パンとスープと、器の魔法

器店主の朝ごはん
2025.08.09

「nokaze -うつわと物語の家-」中藤さんご夫妻 vol.2


こんにちは。京都・岡崎で「nokaze -うつわと物語の家-」という器ギャラリーを営んでいる中藤夫妻です。
前回に続き、今回は第二回目の「器で叶える、マイカフェモーニング」。テーマは「パンとスープと、器の魔法」です。
今日は、「よし、久々に朝からパンでも焼こう」と思って、気合いを入れてトースターのスイッチをオン。…のはずが、しばらく他のことに気を取られている間に、見事に焦げてしまいました。キッチンに充満する焦げの香り。朝からちょっと落ち込む瞬間です...でも、焼き直したトーストをお気に入りの器にのせて、ゆっくりとテーブルに並べていくと、なんだかその出来事すら笑えてくる。
「器って、気分を変える力があるな」と、改めて感じた朝でした。
そんなわけで、今日は“トーストとスープだけ”の朝。でも、ちょっとだけ気分が上がった朝ごはんをご紹介します。



焼いただけ。を変える!器がかけるモーニングマジック
この日の朝ごはんのメニューは、とってもシンプル。さっと焼いて用意したものばかり。
・ トースト(食パンを焼いただけ)
・ 市販の枝豆スープ(お湯を入れただけ)
・ 目玉焼き(卵を割って焼いただけ)
・ ケールサラダ(作り置きしている、茹でて塩とオリーブオイルで和えた常備菜)
・ ミニトマト(洗って添えただけ)

その中で、一手間だけ加えた今回の“新顔”が ズッキーニ。
正直、普段はあまり買うことのない野菜なんですが、スーパーで見かけたときに「なんだか夏野菜っぽくて美味しそうだな…」と、ふと手に取りました。こちらも焼いただけ。塩をふって、オリーブオイルでじっくり焼いただけ。…これが、驚くほど美味しかったんです!
ジューシーで、でもくたっとしすぎず、ほんのり甘みも感じられて。「え、ズッキーニって、こんなに美味しかったんだ」と感動。これはぜひ皆さんにも試してほしい、おすすめの夏野菜です。


古谷製陶所が、全体の雰囲気を整える
今日使ったのは、前回も利用させていただいた古谷製陶所さんのプレートとスープカップ。古谷製陶所さんは数百種類の作品を作られており、当ギャラリーでも常時100種類以上を取り扱っています。
古谷製陶所さんの器は、白や鉄散などの柔らかな表情がありつつも、しっかりと日常使いできる耐久性があるのが魅力です。特にこの日のプレートは、トーストや目玉焼き、サラダやズッキーニをすっきりまとめてくれる大きめの角皿。
器の「縁」が立ち上がっているから、少しぐらい雑に盛っても、なんだか全体がまとまって見える。これが、朝の“やる気が出ない日”には本当にありがたいポイントです。



スープカップも同じく古谷製陶所。枝豆スープの緑が、白っぽい釉薬の色に映えて、ちょっとしたごちそう気分に。丸みのちょうど良さが、食卓に可愛らしさと温かみを与えてくれます。


器の色味や形、素材感が、それぞれの食材にちょうどよく寄り添ってくれるんです。 「朝を整える」って、何かを足すことじゃなくて、何気ない日常をこういう心地よい器に任せることなのかもしれません。


カップに込めた記憶――飛松灯器で釉薬体験


そして今日のマグカップは、ちょっと特別な一品。
東京で灯器を作られている飛松灯器さんのマグカップです。実はこれ、私たち夫婦が釉薬体験に行って、自分たちで釉薬をかけた思い出の器です。
とはいえ、「釉薬をかけるだけ」だったはずが、予想以上に大変でした。
このカップは、吹付という方法で、霧吹きを口につけ、大きく息を吸って吹きかけていきます。満遍なく、丁寧にムラなくかける作業に、息が切れそうに…。体験とはいえ、「作陶って、こんなにも体力と集中力がいるんだ…!」と改めて実感しました。
そのときから、作家さんたちへの尊敬の気持ちがぐっと深まった気がします。
毎朝このカップを手にするたびに、「あのときの体験」と「作り手の想い」が重なって、なんだか背筋が伸びる。そんなマグカップです。

器って、気持ちを切り替えるスイッチかも
朝って、不思議な時間です。気持ちが乗らない日もあれば、やることに追われてバタバタしてしまう日もある。でも、「器を選ぶ」という小さな行為が、自分自身をほんの少し整えてくれます。「今日はどの器にしよう?」と考える時間は、たぶん30秒くらい。
それでも、そのたった30秒が、自分を大切にする時間になっていると感じます。うまく盛りつけようとしなくてもいい。お気に入りの器に、ただ焼いただけのトーストをのせるだけで、「ちょっといい朝」になる。それが、器の持つ魔法だと思うのです。



最後に、今日使った器たちをご紹介します。
古谷製陶所(信楽焼)ラッフルプレート M サビ釉(作品詳細はこちら
・リム部分のやわらかな立ち上がりと、ラッフル(波)のような縁が美しいプレート
・焦げ茶の釉薬が落ち着いた印象を与えつつ、食材の色を引き立てる
・焼き菓子やトースト、主菜のワンプレートにもぴったりで、日常使いしやすいサイズ感

古谷製陶所(信楽焼)手付丸形スープカップ たて鉄線(作品詳細はこちら
・ぽってりとした丸いフォルムと手付きのデザインが手になじむ、温かみのあるスープカップ
・たてに入った鉄線のラインが表情を引き締め、ナチュラルだけど凛とした印象に
・具だくさんスープやシリアルにも使えるたっぷりサイズで、朝食にもぴったり

飛松灯器/fin cup(作品詳細はこちら
・灯器を手がける飛松さんによる、洗練されたデザインと使いやすさを兼ね備えたカップ
・釉薬の仕上げは一つひとつ異なり、手作りならではの個性が感じらる自分だけの器
・本記事で紹介したカラーはオリジナル。色違いの作品はギャラリーにて販売中です。



まとめ:パンとスープだけの日こそ、自分を整える
焦げたパンから始まった朝。でも、器にのせて、野菜を焼いて、スープを温めただけで、ちゃんと“ごきげんな朝”になりました。忙しい朝でも、完璧じゃない朝でも、器がそっと背中を押してくれる。そんな小さな変化を、これからも大切にしていきたいと思っています。
「器って、ちょっと気になるかも」 「私もズッキーニ、焼いてみようかな」「自分だけのオリジナル器もいいな」そんな風に思っていただけたら嬉しいです。
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nokaze -うつわと物語の家-

京都府京都市左京区岡崎⻄天王町84-1
(京阪 神宮丸太町駅、地下鉄東西線 東山駅から徒歩10分)
TEL:075-203-4917
営業時間:12:00〜17:00
定休日:月〜水曜
https://shop.kyoto-nokaze.com
Instagram:@nokaze_ikustyle

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