南仏のやわらかな光に似た、Pichonの器
〜「tömpa(東巴 / とんぱ)」より vol.21〜
今日のひとしなは、南仏で出会った Maison Pichon Uzès(メゾン・ピション・ユゼス)のプレートについて。
Pichonの器に出会うと、胸が高鳴ります。蚤の市や古い倉庫の片隅で、その独特の厚みと色にふと目が合った瞬間、思わず駆け寄ってしまう。あの「見つけた!」という感覚は、私にとってちょっとした宝探しのようで、迷わず連れて帰ります。

南仏Uzèsの土で作られた器は、ぽってりとした厚みと、手に持つとずしりと感じる重量があります。軽やかさとは真逆にある、その揺るぎない「存在感」がたまらなく好きです。食卓に並べた時の安定感、どんな料理も受け止めてくれる頼もしさ、悠々と腰を据えたような姿が、南仏のあっけらかんとした陽気さにも通じているように感じます。
Pichon窯は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、地元の石灰質の土と豊かな水源を生かし、さまざまな陶器を生み出してきた工房です。自然や植物、幾何学模様をモチーフにした絵付けが多く、手描きならではの柔らかなライン、釉薬のムラや揺らぎが、時を経たいま見ても心をつかみます。とくに緑やマスタード色、ブルーなど、南仏の光と空気がそのまま溶け込んだような色味は格別で、日常の食卓にそっと南フランスの風を運んでくれるような魅力があります。
1950年代、Uzès周辺で採れる多孔性の赤土を生かし、Pichonでは南仏らしい釉薬の色が次々と生まれました。なかでも心を奪われるのが、あの独特のはちみつのようなマスタード色。陽をたっぷり含んだような深みがあって、けれど決して派手ではない。南仏の乾いた空気と、石畳に落ちる午後の影がそのまま溶け込んだような色です。

マスタード色の魅力は、時間を経るほどに“育つ”ところにもあると思っています。釉薬の揺らぎやムラが、光の角度で表情を変え、古いものならではの奥行きを見せてくれる。完璧ではないからこそ、手仕事の気配がすっと立ち上がるような、あの独特の味わい。南仏の工房で積み重ねられた時間が、いまの私の日常にもそっと滲み込んでくるような気がするのです。
日々の暮らしの中でふと視界に入るそのマスタード色を見ると、「ああ、やっぱり好きだな」と思います。飽きる気配がまったくないのは、きっと色そのものが持つ陽だまりのような温度と、Pichonが守り続けてきた土と釉薬の物語が重なり、私の大雑把なお料理も、この器に盛ると不思議と様になり、ひと皿に落ち着きと温かみを与えてくれるような気がします。

南仏の風景をそのまま閉じ込めたような一枚。料理のためだけでなく、果物をのせたり、テーブルに置くだけでも空気を変えてくれる存在感があるのも魅力です。
Terre è Provenceは南仏の工房で丁寧に作られた陶器で、釉薬の揺らぎや素朴な風合いに魅力があります。緑の釉薬はハーブの葉のように穏やかな色合いで、光にかざすと艶やかな透明感があり、静かな深みを感じさせます。Pichonより現代的な印象もありつつ、手仕事ならではの温度が残る器です。
アンティークの器は、誰かが長く使い、大切にしてきた時間がそのまま宿っています。その物語の続きを、今度は自分の暮らしの中でそっと繋いでいく、そんな喜びが、アンティークを使う醍醐味でもあり、今日のひとしなとして皆さまにご紹介したい理由です。
南仏の光と風の記憶が詰まった Pichon と Terre è Provence の器。
手に取る機会があれば、その厚みや色に触れながら、どうかゆっくりと眺めてみてください。ふっと気持ちが温かくなるかと思います。
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静岡県湖西市新居町新居2731
TEL:053-594-8633
営業時間:11:00〜17:00
定休日:日・月
(※展示会期間中は日・月も営業 / 最新情報はSNSを確認)
Instagram:@tompa_japan
(※営業日や展示会・料理教室などWSについては随時Instagramでお知らせ)
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