とろりとした乳白色の、岩手・小久慈焼の器
~ musubi(むすび)より vol.18 ~
鶏だし、しょうゆ味の汁に大根、人参、せり、そして焼いた角餅が、私が生まれ育った岩手のお雑煮。実家ではお雑煮の他に、あんこ、ごま、それから必ず胡桃だれを作りお正月の三が日を過ごした。
一番硬いけれど一番美味しいと母が譲らなかった鬼胡桃をすり鉢とすりこぎで、細かく、滑らかにすって、そこに砂糖、塩、隠し味にしょうゆをたらり。お湯(家によっては、お番茶や牛乳)を足して、さらにすり混ぜる。これで、まろやかで濃厚な、胡桃の滋味がぎゅっと凝縮された胡桃だれの出来上がり。
お手伝いが出来る年になると、すり鉢を押さえるのは私の役目。その時使っていたすり鉢が、岩手の沿岸北部・久慈市で作られている小久慈焼と知ったのはだいぶ後のこと、幼い頃から何気なく日々使っていた器だった。
小久慈焼の起源は今から約200年前、江戸後期。地元で採れる久慈粘土を使い、釉薬に使うもみ殻もこの土地のもの。簡素でおおらかな形と、とろりとした乳白色の美しさは今、8代目・下嶽智美さんに引き継がれている。
大正後期~昭和に柳宗悦に見出された、本州最北端の窯元、時代と共に暮らしは変化するけれど、どの時代にあっても人々の暮らしに寄り添い、日常に溶け込む器を作るため心を砕いている。
どんな料理も、他のどんな器も。多くは語らず、聞かず、いつもにっこりと笑って相手を受け止めてくれる懐の深い器です。
普段の暮らしに、ささやかだけれど美しく、しっかり寄り添ってくれる日用品や雑貨をセレクトしたお店。「今日のひとしな」の執筆は、店主の坂本眞紀さん。
東京都国立市富士見台1-8-37
TEL:042-575-0084
営業時間:12:00~18:00
定休日:日、月曜
WEB:http://www.musubiwork.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/musubiwork/
instagram:https://www.instagram.com/musubi_work/
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