アンティークの灯りと、静かなクリスマスの時間
〜「tömpa(東巴 / とんぱ)」より vol.24〜
12月24日(水)街も家々も柔らかな灯りに包まれるこの季節に、今日のひとしなとしてご紹介したいのは、フランスのアンティークを中心としたキャンドルスタンドです。ろうそくの灯りは、特別な日だけでなく、日常の中にも静かな深呼吸の時間をつくってくれます。

昔から、ランタンや薪ストーブ、キャンプファイヤーや焚き火、そして一つのキャンドルに灯る小さな火を眺めるのが好きで、気づけばじっと見入ってしまうことがあります。そんなふうに火に惹かれるのは、実は私だけではなくて、火を見るのが好きな方は結構多いはずです。

キャンドルの小さな炎も、薪ストーブのゆらぎも、ただ眺めているだけで気持ちが静まり、呼吸が深くなるような感覚があります。これには、太古の暮らしから続く、いくつかの理由があると言われているそうです。
ひとつは、人がまだ火を生活の中心にしていた頃の「本能」の名残。暗闇のなかで火は安全・あたたかさ・仲間との時間を象徴する存在だったため、火がある場所は安心できる場所。だから炎を見ると、どこか懐かしさや安堵を感じると言われています。

もうひとつは「炎のゆらぎ」の特徴です。揺れる光は、規則的でも不規則でもない独特のリズムを持ち、これが人の脳にとって心地よい刺激になり、リラックス効果を生むと心理学でも語られています。
火は常に形を変え続けていて、火を見つめていると、頭の中の雑念がすっと引いて、今の時間や場所に静かに身を置くことができ、自然と余計な力が抜けていく感じがします。

ヨーロッパでキャンドルスタンドが本格的に普及したのは、中世から近世にかけてのこと。まだ電気のない時代、人々にとって夜を照らす火は生活そのものを支えるものでした。ろうそくの炎を安全に、そして効率よく使うために生まれたのがキャンドルスタンドです。貴族の館では金属やガラスを用いた華やかなものが、農村や町家では木製や鉄製など素朴なものが用いられ、暮らしに合わせてその姿を変えてきました。

素材もさまざまです。例えば、木製のキャンドルスタンドは、温かく柔らかな印象があり、素手で触れたときの質感や経年の変化も魅力のひとつ。エタン(ピューター)は、フランスではとても馴染みがあり、どこか落ち着いた鈍い光沢が特徴です。華美ではないのに、静かに佇む存在感がある。真鍮は、磨けばきらりと光り、使い込めば渋い深い色に育ちます。銅はさらに表情豊かで、少しずつ変化していく色味がまるで時間の流れそのもののようでもあります。
アンティークの世界で特別な存在感を放つのが、マーキュリーガラスと呼ばれるもの。ガラスの内側に水銀を閉じ込める独特の製法によってつくられ、光を受けると柔らかく反射し、まるで内側からほのかに光っているような不思議な美しさがあります。市場でも年々希少性が高まっているアイテムです。


素材によって使い方や飾り方も変わります。例えば、木製やエタンは毎日の暮らしに自然に馴染み、食卓やサイドテーブルなどに置いても穏やかな空気をつくってくれる。ブラスや銅は、空間のアクセントとして一つ置くだけで華やかさや深みが増します。

マーキュリーガラスのように光を扱うものは、窓辺や鏡のそばに置くと光が揺らぎ、空間全体が少しだけ特別に見える。どれもキャンドルの灯りと寄り添うことで、本来の魅力がいっそう際立ちます。

私自身も、炎の揺らぎを見ると、慌ただしく過ぎていく日々の中でふと立ち止まり、気持ちがゆるむ瞬間があります。

キャンドルスタンドは、ただの道具ではありません。部屋の空気を整え、暮らしのリズムを整え、心の中に静かな灯りをともしてくれる存在です。
アンティークのキャンドルスタンドは、手に取ると、その重みや質感から、長い年月を共にしてきた物語がふと立ち上がるようで、私がアンティークを好きで扱い続けている理由もそこにあります。

とはいえ、魅力はアンティークだけにあるわけではありません。
日本の作家 ligi さんの燭台は、土の質感の奥に、どこか神々しさが宿るような唯一無二の佇まいがあります。素材や表情、光の受け方はそれぞれ異なり、どの燭台にも、灯す瞬間を特別な時間に変えてくれる力があります。毎年冬に行われる ligi さんの個展、今年はアニミズムをテーマに、陸・海・空の生命を精霊として表現したオブジェ展が開催されましたが、来年からまた、私が愛してやまないキャンドルスタンドやスパイス入れ、耐熱の陶器など、暮らしに寄り添う作品も一緒に紹介できる予定ですのでお楽しみにしていてください。現在燭台が少し通販にてお求めいただけます。

クリスマスには、部屋にほんの小さな炎を灯してみると、いつもの景色が少し違って見えるかもしれませんね。静かな満ち足りた時間が、皆さまのところにも訪れますように。

最後に、私がコレクションしているフランスのランタンやランプの一部もご紹介し、今日のひとしなとさせていただきます。皆さま、メリークリスマス。

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静岡県湖西市新居町新居2731
TEL:053-594-8633
営業時間:11:00〜17:00
定休日:日・月
(※展示会期間中は日・月も営業 / 最新情報はSNSを確認)
Instagram:@tompa_japan
(※営業日や展示会・料理教室などWSについては随時Instagramでお知らせ)
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