生成りの風合い「JICON 磁今」のペンダントランプ
~ 「組む東京」 vol.8 ~
「JICON」の柔らかな灯りのもとにいると、ほっとします。香りのよいお茶の湯気を眺めながら、気に入った本のページをめくる時間や、親しい人との語らいの時間を照らしてくれるといいなと思います。
「JICON」のランプは、灯すと光が透けて、線香花火が落ちる直前みたいな暖かい色合い。
消せば、干菓子のようなふくよかさ。生成りの白の肌合い。
天井のシーリングカバーも同じく、丹精な干菓子のようです。
こちらは、「組む」で開いた朗読家・岡安圭子さんの朗読教室の一コマ。「組む」では、あえてランプを低い位置に設置して、目線に近くしたり、時には見下ろせるような位置にさげてレイアウトを変化させ、ペンダントランプの様々な表情を楽しんでいます。
「JICON磁今」は、手工業デザイナーの大治将典さんと、有田で作陶を生業とする今村肇さんの出会いから、2012年に生まれたブランドです。肇さんは、創業350年の今村家十三代・今村博氏の次男。実家の「陶悦窯」より独立し、「今村製陶」を開業して、「JICON」を作り続けています。
こちらの写真は、有田の陶石の採掘場。「JICON」も三川内・有田に続く天草陶石を使った白磁の技術を活かし、その名の通り、今を生きている日用の器を作っています。
有田の焼き物といえば、高温で焼成した硬い質感と、鮮やかな色絵が映える青白いほどの磁器の色が、一般によく知られているのかもしれません。しかしながら、この耐火度の高い白い石(いわゆる、良い石)は、昨今では、採掘の労力がかかる上に、少ししかとれない実情があります。
一方、茶色味をおびた石(良くない石)は、良い石を採掘するときにたくさん取れるけれど、あまり使われないため、余る。このいわゆる良くない石を意図的に活用し、違った角度からの美しさを再発見して価値を生み出しているのが「JICON」です。同時に、釉薬もその方向に即して徹底的に見直され、「JICON」の肌合いは生まれているのです。
有田にある佐賀県立九州陶磁文化館のコレクションは本当に素晴らしく、長い歴史から生まれた陶磁器文化は、果てしなく豊かで、心打たれるものでした。この懐の深さを目の当たりにすると、人々が陶磁器に感じてきた思いは、決して「良い石」「良くない石」などの価値観に偏ったものではなかったと感じるのです。「JICON」の取り組みを、短い文章でお伝えするのは難しいのですが、私は、それに大きな意義を感じています。「組む」では、「JICON」のラインナップを全て常設しています。
国内外のものづくり、手工業の交流拠点となる場として、ショップ、ギャラリー、コミュニティ・スペースの機能をもつお店。「今日のひとしな」の執筆は、代表・キュレーターの小沼訓子さん。
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