もっと気軽に、子連れ旅 vol.4 ~ハワイ・モロカイ島へ~
特集4日目の今日は、ちょっぴり番外編。“子連れ旅”ならではのお話というよりは、娘の青が生まれてからはもちろん、生まれる前から私が長年通っている、思い入れのある場所について、書かせていただこうと思います。
そこは、「なにもしない」という贅沢な時間が味わえる素朴で優しい島、モロカイ島。モロカイ島在住アーティスト、山崎美弥子さんの美しい一冊「モロカイ島の贈り物」に導かれて、私はその島や美弥子さんファミリーの暮らしに魅了され、ずっと作品撮りをしに通い続けています。
青がお腹にいることが分かってから、早く一緒に行きたいな……とずっと焦がれていました。お気に入りのビーチで暮れゆく夕陽を眺めながらビールを飲んで、家族や友人と「今日の夕焼けも綺麗だね」「お星様が出てきたねー」「夕ごはんどうする?」と、たわいもない言葉を交わすだけで幸せに感じる不思議な島です。
青と最初にモロカイを旅したのは、彼女が2歳になるちょっと前でした。その頃、私は自分の体調がなかなか整わず、風邪をひいたり、心身がアンバランスになっていた時期。なんだか猛烈に、モロカイの空や海や人々にたまらなく会いたくなり、青と一緒に行くことを決めたのです。きっとモロカイで心も身体も温かくなるはず……そんな思いを抱えて出かける旅となりました。
どこにあるの? とよく聞かれますが、モロカイ島は8つあるハワイ諸島のうちのひとつで、行き方もいたってシンプル。まずハワイの玄関口、オアフ島のホノルル空港へ。ハワイアン航空かモクレレ航空へ乗り継ぎをして、ホノルルから約25分。あっという間に到着します。赤土が舞うホオレフア空港へ着いたとき、初めての方は、あまりに小さくて素朴な様子に、ちょっとびっくりするかもしれません(笑)。
いつもは、空港内にあるAlamoレンタカーで車を借ります。こちらは、空港から出てすぐ真正面に目に入る看板「ALOHA SLOW DOWN This is MOLOKAI」。これを見るたびに、ああ、モロカイに帰って来たんだな……とリラックスして、頭と心のネジが緩みます。
まずは空港近くにある「KUMU FARMS(クムファーム)」へ。オーガニックで新鮮な野菜や果物を調達できる、心地良い場所。
外食できる場所はいくつかあるけれど、モロカイ島ではキッチン付きのお部屋を借り、自炊をして過ごすことが多いので、いつもここでしっかりと買い込みます。
必ず買うのは、隣のファームにたわわに実っているモロカイマンゴー。果汁と果肉がたっぷり詰まった、リーズナブルで美味しいマンゴーは、青も大好きで毎朝必ず大喜びで食べていました。
「クムファーム」から車で約15分、カウナカカイの街に着いたら「フレンドリーマーケットセンター」へ。日用品のほとんどはここで手に入ります。ここで、made in molokaiのお塩や蜂蜜、コーヒーなどを買うのがオススメです。
その名の通り、フレンドリーな空気溢れるこのスーパーマーケットが私は大好きで、店内では「アロハー」「ハロー」と知り合い同士が挨拶をする声でいっぱい。ツーリストの私たちにも、みんなニコッとしながら「ハロー」と声をかけてくれるロコの多いこと! 10年前に初めてモロカイを訪れたとき、それにものすごく驚きました。そして、そのモロカイの人々のオープンマインドさに触れ、自然と私の心もほどけていったことを思い出します。
買い物を済ませて滞在先に到着すると、いつもだいたい夕方になります。“なにもない”モロカイ島では、この夕暮れが一番大切な時間。変わりゆく夕焼け空をゆっくり日が沈むまで味わう……そんな時間がなによりの至福です。
私たちは毎朝おでかけの前に「今日の夕暮れを見る場所」をまず決めて、それから昼間の過ごし方を考えています(笑)。お気に入り夕暮れスポットはいくつかありますが、どこで見ても、何度見ても、全く見飽きることはなく、新しい映画を見る前のように毎回ワクワクしながら夕焼けを待っています。
例えばみんなの大好きなビーチでの出来事。風が強いこの場所でダイナミックに打ち寄せる波しぶきを感じながら、すごいスピードで移り変わってゆく夕暮れを眺めていると、頭の中が空っぽになってだんだんスッキリとしてきます。
ステイ先である美弥子さんファミリーの娘たち、kirakaiちゃんとtamaraちゃんは、さすが生粋のモロカイっ子。恐れることなく、大きな波と一緒に遊んでいました。この遊び、まだ1才の青には無理でしたが、大人もやってみると楽しい!
その頃、毎回宿泊をしていた場所は、美弥子さんファミリーも暮らす、素敵な手作りのゲストルームでした。美弥子さんの美意識に基づいて作り上げられたこの場所が私たちは大好きで、おうちの中にいるだけでも楽しくのんびり過ごせました。
モロカイにいると、食事を作ってみんなで食べる、ピカピカの晴天の下で洗濯をする、そんな、ただ当たり前の日常ですら楽しくなってくることがとても不思議です。
馬や猫やにわとりがいる庭で、kirakaiちゃんたちと一緒に遊んでもらっている青も、のびのびとしていつも楽しそう。だんだん日に焼けて、モロカイっ子のような小麦色の肌になってきました(笑)。
モロカイでは、子供の遊びもいたってシンプル。ビーチで遊ぶ。木に登ってみる。ココナッツを割ってもらってココナッツジュースを飲む(とびきり美味しい!)。好きな石や貝を拾う。トレッキングをする。夜になるとみんなで歌を歌ったりダンスをする。時にはキャンプ。とってもシンプルだけども、全てが満ち足りていて、何をしていてもうれしい。
モロカイでの遊びをそっくりそのまま東京でやるのは難しいかもしれないけれど、そんなシンプルな遊びに中にとびきりの楽しさや喜びがある、ということを教わりました。
モロカイスピリットを常に心に持ったまま、東京で過ごす、というのが今の私たちのテーマです。都会で見ても夕焼けはいつも美しいし、公園の緑や街路樹にふと自然を感じることはできるものだな、と、モロカイで過ごして気がつきました。
青がモロカイ旅で覚えてお気に入りだったのは、食事をする前にみんなで一緒に歌うお祈りの歌。その頃美弥子さんファミリーは、夕食前にみんなで手をつなぎ、「エーケアクーア、マーハーロノ……」と続くハワイの言葉で紡がれるお祈りの歌を、毎回歌っていました。
東京に戻ってからも、そのお祈りの歌が大好きになった青は、誰か友達が家に来て夕食を共にすることになると、サッと手とつなぎ「エーケアクーアする!!」と目をキラキラさせて歌いはじめます。友人たちも最初は少しとまどいますが、恥ずかしそうに手をつないでお祈りの歌を一緒に歌う姿はとても微笑ましく、歌を歌い終わると、その後の食事の時間がぐっと大切なものになるような気がしました。
モロカイへの旅はいつも、日常の中にある小さなきらめきにこそ喜びが溢れていることを教えてくれます。そして、子供と過ごすようになるとさらに、その毎日の積み重ねが貴重なものであることに気づかされます。
……こうしてモロカイへ思いを馳せていたら、またすぐにでも行きたくなってきました。
明日の最終回では、フォトグラファーらしく(笑)、「旅先での写真」をテーマにお話したいと思います。
photo&text 砂原 文
→vol.5へ続きます
Profile
砂原 文
フォトグラファー。雑誌や書籍、ウェブなど幅広い分野で活躍中。ハワイ・モロカイ島で過ごした日々、風景の写真を収めた作品集「pili」が話題に。2018年8月20~23日には、下北沢「fog linen work」2Fで、写真展「pili」を開催予定。
http://laaufilm.com/
Instagram「@trance_parence721」「@laaufilm_aya」
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