手元で咲く一瞬の花
〜「OCUYUKI」より〜 vol.16
小さな火の花が、パチパチと咲き、小さな火の玉がぽとりと落ちると、最後に決まって「あ〜」というため息まじりの声が出る。

今回ご紹介するのは、筒井時正玩具花火製造所の「線香花火」。九州の福岡県みやま市で、約90年にわたり、子供向け玩具花火の製造を手がけてきました。
実は、線香花火には「東」と「西」があるのをご存知でしょうか。私たちが、よく目にする色鮮やかな和紙に包まれた線香花火は、実は、関東を中心に楽しまれてきた線香花火。

線香花火が生まれたのは、300年ほど前の江戸時代。稲藁の先に火薬をつけて、それを香炉などに立てて楽しんだ、というのが始まりなのだそう。
稲作が盛んな関西では、この稲藁の「スボ手牡丹」が広がり、一方、稲作が盛んではない関東では、代わりに和紙で火薬を包んだ「長手牡丹」が作られるようになりました。この和紙の「線香花火」が、現在では多くの人がイメージするものではないだろうか。
西の「スボ手牡丹」は、私も筒井さんと出会ってはじめて知りました。
和紙の線香花火と持ち方も少し違っていて、火元を下に向けるのではなく、少し上に向けて持つというので、火をつける時にドキドキしたのを覚えています。

お店でたまに「懐かしい〜」と言って手にとってくださる方も。出身を伺うと、やはりみなさん関西、四国、九州の方。
実は、筒井さんも線香花火を作り始めたのは、1999年から。
それまで、福岡の八女にあった、国内唯一の線香花火の製造所が廃業することを知った、三代目の良太さんが自ら修行に入り、その火薬の配合などの知識や技術、道具に至るまで継承しました。
それでも、線香花火をつくり続けることは簡単ではありません。
火薬作りに必要な膠(にかわ)が入手困難になり、藁を作ってくれていた職人さんも高齢化などで廃業。そのため、筒井さんたちは「スボ手花火」の稲藁を確保するために、新規就農を決意。現在では米作りから行っています。
都心や住宅街では、自由に花火を楽しめる場所や機会も減りました。そんな時代背景を感じ、花火を気兼ねなく楽しめる場所づくりとして花火を愉しむための宿〝川の家〟を立ち上げ、運営。
また、スボ手花火の材料である稲藁の、田植えから稲刈り、花火づくりまでを体験できるワークショップなども開催しています。
「花火」そのものだけではなく、その背景や文化も含めて、花火の魅力を伝えていきたい。そんな想いが、線香花火の1本1本に込められているのです。

一瞬で終わってしまう花火ですが、たくさんの歴史と先人たちの知識と技、そして、ひたむきに線香花火を作りつづける筒井さんたちの想いが、美しい火花となって咲いているのです。
東京都国分寺市日吉町2-33-20 シャルムビル102
営業時間:水-金11:00〜18:00
火/土12:30〜18:00
定休日:第一土・日・月・祝祭日
https://ocuyuki.jp/
Instagram:@ocuyuki
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