考えること数日。そうして2024年12月、closedのお話を皆さまにお伝えしたのでした。

ここまで書いて、「なんと感覚的なのか」と自分でも思います。でも「理由があとからやってきた」「動いてからでないと気づけなかった事柄」という感覚を、ここで既に味わうことになります。closedのことを皆さんにお伝えした瞬間、めきめきと力が湧いてきたからです。ゴールが見えたから出てきた感覚でした。


だから、店舗closedの1つ目の理由は、「ゴールが欲しかった」でした。明確な目標が欲しかったのです。



「futana」をはじめて以来ずっと、お洋服や作品について、いつもどこを切り取っても変わりない自分の感覚で選び、作り手さんたちから届けてもらい、それを皆さまにお伝えさせていただいていました。お店でご紹介する洋服に関しての考えや想いや態度は、アパレルとよばれる場に入って20年来ずっと変わらずです。


自分自身が好きなものを、皆さんの気持ちや要望に添う形でお届けしたい。望んでくださる皆さんにお渡ししたい。洋服を欲しいと思っていらっしゃるその内側を少しでも知りたい。

 


1日1日、それぞれ楽しい日の連なり。同時に、楽しくはあるけれど単調な日の連なり。私の、習慣化するのが好きという性質と、「futana」が1人で営んでいるお店ということが重なって、変化がとても少ない淡々とした日々となっていました。その、淡々とした日々にひと区切りが欲しくなっていたようでした。

「いつも通り」が大好きなのだけれど、ちょっといつも通りを続けすぎたみたい。

 

ゴール。

「2024年をやりきる」という目標設定が出来たら、目が覚めたかのように頭が動き始めました。自分がやるべきことが山盛り見えてきます。最後の1年、来てくださる皆さんに楽しんでいただけるものを出来るだけ沢山集めたい。皆さんからお聞きしていた探し物を見つけてきたい。ここで出来ることを詰め込んで終わりたいと思いました。西陣に「futana」がある間に、やれることをやり切る。作り手の皆さんのお心遣いのおかげで、ポコポコとやりたかったイベントを実現させていただきました。


maninaさんのグロサリー販売にはじまり、AREA81 HANDMADE SHOESさん、Rai-Atelierさん、yofuneさん、MARTAU.さん、GUPTIHAさん、TORICIさん、AIR ROOM PRODUCTSさん、Niki.du.poulainさん、yoakeさん……




皆さんお忙しい中でもイベントを引き受けていただけたことが、本当に嬉しかったです。

常設でお世話になっている作り手さんのお心遣いもとても心強かったです。店舗が1年で終わるという中で、いつも通りにお取り扱いさせていただけたことが本当に光栄でした。

 


 

そして、店舗closedの2つ目の理由は、「7年間の軌跡を実感する」でした。



作り手さんやブランドさんから、お洋服や作品を任せてもらえるということは、私にとって特別なこと。とても小さなお店ですが、ラスト1年も変わらず洋服を任せてもらえるということに気が引き締まりました。7年間の洋服に対する自分の姿勢を、これからも続けていこうと思える瞬間でもありました。


ちょっと偏っていて暑苦しいけれど、お洋服に関してはこのままの私で進んでいこう。



そうして1年。がむしゃらに、「futana」をはじめた最初の年と同じぐらいがむしゃらに、でも、力の使い方は7年目の使い方で。すぐに力んでしまうところは変わらないけれど、1年目よりは少しリラックスしながら、がむしゃらしている自分を楽しめた1年でした。


満ち満ちた2024年。閉めると決めなければ過ごせなかった1年。もっとスマートに、クールにソフトに 違う形へ移ることもできただろうに、いつも暑苦しくなっちゃう。


でもでも、不器用だけれど、凄く大切なものを手に出来た2024年。自分が生きる上での主軸となる気持ちも手に出来た1年で、言葉にするのは少し難しいのですが、ここから先に進む上で指針となるものが内側に出来て、少しは大人になれた気がしています。私にとって主軸は、生きる理由のようなもの。一番内側にあるもの。軸があれば、時には違うことをするのもほんとはこわがらなくていい。最近になってゆっくりとそう思えてきています。


「futana」は、私そのもの。




元々、娘が帰ってくる場所として始まった「futana」は、いつしか土井菜子そのものとなっていました。これから先も、ずっと「futana」であり続けたいと思っています。

歳を重ねて、娘の成長や体の変化、その他たくさんの環境のうつろいがこれからも続く中、手に取るものへの気持ちと基準はそのままに、時にその内側を皆さんにお伝えしたり、時に声を少し大きくしてみたり、時に静かに見つめてみたり。今は周りのいろいろにまかせて滔々としてみようと思います。


それは、西陣で7年間を過ごさせていただけたから思える事柄。ここでの時間がなければ、そうは思えなかったと思います。西陣で「futana」をはじめて本当によかった。



あらためまして。西陣にある「futana」を知っていただきました皆さま、お越しいただきました皆さま、本当に、本当にありがとうございます。凄く光栄です。皆さまが来ていただいたからある、今の「futana」です。表に見える「futana」はこれから少し減りますが、もし頭やしっぽや耳が見えましたら一緒にお楽しみいただけましたらとても嬉しいです。

お洋服や作品のご相談も、是非、ぜひ。皆さま、なにとぞよろしくお願いいたします。

と!
今日は店舗closedまでの徒然でした。ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

明日は「closedしたあとの後日談」をお話させていただけましたら嬉しいです。ちょっとうれしいお知らせもあったり、あったり。


えへへ


明日も皆さまにお読みいただけましたらわたし うれし。

皆さまにお会い出来るのを楽しみにしております。

 


futana

 

 

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