【花と暮らしの12か月】「JARDIN BLANC」第二章の始まり
栃木・那須に暮らすクリエイターRARI YOSHIOさんによるマンスリー連載「JALDIN BLANCの庭から ~花と暮らしの12か月~」では、新刊『心をととのえる処方箋——12か月のFlower days』をきっかけに、日々の花と暮らしのことを新たに書き下ろしていただいています。

小さな森の店に灯りをともして、「JARDIN BLANC」の第二章が、2026年9月11日の新月に始まりを迎えました。
長く大切にしてきた名前で、もう一度、新しい場所での始まりです。
この場所とは、まるで導かれるように出会いました。それからの春と夏は、本当に目まぐるしい時間でした。
住まいを移すことも重なり、毎日のようにペンキを塗り、新しい暮らしを始め、そして、この小さなお店をつくる。
振り返ってみると、ずっと空間をつくり続けていたように思います。

これまでの「JARDIN BLANC」は、庭が中心の場所でした。
そしてこれからは、私が長い時間をかけてつくってきた作品たちが、その中心になります。
雑木林に囲まれ、小さな森の中の小屋のような店。
どこか隠れ家のようでもあり、この場所に流れる光や空気と、私の好きなものたちが、静かに調和しています。
始まりの雨

オープン初日。朝から静かな雨が降っていました。
草木に、そして大地に雨粒が落ち、まるですべてを洗い流し、新しい始まりのために浄化してくれているように感じました。
そんな雨の中、朝からたくさんの方が訪れてくださいました。
懐かしい笑顔。抱えきれないほどのお花。
ここまで過ごしてきた時間のすべてが、この瞬間、光に変わっていくようでした。
だからなのかもしれません。
この場所に立っていると、ときどき不思議なほど安心します。
白い棚には古いガラスを並べ、小さな灯りをともす。
籠の中には白いドライフラワー。
窓辺にはサンキャッチャー。
晴れた日には、そこを通り抜けたやさしい光が店内を包みます。
タンポポの綿毛、大切なもの

私がこれまで大切にしてきたもののひとつに、タンポポの綿毛があります。
20代の終わり頃、初めての展示で、タンポポの綿毛を小さな瓶に閉じ込めた作品を
たくさん並べました。
それが、私の綿毛の作品の始まりでした。
今回、その頃からつくり続けてきた綿毛たちに加え、「TOKIIRO」の近藤義展さんがつくってくれた、那須のラボ周辺に自生していたニホンタンポポの綿毛の作品も店内に飾らせていただきました。
そこは、小さな「綿毛のギャラリー」のような場所。
綿毛の美しさや、手を触れたら消えてしまいそうな儚さを、静かに感じていただけたらと思っています。
ただ「美しい」と思えるものを
ひとつずつ

そんなふうに、店の中には作品と植物と古いもの、そして光が混ざり合い、いつのまにかアートやインスタレーションのような、少し不思議な空間が生まれました。

誰にも気づかれないような光。
道端の草花。
風で揺れているもの。
時間を経て色褪せた紙。
役に立つかどうかではなく、ただ「美しい」と思えるもの。
そんなものをひとつ、またひとつと集めていたら、いつのまにか、ひとつの場所になっていました。
「JARDIN BLANC」は、そんな場所なのかもしれません。
人、言葉、つながりの場所

この新しい始まりの場所へ、遠くから足を運んでくださった方。
長いあいだ私の作品を見続けてくださっていた方。
久しぶりに顔を見せてくださった方。
「お店が開くのを心待ちにしていました」
そう言ってくださるのですが、お話をしているうちに、ああ、会いに来てくださったんだ、そう感じる瞬間が何度もありました。それが、とてもうれしかった。

ものを売る場所をつくったつもりだったのに、始めてみると、ここにあるいちばん大切なものは、「もの」ではないのかもしれないと、思うようになりました。
誰かと会うこと。
言葉を交わすこと。
同じ光を見ること。
そして、しばらく会っていなかった人と、また時間がつながっていくこと。
きらめく小さな光を灯して

今年の春、私はそれまでの暮らしから大きく一歩を踏み出しました。
あの頃は、その先に何があるのか、ほとんど見えていませんでした。
けれど、一歩進むたびに誰かがいて、手を差し出してくれました。
ひとりでは、きっとここまで来ることはできなかったと思います。
そして気がつけば、森のそばに小さな場所ができていました。

私は「お店」をつくったというより、私が美しいと思って見ている世界を、誰かにも感じていただける場所をひとつつくったのかもしれません。
店の灯りをともすと、ガラスの中で小さな光がいくつも瞬きます。その光を眺めながら、ときどき思います。

人生は、先の景色が見えてから歩き始めるものではないのですね。
見えないまま一歩を踏み出し、誰かと出会い、助けられ、また歩く。
そうして振り返ったときに初めて、「ああ、ここへ来る道だったのだ」と、わかることがある。
森の中にひっそりと佇む小さな「JARDIN BLANC」で、今日も灯りをともして、誰かが扉を開けてくれるのを待っています。

写真:近藤義展(TOKIIRO)
JARDIN BLANC
栃木県那須郡那須町高久甲5836-9
10月のオープン日:10月4、10、11、12、18、19日
時間:11:00~17:00
※不定休なので、オープン日はインスタグラムでご確認を。
Instagram:@rariyoshio
【森のボタニカルギャザリング】
10月24、25日
時間:10:00〜16:30(雨天決行)
会場:THE BOTANICAL RESORT林音
茨城県那珂市戸戸4369−1(茨城県植物園)
「JALDIN BLANCの庭から
~花と暮らしの12か月~」は
月の初めの日曜にお届けする連載です
日々の感覚を整えるための、ささやかなヒントとしての「おしゃれ」や「暮らし」を、那須の四季とともにお届け。ゆっくり一年をかけて、毎月更新していきます。
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Profile
RARI YOSHIO
アートデザインクリエイターとして、イラストや雑貨制作、ショッププランニングなど「JARDIN BLANC」の屋号で幅広く活動。2007年、栃木・那須に移住し、庭のある暮らしを通して、自然と人の感覚を結び直す表現を行っている。デザイン、イラストレーション、文章を横断しながら、日々の中にある小さな美しさや、心と身体のリズムを整える視点を大切にしてきた。四季の移ろいに寄り添いながら、自然とともにある暮らしの在り方や、感覚をひらくためのささやかな工夫を、作品と言葉を通して静かに伝えている。
Instagram:@rariyoshio
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