【サステナブル特集】須藤玲子さん「補修することでさらに愛着のある服に」
今週は5日連続で「服にまつわるサステナブル」を特集します。お気に入りの服を長~く大事に着続けることも、自分が着なくなった服をリユースやリサイクルで循環させることも、持続可能な未来への第一歩。この機会に皆さんも、長年手つかずのクロゼットを見直してみませんか?
「NUNO」代表・須藤玲子さん
愛着のある服を
長く着るためにできること
開口一番、「私は服をなかなか手放せないんです」と須藤さん。考えに考えて購入した心から好きな服は、着たら必ずブラシをかけ、手洗いし、傷んだら補修をして、ボロボロになったら端ぎれにして最後まで使い切るそう。時間と手間がかかるその工程をいとわずに楽しみ、服をとことん慈しむ須藤さんに、手洗いの方法をはじめ、服と長くつきあっていくために日々、できることを教えていただきました。

「NUNO」のシルクカシミヤニットとウールモスリンのパンツに、自身でリメイクした「クリステンセンドゥ ノルド」のコートを。
手放せない服は、考えて、苦労して手に入れた愛着のある服ばかり。
だから、大切に扱ってできるだけ長く着ていたいんです
「素材が気持ちがよくて衝動買いしたけれど、いかにもチェスターコートというかっちりした雰囲気でした。一度、糸を全部ほどいて縫い直し、ボタンを取り替えたら、まったく雰囲気が変わったんですよ」
そういって須藤さんが見せてくれたのは、上の写真で着用している白のカシミヤコート。襟や袖口にのぞく糸や襟元に施した手縫いのステッチによりほどよいラフさとやわらかさが加わり、新たな一枚に生まれ変わりました。ほかにも擦り切れたシャツの袖口をテープでくるんだり、取れないシミを刺しゅうで隠したり、靴下の穴を繕ったりと、須藤さんにとって服や小物の補修はごく当たり前のこと。
「縫い物は小さいころから好きですが、何より、どれも心から好きで買ったものだからだと思います。特に1970年代や1980年代のものは、考えに考えて買ったものだから、着られなくなるのが悲しいの。最近は腰まわりにお肉がついてはけなくなったパンツをほどいて、ウエストを広げたりしています」
お気に入りのシャツは袖が擦り切れたら、おしゃれ着からは引退。
パジャマにして、とろりとした生地感を楽しみます

右は1990年代に買った「ワイズ」のシャツ。左は「NUNO」のシルクシャツ。同色のパンツと合わせてパジャマに。左のシャツの袖口は「母の裁縫箱に入っていた」という黄色いシルクのバイアステープで補修している。
『服を上手に手放すと、おしゃれはもっとラクになる』より
photo:和田直美 text:増田綾子
Profile
須藤玲子
1953年生まれ。株式会社布代表。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術までを駆使して新しいテキスタイルづくりを行い、国内外で高い評価を得ている。ニューヨーク近代美術館をはじめ、世界の名だたるミュージアムに作品が所蔵されている。https://www.nuno.com
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。