冬のおしゃれ支度は、アイルランドより届いたVネックベストから
「berkarte(ベルカルテ)」の片山一弥です。
気づけばもう10月も後半。ついこの前まで「まだ昼間は暑いですね」なんて言っていたのに、今週に入って急に空気が冷たくなりました。朝、玄関のドアを開けた瞬間「うわ、冬だ」と思わず声が出る感じ。
慌ててクローゼットの奥を探り、コートを引っ張り出し、あれこれ重ねては鏡の前で首を傾げていている方も多いのではないでしょうか。私もそのひとり。人の支度なんて、結局いつも“体感で決まる”ものですね。
今週のアイテム
Vネックのニットベスト

そんな時に頼りになるのが、「Fisherman Out of Ireland(フィッシャーマン アウト オブ アイルランド)」Vネックベスト。今年の1月、アイルランドのダブリンを訪ね、現地のデザイナーとニッターさんにオーダーしてきたものです。
灰色がかった石塀の向こうに羊がのんびりしていて、風が海の匂いを運んでくるようなあの場所。その風景の中で生まれるウールそのままの素朴さとあたたかみが、この一枚にぎゅっと詰まっています。

ツイードのような節がある糸で編まれたこのベストは、見た目に素朴な味わいがありながらも、ちくちく感が少なく、とても軽い。

着てみると肩の力がすっと抜けるような柔らかさで、「ウールってこんなに気持ちよかったっけ?」と驚くほど。編み目に少し空気を含むので、重ね着してもふんわり心地よく、まるで身体ごと包み込んでくれるようなやさしさがあります。
寒い朝も、このベストがあればなんとかなる気がして、つい手に取ってしまう、そんな存在です。

まずは、オリーブブラウンのベスト。
深い森を思わせる色合いがやさしく肌に映え、白シャツや生成りのパンツに合わせると、光を柔らかく受け止めながら、どこか静かな温もりを漂わせてくれます。

目の細かい「prit(プリット)」のリラックスコーデュロイパンツ。

中には「kinako(キナコ)」のベースタートルを重ねて。


オリーブブラウンは、デニムとシャツにも相性がいい。


この日は、パン屋で焼きたての香りに引き寄せられたり、公園のベンチで本を開いたり。
そんな日常の小さな場面に、このベストがよく馴染む。動きやすくて、軽くて、どんな服ともケンカしない。派手ではないけれど、いちばん信頼できる……。服にも、そんな相棒が一着あると心強いものです。

これからの季節、特にベストが重宝するのは、上から何かを羽織ったときに邪魔にならないから。
厚すぎず、肩まわりがすっきりしているので、ジャケットやコートを重ねても腕まわりがもたつきません。

寒い朝でも、ついこのベストを手に取ってしまうのは、やっぱりその“着やすさ”。
袖のない服がここまで活躍するとは……。冬が近づくたびに、そのありがたみをしみじみと感じます。

グレーのベストは、ぐっとシックな印象。
黒の「William Lockie(ウィリアムロッキー)」のタートルに「BRENA(ブレナ)」のロングキュロットを合わせました。さらに上から「Honnete(オネット)のジャケットを羽織ると、落ち着いたトーンの中にも凛とした表情が生まれます。



県立美術館の外観を前に、落ち葉を踏みしめながら歩くと、グレーのベストが秋の色としっくりなじみます。
風が冷たくても、心の中はどこか穏やか。この“ほどよい温かさ”は、まるで気持ちの余白をつくってくれるようです。コートを手に持って歩くその時間さえ、季節のリズムに寄り添うようで心地よいもの。

館内のカフェでは、顔なじみのリカさんが笑顔で迎えてくれました。

コーヒーをひと口。ベレー帽を少し傾け、肩の力をふっと抜く。そんな何気ない時間に、いい服はそっと寄り添ってくれます。
軽くて動きやすく、座っていても形が崩れない。「ちゃんと温かくて、ちゃんと自由」……そのさじ加減こそ、このベストのいちばんの魅力かもしれません。

こうして、連載の一年を通して、いろいろな服を紹介してきました。
冬から春、夏を越えて、そして今、秋の終わりに。季節の移り変わりとともに、装いの気分も少しずつ移り変わる。振り返れば、結局どの季節も「日々の暮らしの中で、気持ちよく着られること」をいちばんに考えていた気がします。
そして今、アイルランドを含めたヨーロッパへの旅を計画しています。今年1月の冷たい風の中で出会った、あの特別な品物を求めて。同じニットでも、次に出会うときには、また少し違った景色が見える気がします。旅も服も、そして人の気持ちも、季節とともにゆっくり育っていくのかもしれません。
アイルランドの風を感じるニットで、冬の支度を。
そんなふうに服を整える時間そのものが、ちょっとしたご褒美のように感じられます。次に寒さが訪れるころには、このベストの出番はさらに増えているかもしれません。
慌てず、でも楽しみながら冬へ。服に助けられながら、心地よく季節を越えていけたらと思います。
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