金子敦子さんと探す、ニッポンのイイモノ Vol.2 シルクの産地「桐生」へ(後編)

金子敦子さんと探す、ニッポンのイイモノ
2025.07.02

この連載では、日本のさまざまな産地で職人さんによって丁寧に実直に作られてきた素敵なモノを知ってほしい! 高い品質の伝統生地や工芸品の素晴らしさや作り手のことを、もっと皆さんにお伝えしたい! そんな金子さんの熱い思いを、発売中の『新 大人の普段着<春夏編> 金子敦子さんが愛用しているニッポンのイイモノ』より一部抜粋してお届けします。第2回はシルクの産地「桐生」を訪ねます。

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<作り手に会いに行く!>

培った刺しゅうの技術を
生かして日常を豊かに

「トリプル・オゥ」片倉洋一さん


大きな刺しゅう用ミシンがジージーと音を立て、糸が立体になっていく。ここは刺しゅうメーカー「笠盛」が2011年にオープンした「トリプル・オゥ」の工場。愛用のブローチはどう作られているの? と実際に工程を目にすると驚きでした。「トリプル・オゥ」の生みの親でマネージャーの片倉洋一さんは、2007年、海外の展示会のために「カサモリレース」を開発。お湯で溶ける紙にミシンで刺しゅうをし、最後に紙を溶かすとレースが残ります。

「それまでは生地を預かって加工だけを行っていましたが、『日本のものづくりを海外に届けたい』という4代目(現会長)の熱い思いが後押しとなり、培ってきた技術を生かす、笠盛らしい商品をと考えて作りました。『トリプル・オゥ』はこの技術をベースに生まれたんです」

既成概念にとらわれず作りたいものを作ろうと思ったとき、シルクのシンプルなネックレスが浮かんだという片倉さん。立体の刺しゅうは前例がなく、社内では不安の声も上がったといいますが、3年間の試行錯誤の末、ついに完成したそうです。

刺しゅうは針の動きをプログラミングしたミシンが行いますが、湿気で糸のテンションや紙の状態が変わるので人の目や手が欠かせないそう。刺しゅうした紙を溶かす工程や仕上げも手作業。つけると温かみを感じる理由がわかった気がしました。

「使う人の日常を豊かにするものが作りたい」。前進を続ける片倉さんの思いは、きっとさらに多くの人に届くはずです。


上/学生時代はテキスタイルを学んでいた片倉さん。ブランド名の3つの “0(オゥ)” は、常に0に返って見つめ直したい「発想」「素材」「技術」を指すそう。下/お湯につけたら、紙だけがサーッと溶けていきました。不思議!


上/シルクやリネン、キュプラなどを使用。「糸の強みは色が豊富なこと。求める糸がない場合は一から作ります。職人とのやりとりがしやすいのは産地ならではの利点」(片倉さん)。下/飛び出た糸の始末などは人の手で。

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驚きの軽さと立体感が楽しめる
糸のみで作られた
「トリプル・オゥ」のアクセサリー


糸でできているのは知っていたのに、初めて手にしたとき、その軽さに驚きました。

「トリプル・オゥ」は創業147年の刺しゅうメーカー「笠盛」のオリジナルブランド。刺しゅうというと平面的なものが浮かびますが、「トリプル・オゥ」はシルクやキュプラなどの糸を重ねて球体を作る「立体刺しゅう」という独自技術でアクセサリーを作っています。どれも軽く、長時間つけていても体がラク。登山で軽さの価値を知ってから、1gでも軽いものを身につけたい私にぴったりです。

シルクのつやを感じる白の糸玉は、まるでパールのよう。やわらかなつけ心地で温かみがあるし、洗えるから汗ばむ季節も安心。ほかにはない技術の中に、やさしさを感じる逸品です。


グラスコードは一番人気。「金属製を使っていましたが、軽いものが欲しくて購入。つけているのを忘れるほどの軽さ。眼鏡や服に合わせてアクセサリーのように楽しめます」


アイボリーの糸玉の間にシルバーのラメ糸が通っているブローチ。顔まわりが明るく、華やかな印象に。「どの色の服にも合うし、控えめに主張するところが気に入っています」


花火をイメージして、白とブルーの大きさ違いの糸玉を組み合わせたイヤリング。ネイビーのブラウスとリンクさせて。「華やかで、カジュアルにもフォーマルにも似合いそう」


5〜9mmサイズの糸玉が連なった、リズムを感じるネックレス。「つやのあるシルクと上品なフレンチリネンの糸がブレンドされているナチュラルな風合いに惹かれました」

 


 

\ 金子さんおすすめ! /
「桐生」で立ち寄りたいショップ


全ラインアップが勢揃いする唯一の場所

「トリプル・オゥ ファクトリーショップ」


のこぎり屋根が目を引く「笠盛」の刺しゅう工房に併設された「トリプル・オゥ」のショップ。ブランドのアイコンである「スフィア・プラスシリーズ」のネックレスやパーツの取りはずしができる「ワルツネックレス」など全ラインアップが揃います。「広報の野村文子さん(左)やスタッフの方が、気軽にお買い物の相談に乗ってくれますよ」

トリプル・オゥ ファクトリーショップ
群馬県桐生市三吉町1-3-3
TEL:0277-44-3353
https://www.000-triple.com/


photo:黒川ひろみ、岡 利恵子、有馬貴子
text:増田綾子

 


 

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Profile

金子敦子

Atsuko Kaneko

夫と娘との3人暮らし。60代が楽しくなる着こなしや暮らし方をインスタグラムや書籍で発信し、注目を集めている。『新 大人の普段着<春夏編> 金子敦子さんが愛用しているニッポンのイイモノ』(主婦と生活社)など著書多数。

Instagram:@55akotan

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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