手を抜いても「おいしい」は作れる! ~鶏肉のカマンベールチーズ煮~
『がんばりすぎないごはん』の作り方 vol.2
「手を抜く」というとよくないことのように見えるかもしれませんが、料理が変わらずおいしくできればまったく問題はありません。2人の子どもを育てながら働く料理研究家の近藤幸子さんは、「前向きに手を抜く」ことを提唱します。それは時間と手間をかける代わりに、アイデアを込めること。近藤さんの話題の新刊『がんばりすぎないごはん』より、家事や育児に悩むすべての人に捧げる、文章とレシピをご紹介します。
手間暇かけたおいしいものは世の中にいくらでもあるけれど、家庭の料理は毎日の生活の一部、そのおかげでおいしくはなるのだろうけど、手間がかかり過ぎてしまうプロセスは、省いてしまって結構だと私は思っています。そのぶん知恵を働かせ、どう作りやすくするか、おいしくするか、そこが勝負所です。
私は常に時間のやりくりをしながら生活しています。撮影や料理教室に備えて、机に向かってレシピを考えたり、買い物に走り回り何度も試作を繰り返したり、自分で言うのもなんですが、かなり慌しい毎日です。
必然的に料理にかけられる時間は短くなります。だから私のレシピは、なるべく工程を少なく、単純化しています。たとえば炒めたり煮たりする時は、一度に鍋に入れてしまいます。とはいえ味を犠牲にしているわけではありません。代わりにしょうゆで香ばしさを加えたり、砂糖で素材の甘みの補正をしたりしています。肉や魚にはしっかり下味をつけることで、味がぼやけず、短時間の調理でもおいしく食べることができるようにしています。こういうことこそが家庭料理に必要な工夫だと考えています。
ちなみにフライパンを使った料理をいくつか作るときは、洗わずにさっと拭くだけで済まします。先に味つけの薄い料理を、後から濃い料理を作ればまったく問題ありません。下味をつけるときはわざわざボウルやバットを使わず、発泡トレーや鍋の中で十分です。キッチンばさみも大活躍。小松菜、長ねぎ、ベーコン、薄切り肉などは、キッチンばさみでざくざく切ります。あれもこれも教科書どおりにする必要はないのです。
忙しければ作りおきを用意するという選択肢もありますが、どうも苦手で積極的に作ることはありません。作りおきは、便利で助かるというより、私にとっては「あれがあるから食べなきゃ」という義務として重くのしかかってきます。そしてなにしろ食べるときのワクワクがないことが、もっとも大きな原因かもしれません。
鶏肉のカマンベールチーズ煮
生クリームの代わりに、カマンベールチーズを使ってクリーミーな煮ものが作れます。カマンベールチーズは日持ちもしますし、旨みが塩けもあるので、味が調いやすいのがメリット。鶏肉にはしょうゆをしみ込ませて、香ばしく仕上がるようにしています。
材料《2人分》
鶏胸肉 1枚(250g)
しょうゆ 小さじ1
塩 小さじ1/2
カマンベールチーズ 100g
キャベツ 1/4個
にんにく 1/2片
白ワイン 大さじ1
水 大さじ1
作り方
1
鶏肉は繊維を断つようにして1cm厚さのそぎ切りにし、しょうゆと塩をふる。キャベツは5cm角に切る。にんにくは薄切りにする。
2
鍋にカマンベールチーズ以外の材料を入れ、ふたをして中火で5分ほど蒸し煮にする。
3
火を止め、カマンベールチーズを食べやすい大きさにちぎって加え、再びふたをして1分ほど蒸らす。
文/近藤幸子 撮影/福尾美雪
Profile
近藤幸子さん
料理研究家。宮城県出身。料理教室「おいしい週末」主宰。料理学校、料理研究家のアシスタントを経て独立。2007年11月、『おいしい週末』(筑摩書房)を上梓。2度の産休・育休を経て、2014年から活動再開。家事や育児をこなしながら雑誌「LEE」などで活躍中。シンプルで気の利いた料理を好む。夫、長女、次女との4人暮らし。著書に『重ねて煮るからおいしいレシピ』(主婦と生活社)など。おいしい週末Web http://oishisyumatsu.com
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