腐死かわいい(la mora/奥野宏)
〜「en-shouten」より〜 vol.25
5年ほど前でしょうか、木曽のアートイベントで、あるインスタレーションを目撃しました。素晴らしいアーティストだと思いましたが、同時にきっとすぐにどこかへ行ってしまうだろうな、と思っていたのを覚えています。
奥野宏さん。木曽に残ってくれていて嬉しい。いつまでいてくれるだろう。

岐阜のご出身で、美術、工芸を学ばれたあと、2009年にメキシコへ。メキシコシティでさまざまなアーティストが出入りする工房を友人と立ち上げ、10年ほど現地で制作をされていました。2020年に大桑村へ移り、今は木曽で、作間真彩さんと立ち上げたアトリエスペースla moraを運営しつつ制作されています。

奥野さんの作品には、長野県のクラフトの文脈とはかけ離れたカウンターを感じます。生粋のアーティストだからでしょう。けれど、魯山人をはじめとする工芸への眼差しも強くあって、そのふたつが同居しているのが面白いです。こんな言い方失礼かもだけど、普通にむっちゃ上手い器を作ったりもしてる。
表面に出てくるのは、人を喰ったような皮肉やユーモア、短期的な喜びの発露です。蚕や鶏を飼い始めたら、それが絵になったりする。
けれど根底には、資本主義や現代の社会への強烈なカウンターと、生命讃歌を感じます。メキシコで制作されてきたからか、メキシコに呼ばれたからか、命や死への感覚もそこに通じているような気がしています。

メメント・モリ、という言葉があります。西洋美術に繰り返し現れてきた、死をめぐる表象と哲学のひとつです。
奥野さんの作品からも近いものを感じるのですが、ただ、もっと生物的です。人間的な死への畏怖や崇拝というよりは、腐りや増殖のような、生き物としての終わりと始まり。それを厳かにではなく、愛らしく、時に可愛く表現されている。腐死かわいい、とでも言いましょうか。
POPアートやHIPHOP、レゲエといったストリートカルチャーもお好きだからかもしれません。可愛さというのは生(せい)の素敵さに通じるところがあると思うので、奥野さんの死生観とも矛盾なくつながるのでしょう。

en-shoutenでは、湯呑やボウルのような日用品のほか、土偶のようなオブジェも扱っています。
器をつくりながらも、器の外へ出ようとする気配が滲み出ている。昨年の展示を「UTSUWA SAIKOU!! / DOGU DO GOOD??」という名前にしたのも、そんな気分からでした。器は最高、と讃えつつ、器を再考してみる。

実は11月の中旬から、en-shoutenで奥野さんと作間さんの展示が始まります。
時期が時期なのでクリスマスを入口にするつもりでいるのですが、奥野さんの作品は、光や団らんや贈り物といったクリスマスのイメージからはだいぶ遠い。破壊的で、異形で、生々しくて、季節の記号には素直に収まりません。けれど冬至は、世界中で闇と光、命の終わりと始まりの祝祭として祝われてきた日でもあります。根源的な意味では、むしろベストマッチなのかもしれません。
一年で一番長い夜に、家族や恋人たちがあたたかな光のもとで過ごすその傍らで、腐死かわいいものたちを並べてみる。

どんなことになるのか、こちらもまだ想像がつきません。お近くの際は、ぜひ覗いてみてください。
(文・井上)
奥野宏 (la mora) | en-shouten ONLINE
長野県木曽郡木曽町福島8101
TEL : 0264-24-0875
営業日/時間:Instagramを確認
https://en-shouten.com
Instagram : @en_shouten
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