片岡義順さん(ジュエリーデザイナー)・片岡亜紀子さん (ショップマネージャー) vol.1

ふたりのおしゃれ
2016.02.07

「暮らしとおしゃれ」編集部から発行した本「ふたりのおしゃれ」。自分のおしゃれも楽しいけれど、パートナーと一緒に日々のおしゃれを楽しめたら、もっといい。そんな気持ちから、素敵に歳を重ねるご夫妻にお話しを伺いました。このたび、Amazon Kindleの電子化リクエストの声が多数寄せられ、電子版が発売されることに。これを記念して、本に収録したインタビューの中から、一部を連載でご紹介します。

 

第1回は、ジュエリーデザイナーの片岡義順さん、亜紀子さんご夫妻。夫であり、妻であり、仕事のパートナーでもあるおふたりの理想の夫婦像とは?

 

迷ったり、悩んだり。

それでも、流れゆく風景を

同じ自転車に乗って

眺めていたい。

 

 

 

s-20160205_片岡 記事

今から10年ほど前、東京表参道のマンションの1階に「アンタイディ」という小さな古道具屋さんがありました。片岡義順さんと亜紀子さんが初めて出会ったのがここ。店を出て義順さんが亜紀子さんを呼び止め、ふたりでお茶を飲み、なんと3か月後には結婚していたと言うから驚きです。

 

亜紀子——女性や年配の方が多い店に、若い男性がいるのが珍しくて、気になっていました。なんだか東京っぽいファッションの人だなあと思ったのを覚えています。シンプルな服に、スニーカーだけが鮮やかな紫だったんですよね。

義順——古物をぼんやり見ている横顔が印象的でしたね。僕はそれまで、外で女性に声をかけるなんてしたことがなかったのに自分でもびっくりしました(笑)。

亜紀子——話してみたら、彼は商店街が好きでその近くに住んでいるとのこと。見かけとは逆に庶民的でびっくり。いつもよく出会うおばあちゃんの話をしてくれて、それもいいなあって思ったんです。

 

義順——僕は大規模な商業施設がどうも苦手で。売るためだけに並んでいるものが好きになれないんです。マーケティングされたものが嫌いっていうか……。だから生活に根づいた商店街が好きなんでしょうね。当時は古物にどっぷりはまっていた時期でした。古い道具って、売りたいオーラが削ぎ落されているでしょう? そこが好きなんです。そんな話をすると、あっこ(=亜紀子さん)はすぐにわかってくれました。そして、土鍋でご飯を炊いているんだと話してくれて。しかも、当時染色をしていたから、佇まいはとてもきれいなのに、指先が黒く汚れていました。そこも素朴で素敵だなあと思って。

 

s-20160206_片岡さんモノクロ

結婚したての頃。

 

大学時代に、離島巡りの旅にはまり、卒業後は沖縄の島で機織りの作家さんの元に弟子入りをしたという亜紀子さん。ところが師匠が体を壊してやむなく帰京。会社務めをしながら、2DKの風呂なしアパートに機を置いて、作品を作っていたそうです。一方義順さんは、親戚が営むジュエリー会社で取締役兼ジュエリーデザイナーとして活躍。新店舗がオープンし、やっとひと息ついた頃。そんな時期にふたりが出会ったというわけです。

結婚後、亜紀子さんは自分の作品づくりを続け、個展を開いたりクラフトフェアに出展したり。一方義順さんは、勤めていたジュエリー会社がだんだん大きくなるにつれ、少しずつ違和感を感じ始めていました。

 

義順——シンプルにものづくりがしたかったのに会社が成長して、どんどん「組織」へと変わっていきました。そんな中で、自分らしいものづくりとのズレが生まれ、ストレスを抱えていたんです。ときどき、あっこがクラフトフェアに出展する際、僕は展示用の台を作ったり、ものを並べたりと手伝っていました。そして、僕がしたいことは、実はこういうことだったんだよなあと思ったり……。

 

vol.2につづく

 

『ふたりのおしゃれ』より

photo: 和田直美 text: 一田憲子

Profile

片岡義順 片岡亜紀子

Yoshinobu Kataoka Akiko Kataoka

義順さんは、1970年生まれ。ジュエリーブランドのデザイナーとして活躍した後独立。「kataoka」を立ち上げる。亜紀子さんは1973年生まれ。機織りを学んだ後作品づくりを。結婚後個展を開催。現在は「kataoka」のマネージャーを勤める。長女、長男と4人暮らし。

http://kataoka-jewelry.com/

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