「hal」後藤由紀子さん【後編】「転んで得るものもいっぱいあるから、コンプレックスはあったほうがいい」
もうすぐ、50歳の後藤さん。「大台にのる」ことに、および腰な人もいますが、後藤さんはとても前向き。素敵な先輩が身近にたくさんいるので、年を重ねるのが楽しみと、いたっておおらか。
「実際は48歳なんですけれど、歳を聞かれると『50手前です』って答えるようにしています。区切りもいいし、ネガティブな感じは一切ないですね」
年を重ね、服の着こなしにも長年の経験がどんどん生かされるようになってきました。「コンプレックスのかたまり」という後藤さん。体型カバーは服選びの重要なポイントです。そんな後藤式・体型カバーテクニックの集大成といえるのが、今夏、後藤さんが「fog linen work」とともに作ったワンピース。
「『リネンの服を一緒に作ってみませんか?』と声をかけていただいて、二つ返事でOKしたんです。私にはワンピースに明確に求めているデザインがあって、長年探していたのですけれど、なかなか見つからなくて。自分で作れるなんてこんな素敵なことはないと思いました」
袖は二の腕をカバーしてくれるように。ウエストマークして全体にメリハリをつけ、さらにハイウエストぎみにして脚を長く見せてくれるように。ボトムは下半身がずどんと見えないような適度なボリューム感を。丈はレギンスをはかなくてもOKなように長めに……。オーダーはすらすらと出て、そしてそれをひとつずつすくいあげた、納得のワンピースができました。
これもひとえに、自分のコンプレックスに真面目に向き合い、カバーする方法を研究してきたからこそのこと。
「もう少し○○だったら……と思うことは多々ありますが、コンプレックスはちょっとくらいあったほうがいいですよね。転んで得るものが、いっぱいあります。だから子供たちにも『若いうちに、いっぱい苦労するんだよ』って言っているんです。子どもたちが悩んでいるとき、あたふたはしますけど、できるだけじっくり見守ることにしています。自分もそういうところからいろいろ得てきましたから」
text:鈴木麻子 photo:大森忠明
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Profile
後藤由紀子
静岡・沼津で器と雑貨の店「hal」を営む。暮らしの中で自分が心から「いい」と思ったもののみを店に並べる。二人の子供は、大学生と短大生となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。『ほどほど収納が心地いい』(宝島社)、『お母さん、旅はじめました』(光文社)など著書多数。http://hal2003.net/
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。