淡路島編vol.2 海を見下ろす高台に立つ1日1組限定の貸別荘「WORM(ワーム)」
瀬戸内海最大の島である淡路島は東京都23区ほどの大きさで、温暖な気候で四季折々の花や景色などの自然が楽しめます。本州からは明石海峡大橋、四国からは大鳴門橋が繋がっており離島ながらアクセスも良く訪れやすいのも魅力のひとつです。
そんな淡路島を拠点に活動されている設計事務所「HIRAMATSUGUMI(ヒラマツグミ)」さん。設計事務所の他にカフェやギャラリーも併設されており県外からも多くの人々が訪れます。素敵な建築物にも注目して欲しいという島のスポットをご紹介いただきました。是非次の旅の計画を立ててみてくださいね。
穏やかな海を眺めながらのドライブが心をほどいていく。宿へと続く道すがら、きらきらと揺れる水面を見ながら車を走らせていると、日常から少しずつ距離を置き、非日常へと移ろう感覚になります。そんな道の先にあるのが、今回ご紹介する貸別荘「WORM(ワーム)」です。淡路島の北東、大阪湾を一望できる高台にあり、段々畑の中にそっと寄り添うように訪れる人を迎えます。
到着すると、オーナーが裏のハーブガーデンで摘んだばかりのミントを使ってささっとドリンクを作ってくれました。宿の裏にはハーブや果樹が少しずつ植えられ、季節ごとに小さな実りをもたらします。ゲストが自由に収穫できるよう、入り口にはさみや虫除けスプレーがさりげなく用意されている心遣いが素敵です。
宿の「WORM」という名前は「みみず」を意味し、みみずが土を耕し、土地を豊かにするように、この宿も訪れた人の感性を耕す存在でありたいとの思いから名付けられています。入り口の象徴的なドアノブは、陶芸家・キクチユキミさんにオーダーした一点もの。WORMというコンセプトをかたちにし、訪れる人にこの宿の思いを柔らかく伝えています。
お部屋はひと続きになっており、前後に大きく開いた開口からは、海と山の美しい姿を望むことができます。センスあふれる設えは、旅先で出会ったものや作家ものの家具や器、美しいデザインプロダクトなど、時代や国をこえて、オーナーの審美眼で選び取られたもの。ミニマルな空間にあえて「モノを置く」ことで、暮らしの温度を感じさせる心地よい空間になっています。
やわらかなカーペット敷きの床は、寝転がって過ごすことを肯定してくれ、ひとつひとつ違うチェアは、座る場所を選ぶ楽しさと、座るたびに変わる視点からの景色を楽しむことができます。また雨の日には、ぜひ棚に並ぶアートブックやCDの数々を手に取ってみて下さい。普段手に取らないような本や音楽と、ふいに特別な出会いを果たすことがあるかもしれません。
「この場所が本当に好きなんです。」とオーナー。日々少しずつ手をかけ、まるで畑を耕すようにこの場所を育てています。建築が機能を果たすだけでなく、人が感性を取り戻す場所になりうる、その実践がここにあるような気がしました。
ここでは時間の流れに自覚的になります。夜の暗さや静けさに改めて気付いたり、朝、太陽が昇り、色彩が戻るとともに目覚める、そんな、普段忘れがちな自然のリズムを体感できるのも、この場所ならでは。ただ泊まるだけでなく、その土地を味わい、四季折々の色や音、香りを楽しむ。WORMで過ごした時間は、確かな手触り感の残る記憶として、日常にもどってからも時折思い出す体験となるでしょう。
建築が好きな方には、車で15分ほどのところにある安藤忠雄建築の「本福寺水御堂」もあわせて訪れたい。淡路島にいくつもある安藤建築の中でも、特に私が好きな場所で、アプローチから本堂へ続く構成や、夕暮れに御堂が真っ赤に染まる美しい光景に出会えます。
兵庫県淡路市釜口2173
https://wormstay.jp/
Instagram:@worm_stay
MAP:B
日本、〒656-0002 兵庫県洲本市中川原町中川原555
日本、〒656-2334 兵庫県淡路市釜口2173
日本、〒656-1325 兵庫県洲本市五色町鮎原南谷409
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